瞬殺
再びギルドの扉の前。
オーラは震える拳を必死に抑え、扉をノックした。
「はーい」
中から一人の青年が顔を見せる。
「け、け、け、け」
「け?」
男は不思議そうにオーラを見る。
「決闘を申し込む!」
言葉に詰まってはいたが、見事に言い切った。
「ぼ、僕にかい?」
「そ、そうだ!」
オーラは緊張している。
「いいけど——」
「じゃあ決まりだ! とっとと始めるぞ!」
そこで青年の待ったがかかる。
オーラは首を傾げて青年に見た。
「何が目的なんだい?」
「私が勝ったら私の言うことを何でも聞いてもらうぞ!」
ヒロは納得したように頷いたと思えば、再び口を開いた。
「それなら僕が相手をするのは辞めよう。ルカ!」
青年が名前を呼ぶと中から一人の少女が現れる。
ただ無表情の少女だった。
「何?」
「君がこの子の相手をしてあげて」
オーラの顔つきが変わる。
「どういうことだ! 私はあなたに決闘を申し込んだんだ!」
「僕はあなたじゃなくて、ヒロだよ。それに、僕相手じゃ君は勝てない」
「何だと?」
「だからルカに相手をしてもらうんだよ。まあ、ルカにも勝てないだろうけどね」
厳しいことを言っているにも関わらず、笑顔を浮かべているヒロという青年。
その余裕っぷりにはここにいるオーラ以外は誰も驚かない。俺もオーラの弱さを知っているからな。
「ふんっ。いいだろう。誰が相手だろうと私が勝つんだから問題ない!」
「じゃあ始めようか」
終始笑顔だったヒロという青年に連れられて、何もない芝生の広場にやって来た。
「ねえヒロ。もう始めていい?」
「待ってねルカ。相手の準備が終わったら——」
「準備なんてとっくに終わっている。さっさと始めるぞ」
「分かったよ。それじゃ始め!」
何か軽いノリで始まったオーラ対ルカの戦い。
まずはルカが攻撃を仕掛ける。
手を銃の形にすると、人差し指の先に紫色の玉が出現する。
「これで終わり」
そんなルカの一言と共に、紫色の玉がオーラに襲い掛かった。
「⁉ 何だこれは!」
いくら声が出ようとも、速さには勝てない。
紫色の玉はオーラの体に命中。
その瞬間、オーラの動きが止まった。
「か、体が動かない……まさか《ポイズン》か」
「そう。あなたは今麻痺状態。しばらく動けない」
ルカは鎌を振り上げる。
このまま鎌をオーラに向かって振りかぶれば、オーラの命はないだろう。
「そこまでだルカ」
ヒロの声を聞いたルカは、素直に鎌を背中に戻し、踵を返した。
「私は戻る」
本部に戻るルカに一瞬目をやったヒロは口を動かした。
「それじゃこの戦いはルカの勝利だね。僕も本部に戻るよ」
「おう! またなぁ~」
俺はヒロの背中が見えなくなったところで、オーラに寄り添う。
「ドーンマイ」
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