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彼と秘密の守護天使  作者: 日下真佑
9/40

9迷子

いつもありがとうございます。

今日も二話アップします。

どうぞお楽しみください!

「なあ、悠奈。話しがあるんだけど」

放課後、涼太は、鞄に荷物を詰めている悠奈に声をかけた。

「何?私、今日も忙しいんだけど・・・」

夕方なのに、まだぼーっとした頭のまま気だるそうに悠奈が答えると、涼太は、やっぱり!と何かを確信したのか、覚悟を決めた目で悠奈を見る。

「忙しくても、大事な話なんだ。今からちょっとだけ付き合ってくれ」

有無を言わさず悠奈の腕を取ると、ぐいぐい引っ張って教室を出た。

何人かの生徒が、そんな二人を冷やかすような目で見ていたが、涼太は気にしない。人目を憚って、慌てて俯く悠菜をよそに、涼太は人気の無い中庭に行くと、掴んでいた手をぱっと離した。

「ちょっと、何なの?」

悠奈が、憮然として腕を振り払うと、涼太は、悠奈の目を真っ直ぐ見る。

「お前さ、最近おかしいけど、何があったんだよ?」

「何もないよ。忙しいから、帰ってもいい?」

面倒臭そうに返事をして、帰ろうとする悠奈の腕を、涼太が再びがしっと掴む。

「待てよ。お前、絶対何かあるだろう?特に最近は一日中ぼーっとして、大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。涼太には関係ないでしょう?」

悠奈は捕まれた腕を振りほどこうと、思い切り腕を振り下ろす。しかし野球部で毎日鍛えている涼太の力の前に、全く歯が立たない。

「関係なくはないだろう?小学生の頃から一緒にいる俺には分かるんだよ。お前、智弘先輩に振られてから、様子おかしいよな?しばらくは元気無かったけれど、その後何だかぼーっとすることが増えて、まるでいつも心がここに無いみたいで…本当に、どうしちゃったんだよ?!」

「どうもしないよ!離して!!」

腕を振り払おうとジタバタ暴れはじめた悠奈を見て、涼太は仕方なく腕を離した。

「分かったよ。でも、明日も春菜と迎えに行くから、ちゃんと学校行くぞ」

「行くよ。行くに決まってるでしょう?あと……」

悠奈は鞄を抱えて振り向くと、目を思い切り細めて涼太を睨む。

「二度と智弘のことは言わないで。それこそ、涼太には関係ないでしょう?」

じゃあ、と行って今度こそ本気で涼太の前から去ろうとする悠奈に、涼太は意を決して口を開いた。

「関係なくねえよ!俺達幼なじみなんだからさ、心配するのは当たり前だろう?」

涼太の言葉に、悠奈は思わず立ち止まる。温かい言葉。子どもの頃から、涼太はこうやって、本気で友達の世話を焼く。いつだって自分のことでも無いのに、真剣に向き合ってくれる。でも、そんな涼太の思いやりが、今の悠奈にはお節介にしか感じなかった。

「ありがとう。でも、今はそっとしておいて」

振り向くことなくそれだけ言うと、悠奈は何か言いたそうな涼太を中庭に残して、校門へ向けて走り出した。

最近、一日中ぼーっとしているのは知っている。授業だって、何も頭に入っていなくて、ただ黒板に書かれた文字をノートを写しているだけ。でも、それでも今の悠奈には、守護天使のともひろのいる生活が、かけがえのないもの以外の何ものでもなかった。

 校門を抜けて、家へ向かって住宅街を小走りで走る。寝不足のせいか体力が続かなくて、すぐに立ち止まっては息をついた。大きな交差点の赤信号で信号待ちをしながら、空を見上げる。春の終わりの珍しく雲の少ないどこまでも青い空に、一瞬足元がぐらっと揺らぐをの感じた。

私はここに立っているよね。ちゃんと現実に立っているよね。

行き交う車がまるでおもちゃのように見えて、びっくりして悠奈は目を擦る。立っているはずのアスファルトから体が浮いて、どこかへ飛んで行ってしまいそうな幻覚に、はっとした。

「ともひろ?私はここにいるよね?ちゃんとここに立っているよね?」

心の中で話しかけるも、守護天使のともひろの声は聞こえない。

途切れることなく行き交う車や人の波に、悠奈は自分の心だけがここにいないことを、初めて知った。

「私は、どこにいるの?」

ともひろ、ねぇ、教えて!!

迷子は嫌なの……お願い!!!

悠奈がぎゅっと目を閉じると、ふわっと体が傾いていく。

立て直そうと力を入れても、体のどこにも力が入らない。

助けて!!

心の中で叫んだ時、誰かの腕が悠奈の体をぎゅっと抱き留めていた。



いつもお話を読んでくださいまして、本当にありがとうございます。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします!

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