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彼と秘密の守護天使  作者: 日下真佑
6/40

6会話の練習

いつもありがとうございます。今日はもう一話アップします。

体調にもよりますが、明日もできればアップします。

どうぞお楽しみください!

 それから悠奈は、元彼そっくりの守護天使を、元彼と同じ「智弘」という名前で呼ぶことにした。さすがに漢字で表記するのは照れくさいので、「ともひろ」と平仮名でスケジュール帳に書いてみる。


5月21日。守護天使のともひろと、お話する練習を始めた日。


小さな字で書くと、早速いつも通り、不思議なものが見えたり聞こえたりする、妹の香奈を探す。

「ねえ、香奈はどうやってともひろの声を聞いてるの?」

この手のことになると悠奈があまりもにしつこいので、香奈も半ば諦めて、最近では聞かれたことには、最低限答えるようになっていた。

「だから、私は何となくだよ。強いて言うなら、頭の真ん中でキャッチするようにして聞いているかも?」

「そうなんだ!頭の真ん中ね」

悠奈はメモ帳に、頭の真ん中でキャッチする。と書くと、早速やってみる。しかし、まるで普通の人間と会話するように自然に守護天使の行動や言葉を拾える香奈に対して、悠奈はやっぱり上手くともひろの言動がキャッチできない。

「うーん、難しいなぁ。ねえ、他の方法無いの?」

「じゃあ、グッズを利用するってのはどう?」

「グッズって、例えばどんな?」

「例えば、お姉ちゃんがいつも宿題する時に髪を束ねるヘアゴムとか」

そっか、あれは守護天使のともひろが髪を束ねている紐みたいなのとお揃いだから、大切にカバンにしまっていたけれど、使えるんだ!!

悠菜はカバンの中にお守り代りに毎日大切に入れていた、ともひろとお揃いのヘアゴムを出した。

「これで、どうしたらいいの?」

香奈に見せると、香奈はヘアゴムを手に取って、両手で包み込むと目を閉じた。

何をしているのだろう?ともひろの声がよく聞こえるためのおまじないでもかけているのだろうか?

黙って香奈のすることを見ていると、数十秒後ぱちっと目を開けて、ヘアゴムを悠菜に差し出す。

「これで、大丈夫。ヘアゴムに守護天使様と繋がりやすいように力を入れておいたから、これを持っていると話しやすくなるはずだよ」

「本当?!ありがとう!!」

早速悠菜はヘアゴムを右手に嵌めると、ともひろとの会話初めてみる。

やっぱり会話できない。仕方なく、ヘアゴムを嵌める手を左に変えてみたり、髪を束ねてみたりして、何度も試してみる。

しかし、それでも上手に会話をすることは、できなかった。

「やっぱり無理かも。この方法は香奈みたいに、元から力のある子しかダメなんじゃないの?」

僅か数回の挑戦であっさり弱音を吐く根性無しの姉に、香奈はちょっとむっとする。

「こういうのは、毎日少しずつ、こつこつ練習するのがいいんだから。焦らず気長にしなくちゃだよ」

「分かった。じゃあ、明日もがっつり練習して、できるように頑張るよ」

「あのさ、お姉ちゃん。そういうのは本当は必要なら、最初から見えたり聞こえたりするもんらしいから、お姉ちゃんみたいに無理にいっぱい練習してやるのはどうかと思うよ」

「でも、私も香奈みたいに、二十四時間ともひろの言動を知りたいんだもん」

「だからってねぇ…」

香奈は小学生に似つかわしくない、深いため息を漏らすと、ちょっと厳しい目で姉を見た。

「本当はそういうの危ないんだよ?下手したら、現実と空想の境目が分からなくなって、心がおかしくなることだってあるんだよ?それ分かって言ってるの?お姉ちゃん??」

香奈の現実的な忠告に対して、全く現実味を感じない悠奈は、はいはい、と真剣な香奈の言葉を面倒臭そうに、軽く受け流す。

「大丈夫だよ。香奈だって一日中そういうの見たり聞いたりしてるけど、別に平気じゃない?」

「だから、ちゃんと私の話を聞きなよ!大事なことなんだよ?」

「分かった、分かった!私だって一日中練習できるわけじゃないから、そんな心配いらないよ!」

悠奈はそう言うと、何か言いたそうな香奈を置いて、一人勉強部屋へ入り、扉を閉めた。

香奈は扉の向こうで、「お姉ちゃん、人の話は最後まで聞きなよ?」とか「本当に危ないんだから、どうなっても文句は受け付けないからね!」とか、大きな声を出している。

全く、香奈は小学生のくせに、うるさいおばさんみたいに、世話の焼き過ぎなんだよね……。

そんなに一日中練習していられる程、高校生はヒマじゃないっての。

悠奈はふうっと息を吐くと、気を取り直して早速ともひろの声や仕草を拾う練習を始めた。

一日三十分。時間を決めて練習すれば、危なくなんてないよね。

自分に言い聞かせるように呟くと、そっと目を閉じて、ともひろの気配を感じることに集中した。


「うーす!悠奈!!」

結局あの後、ともひろの気配が上手く拾えなくて、宿題や食事を挟んで真夜中までみっちり何時間も練習をした悠奈は、眠い目を擦りながら玄関に座る。

昨日ファーストフードに誘ってくれたのに、たいして話しもせず置いてきてしまった涼太は、そんなことお構いなしで、今日も明るく元気だ。

「悠奈、目の下クマができてるけど、ちゃんと寝た?」

涼太と一緒に玄関で待ってくれている春菜も、いつもと変わらず元気な様子だ。

「う、うん。ちょっと夜更かししてね・・・漫画読んでたら寝そびれた」

適当な言い訳をしながら、悠奈も作り笑いを浮べる。

あれだけ根詰めたら危ないって香奈に言われたけれど、一日くらいなら大丈夫だよね?

何事も無かったかのように、靴を履くと、行って来ます!と家の中に大きな声で言って、玄関を出た。

いつもと変わらない青空、いつもと変わらない通学路、いつもと変わらない涼太と春菜・・・でも、特訓の成果か、悠奈は守護天使のともひろの気配を、昨日より少しだけたくさん感じることができるようになっていた。

「おはよう、ともひろ。今日も学校でもずっと一緒にいてね」

と心の中で話しかけると、守護天使のともひろがそっと悠奈の腰に手を回す。

「悠奈、おはよう。今日もずっと一緒にいるよ」

甘い声で囁かれて、悠奈は一人、とても幸せな気持ちで、こっそり俯いて微笑んだ。



いつもお話を読んでくださいまして、本当にありがとうございます。

次話も続きますので、どうぞお楽しみください。

これからもよろしくお願い致します!

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