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彼と秘密の守護天使  作者: 日下真佑
4/40

4涼太

いつもありがとうございます。

体調の都合でお休みしてしまい、すみません。

今日は4本アップします!どうぞお楽しみください!!

トモさん、どこにいるの?今、数学だけど、トモさんも一緒にいるよね?

授業中、ちゃんと聞いていなくちゃいけないのは分かっているけれど、悠奈はつい、トモさんの気配を感じようと感覚を澄ます。

詳しい表情や、長い会話は無理でも、腰や肩に当たる手の感触とか、短い会話なら、少しだけ聞き取ることができた。

妹の香奈に教えて貰った通り、頭の真ん中に意識を集中していると、次第に肩を抱いてくれているトモさんの腕の感触が、はっきりしてくる。

トモさん。いつも優しいよね。いつも優しくしてくれるよね。そういえば、智弘も優しかったけれど、トモさんみたに大人じゃないから、こんな気の利いたことはできなかったかな。

後ろで立っているだろうトモさんに話しかけてみるも、返事は無い。

あれ?ちゃんといるんだけどな。トモさん、私に分かるように返事してよ?

しかし、よく聞こうとすればする程、トモさんの声は聞き取れなくなってしまうようだった。

はあ、仕方ないな。トモさんとお話するのは諦めて、ちゃんと勉強するかな。と、悠奈は初めて顔を上げる。授業は知らない間に随分進んでいて、涼太が黒板に問題の答えを書いている。

悠奈は慌ててシャーペンを持つと、ノートに黒板の数式を書き写し始めた。説明を聞いていなかったから、さっぱり分からないけれど、とりあえずノートだけは書いて、あとで春菜にでも教えて貰おう、と現実に頭を引き戻す。

トモさんとの時間はとても幸せだけれど、どっぷり浸かったら戻れなくなりそうな危うさがあるのを、何となく感じていた。でも、それでもトモさんは心地よくて、甘い言葉も優しい言葉もいっぱいかけてくれる、かけがえのない私だけの守護天使様だ。

悠奈は黒板の数式を手早く写しながら、また、すぐにトモさんのことを考え始めた。

 トモさんは本当に、智弘が連れて来た、守護天使様なんだよね。智弘の分身なんだよね?

すると今度は、

「俺は悠奈の守護天使。名前も好きに呼べばいい」

とトモさんの心地よい声が、脳内に聞こえる。

トモさん!

思わず机を蹴って、悠奈ははっとした。

「こら、田口!授業中に他ごとばかり考えるな!さっきから、全然授業聞いてないだろう?」

クラスメイトの笑い声が、あちらこちらから聞こえる。黒板の前にいる数学教師に叱られて、悠奈はバツが悪そうに俯いた。


 放課後、珍しく野球部が休みの涼太から、帰りに付き合って欲しいところがあると、悠奈は声をかけられた。

「ちょっとさ、駅前のファーストフードに付き合えよ」

「いいけど」

何だろう?春菜抜きで私だけなんて、初めてでちょっと戸惑ったけれど、別に用事も無いし、涼太ならいいかな、と悠奈は着いて行く。

前を歩くと意外と背の高い涼太の後ろ姿を見上げながら、悠奈はまたトモさんのことを考えていた。

トモさんはこんな時も、ちゃんと悠奈の腰に手を回して抱き締めてくれている。トモさんと比べると、涼太って本当に子どもだよね、そう思うと、悠奈は涼太の坊主頭を見ながら、何だか可笑しくなった。

 ファーストフード店に入ると、悠奈はジンジャーエールを注文した。涼太はお腹が空いているらしく、ハンバーガーとポテトのセットを注文している。

「あのさ、お前最近、一日中ぼーっとしてるけど、どっか悪いのか?」

席に着いて、早速ハンバーガーを大きな口で頬張りながら、涼太は悠奈を真っ直ぐ見る。

「別に。どこも悪くないよ」

「そうか、それならいいんだけど、お前何か最近変だからさ。今日も数学の時、先生に叱られてたし」

「たまたまだよ。気にしない、気にしない!」

悠奈はつとめて明るく言うと、ジンジャーエールを一気に飲み干した。

「用事って、それだけ?ちょっと忙しいから、帰ってもいいかな」

空のカップを手にしながら、カバンを持つと、涼太はそんな悠奈の手を咄嗟に掴む。

「待てよ。ちょっと座れって」

ぐいっと手を引かれて、もう一度席に戻されると、悠奈は渋々腰を下ろした。

「何?」

本当は一刻も早く家に帰って、妹の香奈にトモさんの言動を教えてもらいたくて堪らないのに。面倒臭そうにジロリと涼太を睨むと、涼太はいつになく真面目な顔でハンバーガーをトレイに置いて、悠奈を見つめる。

「あのさ、困ったこととかあったら、ちゃんと言えよ。俺、悠奈のこと、大事だからさ」

えっ?これって、告白?

突然、大事とか言われて、悠奈は目を白黒させる。すると涼太は、そんな悠奈に気づいたのか、

「ばーか。幼なじみとして、大事だっての。とにかく、苦しいことがあったら、一人で抱えずにちゃんと言えよ。いつでも聞いてやるからな」

ちょっとだけ上から目線の涼太の言葉に、悠奈はくすっと苦笑した。

「だよね。涼太とは小学校からの腐れ縁だもんね。ありがとう。その時はちゃんと相談させてもらうよ」

悠奈はそう言うと、もう一度鞄を持って、涼太に手を振る。

「じゃあ、また明日。私、帰るね」

「おう、またな」

涼太が手を振るのを見届けて、悠奈は一目散に駅へと走り出した。



いつもお話を読んでくださいまして、本当にありがとうございます!

次話も続きますので、どうぞよろしくお願い致します!


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