2守護天使のトモさん
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その日から、悠奈は朝目が覚めた時から、一日中、守護天使のトモさんの気配を感じるようになった。
朝はベッドの横で添い寝してくれているらしく、悠奈が目を覚ませば、「おはよう、悠奈。今日も可愛いよ」と必ず囁いてくれる。
着替えの時やトイレの時はさすがにいないみたいだけれど、洗面所で顔を洗う時も、歯磨きをする時も、いつも悠奈の腰や肩を抱いているらしく、時々「大好きだよ」とか「綺麗だよ」など、顔が真っ赤になりそうな台詞を、堂々ととても魅力的な声で繰り返し耳元で囁かれて、悠奈はいつしかそんなトモさんの存在にドキドキするようになっていた。
智弘と付き合っていた時は、こんな甘い言葉、そんなに言ってくれなかったよね。と、ふと、枕元の海の写真を見て、悠奈は思う。当たり前だけれど、普通の高校生だった智弘が、こんな甘い言葉や恥ずかしい台詞を連発したら、やっぱりちょっと引くかもしれないけれど、何故か守護天使のトモさんが言う分には、全く嫌味じゃなくて、すんなり心から喜ぶことができるのだ。
「ねえ香奈、トモさんってどんな姿しているの?」
不思議なものが大好きで、見えないものが見えたりお話できたりする妹の香奈に、悠奈はいつしか頻繁にトモさんの様子を聞くようになっていた。すると香奈は、うーんと悠奈の右後ろあたりを凝視しながら、
「顔は智弘くんをもう少し大人にした感じで、背が高くて大きいよ。真っ白い服を着ているかな」
と、トモさんの容姿を説明する。
「白い服って、どんなやつ?やっぱり天使だから羽根が生えていたりするの?」
悠奈が興味津々で尋ねると、香奈は、
「服はふわっとした白いシャツみたいなやつだけど、羽根は生えてないよ。普通にイケメンの二十五歳くらいって感じ」
と、益々興味をそそる答えを、返して来る。
トモさんは智弘よりも少し大人で、そして私を絶対に裏切らない、甘やかしてくれる守護天使様なんだ…。そんな素敵なトモさんが、いつも自分の腰や肩に手を回して、心からとろけてしまいそうな、甘い言葉を囁いてくれる。
「ねえ、じゃあ髪型はどんな?ショート?それともロング?」
調子に乗って根堀葉堀質問すると、香奈は面倒臭そうに頬を膨らませた。
「もう、お姉ちゃん!触られているの分かるなら、自分で見てよ」
「ごめん、ごめん!でも、私、触られているのは何となく分かるんだけど、香奈みたいにはっきり見たり聞いたりできないんだよ。お願い!今日はこれでトモさんの質問最後にするから、髪型だけ教えて?」
悠奈が両手を合わせて懇願するも、香奈はぷいっとふくれっ面をしたまま、ちらっと横目で悠奈を見る。
「じゃあ、今度、アイスおごってくれるなら、教えてあげてもいいよ」
「本当?!アイス絶対ご馳走するから、お願い、教えて!!」
悠奈は嬉々として香奈に約束を取り付けると、両手を合わせて、香奈を拝んだ。
香奈は面倒臭そうにため息をつくと、仕方ないなぁ…とぶつぶつ言いながら、もう一度悠奈の後ろに目を凝らす。
「そうだな…肩甲骨くらいの長さかな、サラサラの髪を緩く後ろで纏めているよ」
「何で、ヘアゴムとか?紐とか?」
「それも見なくちゃなの?」
「ごめん、今日はこれで最後にするから」
もう一度両手を合わせて必死にお願いする悠奈を見て、香奈は呆れたようにふう、と息を吐いた。
「もう、仕方ないからいつでも教えてあげるよ。お姉ちゃんとお揃いの、黒色のヘアゴムみたいな紐で結んでる」
「本当?!」
悠奈はぱっと顔を輝かせると、長い髪を無造作に一つに束ねていたヘアゴムを、そっと髪から外してみた。
「これ、トモさんとお揃いなんだ!嬉しい!!」
そう言って、ヘアゴムを抱きしめると、トモさんは聞いていたのか、いつもの甘い声が耳元で囁いた。
「悠奈と俺とお揃いだよ。身に着けてくれるなら、ずっと悠奈を守ることを約束するよ」
そう言うと、さらさらとほどいた悠奈の髪を、優しく撫でながら口づけする。
「やだ!やっぱり変態天使!!」
口づけの現場をばっちり見てしまった香奈は、思わず口にすると悠奈を見た。
「お姉ちゃん、あの天使、今お姉ちゃんの髪にキスしたよ」
「嘘!」
悠奈は胸のあたりまで伸びた長い髪をそっと触ると、顔を耳まで真っ赤にして恥ずかしそうに俯いた。
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