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42:姫路の乱

 天正十年(1582年)五月二十日。

 安土城から坂本城へ向かう船上で、金造は信忠に話しかけた。

 金造の深刻そうな様子に、最初は信忠も真面目な顔で聞いた。


「……父上が金平糖を? 壺ごと抱え込んでボリボリ? こぼれたのがコロコロ転がって? ブフフフフッ!」


 身振り手振りがよくなかったのかもしれない。

 金造が昨日のできごとを話すと、信忠が吹き出した。


「壺を抱えた父上……いくら甘いのが好きだからって。ブフフフッ」

「笑い事ではありませんよ。すごく異様な感じだったのですから」

「金造は知らないだろうけど、奇矯な行動は父上の持ち芸だよ」

「そうかもしれませんが……だとしても、お一人であれこれ悩まれているのは、よいこととは思えません」

「それはまあ、そうだよね」


 信忠は周囲に目を配る。金造が話しかけてきた時には耳をそばだてていた信忠の側仕えたちも、信忠が吹き出したのをみて警戒が薄れている。

 天下の代替わりが近いのは、皆が肌で感じている。誰もが、何か起きるのではないか、ないなら誰かが何か起こそうとするのではないか、と警戒している。


「ぼくの方から、父上にそれとなく聞き出してみるよ」

「信長様のご予定は?」

「上洛するのは、五月末か、六月頭だと思う。その後の毛利攻めは、今の予定だと毛利が織田に服属する式典になるはず」

「わかりました。それがしは、光秀様に報告して相談しておきます」

「うん。ぼくはこのあと、徳川殿、穴山殿と一緒に京まで上がる。その後は、一緒に堺を訪問するか、あるいは京に残るかを決める」

「京でのご宿泊は、妙覚寺でしょうか」

「うん。金造も、京に来たらぼくにも報告にきてくれ」

「わかりました」


 坂本城に戻った金造は、すぐに重太に捕まった。


「金造様! 仕事があります!」

「ちょっと待って。光秀様に報告が……」

「こっちが緊急です! 金造様が十三日間放置した仕事、私がやってたんですからね!」

「いや、放置してたわけでは……」

「問答無用です。ほら、これ見て。こっちも読んで」


 船着き場で待ち構えていた重太が、文書を持って追いかけてくる。

 仕方ないので、光秀が信忠や家康らに挨拶している間、控えで重太と帳簿を確認する。


「陣触れがあり、坂本城こっちには旗本と近江国衆を集めています。昨日の時点で四千。今日は五千に届く予定です」

「出撃はいつ?」

「五日後か六日後の予定です。その頃には、八千まで増えるかと」

亀山城あっちには、どれだけ集まる?」

「丹波と山城の国衆を中心に、約四千です。合計一万二千」

「よし。信長様と信忠様の本軍として恥ずかしくない数になったな」

「そしてこっちが、現時点での両城の城米じょうまいです」

「坂本城に一万三千。亀山城に七千。合計二万俵か」

「今日は四千いますので、常より五十俵は減ってるはずです」

「常の減りが平均で七俵だったか。五十七俵だな」

「朝方に小早船が二艘入りました。六十俵入ったので差し引き三俵の増です」


 城米は、城の蔵に蓄えた米だ。

 籠城で使う他に、今のように陣触れ後に三々五々集まる兵が消費する。

 出撃時には、各隊が腰兵糧分を荷馬にくくりつけて城を出る。三日分だから、八千の兵となれば三百俵だ。亀山城まで二日で行き、そこで山城・丹波衆四千と合流する。二日間で消費した二百俵を亀山で補充し、山城・丹波衆が百五十俵を抱えてさらに西へ向かう。

 目的地は姫路城だ。

 この時期の姫路城は、毛利攻めの兵站拠点として使われている。


「亀山を出て、篠山しのやまから三草峠みくさとうげを越えて、姫路までで三日……いや、一万越えだから、分進しないといけないし、四日はかかるな。どこかで補充するか」

「篠山の年貢米は、去年のがまだ残ってます」

「よし、庄屋に触れを回して年貢米を街道に集めよう。それで姫路城まで行ける。同行する小荷駄はできれば、姫路城まで積んだままにしときたい」

「一部でも途中で下ろすと、めちゃくちゃ目減りしますからね」

「まったくだ。少々なら目こぼしもするが、使った分の、倍は減るからな」


 織田領が拡大し、戦線が遠ざかるにつれ、小荷駄の重要性は高くなっている。

 尾張と美濃で殴り合っている間は、夜明けに移動し、昼に戦い、夜には逃げるか勝鬨かちどきをあげるかしていた。しかし、上洛してからは、前線まで四日よっか五日いつかかかるのが普通となった。

 味方の領内を通るのだから、略奪まがいの押妨おうぼうはできない。帰りの兵糧を小荷駄で持参して移動する。

 坂本城からの小荷駄は、荷馬が五百頭、兵糧は千俵になる。

 亀山城からの小荷駄は、荷馬が追加で百頭、兵糧は二百俵になる。

 合計で千二百俵。一万二千人の八日分だ。

 六百頭の荷馬のため、事前に連絡を回し、街道沿いに馬草を積み上げさせ、ようやく八日分である。

 効率がよいとは、とても言えない。


「正直なところを言います」

「言わなくていい」

「いえ、言います。なんでこの時期に四国征伐をねじ込むんですか!」


 四国征伐の軍勢は、今は摂津に集結している。

 主将は神戸こうべ信孝のぶたかで、副将の丹羽にわ長秀ながひでが実質的な軍の指揮を取る。

 数は約一万。渡海済みの三好勢約五千と合流して、四国を制圧する作戦だ。


「おかげで瀬戸内海の水運、ほとんど使えないじゃないですか。湊に船であらかじめ兵糧を積み上げておけば、陸地の輸送は最小限ですむんですよ」

「信長様は、今が四国攻めに一番効果的だと思ったのだ。それがしもそう思う」


 四国征伐の主敵は長宗我部ちょうそかべ家である。

 だが、抵抗は長く続かないだろう、と織田も三好も、長宗我部も考えている。

 四国の国衆たちも、武田攻めの結果は知っている。一代で急成長した長宗我部家に武威で従属させられた国衆たちが、織田の木瓜紋もっこうもんの旗を見たとたん信濃や甲斐と同じ雪崩なだれを起こすであろうこと、他ならぬ長宗我部家がよく理解していた。

 国衆は、中央から半独立した地方領主だ。そして領域内の最有力国衆が、一円の国衆の「頼り」を集めて進化グレードアップしたのが戦国大名だ。戦国大名に興亡はあっても、国衆が中央から半独立している形式そのものは、変化しなかった。

 国衆は地元に戻れば領主であり、農民を支配し、年貢を徴収する存在だ。

 ところが、戦国大名同士の戦いが激化するにつれ、戦国大名は国衆の役割の合理化を進めてしまう。国衆は領地から切り離され、大名に直接従う立場になる。

 合理化が進められた国衆は、戦力として価値があがる。

 同時に、合理化が進んだ国衆にとって「頼り」にする相手が戦国大名である必要は薄れていく。「頼り」になるなら中央でも構わない、となるまであと一歩だ。

 領国内の一円支配を推し進めた結果、戦国大名は配下の国衆の「頼り」を集める魅力を喪失しつつあるのだ。


「毛利攻めも、予定では戦にはならないんですよね」

「うん。毛利は風を読むのがうまいからね。織田に降り、九州攻めの先鋒を務めるという約束を、すでに秀吉様が取り付けてある。安芸あき石見いわみから東は、すべて織田領となる」

元就そふが中国地方に覇を唱えた大毛利も、残るのは半分だけですか」

輝元まごはただでは転ばないよ。九州攻めで毛利に功績があれば、筑前は毛利の切り取り次第とし、大友、龍造寺を配下にしてもよいという条件だ」

「毛利は東を捨てて、西へ進むわけですか」

「そういうこと」


 筑前には、古くから大陸との交易で栄えた博多がある。

 実収入じつしゅうにゅうという視点でみれば、頭のいい考えだといえる。


「ひょっとして、この後は我らも九州ですか? 信長様も?」

「わからない。が、殿と信長様は京に戻り、信忠様が名代として毛利を従える形で西進することになると思う。日之介たちは信忠様の直属だ。それがしは……」

「金造様は、信忠様の直臣になられるのでは?」

「う、うん。その予定、なんだけどね……」

「その時には、私も連れていってくださいますよね?」

「そりゃあ、連れていきたいけど……それがしと重太が一緒に行くと、明智家の帳簿が壊滅しちゃうんだよ」

「……」


 無言のまま、じとっ、と重太が金造をにらむ。

 この十年、弟子として手塩にかけた少年の粘っこい視線に、金造は目を泳がせる。

 光秀が金造を呼んでいる、という小姓の声がかかり、金造はホッ、として部屋を出た。

 背中にジトジトした視線が刺さる。


「おお、金造。よく帰ってきてくれた。すまんが手伝ってくれ」


 光秀は、文書をそこらじゅうの床に並べていた。

 状況がせわしなく混乱している時に、金造がよくやる手だ。

 一目で見渡せるようにすることで、思考の漏れをなくすのだ。

 金造は、文書の何枚かに目を通し、ため息をつく。


「何かと思ったら、信長様の御座所の準備じゃないですか」

「つい安請け合いしてしまってな。こんなに船が使えないとは思わなかった」

「重太と同じことを言いますね。四国征伐と同時なんですから、仕方ありませんよ」

「その上、信忠様の配下の、仕事よみかきできる連中がいなくなってな」


 信忠の濃尾勢は、武田攻めの後も甲斐と信濃に駐留したままだ。数の主力である足軽衆は各地に帰還したが、足軽を指揮する中~上級指揮官は、占領地行政で帰ってこられないでいる。

 軍指揮官と行政官が同一である戦国大名では、戦争で指揮官がいなくなるだけで行政が滞る。毛利攻めで信忠軍団が出動しない理由のひとつである。


「こりゃムリですね」

「いや、そこをなんとか。頼む金造!」

「なら、優先順位をつけましょう」


 金造は床にしゃがみ、書状を並べ替えた。


隘路ボトルネックとなるのは、吏僚りりょうの不足です。陸路でちまちま物資を送るには、大量の決済が必要になりますが、今はどこも手一杯です」

「ああ」

「足りなければ、借りてきましょう。堺に頼むのです」

「堺。なるほど、商人か」

「石山本願寺がまだあったら、そこに頼む手もあったのですが」

「それは仕方ない」

「これとこれとこれ……それとこれ。信長様の接待に関するものは、まとめて堺に発注しましょう。茶会、料理、寝所。どれも堺の商人が得意とするところです」

「なるほど。金造。堺との談判だんぱんを頼めるか?」

「おまかせください」


 金造は半紙に、発注内容をまとめる。

 堺の商人も暇ではない。すでに仕事は山のように抱えていよう。四国征伐の手伝いも受けているはず。


(だけど堺の商人にとって、優先順位は信長様の接待が上になる)


 四国征伐軍の兵站回りを任されているであろう信孝や長秀らの勝手方には申し訳なく思うが、こちらも譲る余裕はないのだ。


(でも、七兵衛しちべえ様には文で事情を説明しておこう)


 金造は七兵衛こと、四国征伐軍に加わっている津田つだ信澄のぶすみの顔を思い出す。金造の文を読んで「やれやれ」と苦笑している表情まで浮かぶ。そういう顔がよく似合う青年だ。ぼやきながら、何とかしてしまえる能力もある。


「四国が揉めると思うので、そっちは七兵衛様に頼ります」

「あー。そうか。そうなるよな」


 光秀がペチン、と額を叩いた。金造の省略した言葉でも言いたいことが伝わる。越前の牢人時代から数えて十五年だ。阿吽の呼吸である。

 信忠の直参になれば、このやり取りもできなくなる。それを思うと、少し寂しい。


「殿。信長様のことで、お話したいことが」

「ん? 何かあったか?」


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 同二十日。深夜。

 安土城天守閣の暗闇に、ボリボリと何かを齧る音が響く。

 信長が、金平糖の入った壺を抱え、貪っている。

 食べ終わった信長は、大の字に寝転がる。

 目を閉じ、考える。


(光秀が、謀反を企んでいる。ならば、いつだ? 場所は、どこだ?)


 信長は、光秀の決断力と実行力を、いささかも疑っていない。

 光秀が謀反を起こすのは、絶対に成功すると確信が持てる時だけだ。

 光秀の謀反の成功には、条件がある。

 信長と信忠を確実に、可能であれば同時に、殺すこと。

 たとえば、今この時。光秀が坂本城で挙兵したとしよう。

 信長と信忠を、殺せるだろうか?

 京にいる信忠は殺せるかもしれない。だが、安土城にいる信長は殺せない。

 各地の軍勢と合流した信長が坂本城を囲み、光秀を焼き殺す。


(桶狭間だ。光秀の謀反は桶狭間でなくてはならぬ)


 謀反の衝撃が、そのまま信長の死につながらねば、光秀の謀反は失敗する。

 信長に、立ち直る時間の余裕を与えてはならない。


(……本能寺か? わしが上洛した時か?)


 信長が常宿している本能寺は、京奉行の手はずで簡単な防御施設を整えてはあるが、軍勢に襲撃を受ければひとたまりもない。

 夜中に速やかに移動し、夜明けと共に襲う。


(……いや、違うな。本能寺はあり得ぬ)


 義昭が上洛した直後の永禄十二年(1566年)に起きた本圀寺ほんごくじの変は、当時は幕臣だった光秀らの奮闘で防がれた。

 加えて、京のように大きな都市は、完全な封鎖ができない。


(わしが逃げると決め、全力で逃げれば、止めることはできん。そして、わしがそうすることを、光秀は知っておる。金ケ崎の退き口よ)


 戦況が不利となれば、一目散に退散するのが信長の特徴だ。退散し、仕切り直す。ズルズルと引きずる戦いはしない。


(光秀ならば、わしが絶対に逃げられぬ場所で謀反を起こす。謀反を起こした後の見通しも立てていよう。条件が揃うのはどこだ? 時はいつだ?)


 ──嘉吉かきつの変


 信長の中で、天啓てんけいのように、閃きが走る。

 嘉吉元年(1441年)。第六代将軍の足利あしかが義教よしのりが、赤松あかまつ満祐みつすけに暗殺された事件である。


(戦勝の宴と偽って将軍を迎え入れ、逃げられぬようにして殺す。光秀も赤松にならうはずだ。……だが、それだけでは足りぬ)


 嘉吉の変の後、赤松満祐は領国の播磨に戻って守りを固めたが、幕府の討伐軍に滅ぼされた。


(わしを殺しても、それで光秀にとっての謀反が終わるわけではない。わしの敵討ちを大義名分に、織田領内の全軍が光秀の首を狙う。光秀は、それらを返り討ちにする手はずも一緒に整えるはずだ)


 信長がまぶたを開く。黒々と乾いた瞳が天井を映し出す。外からの灯りで、狩野永徳アトリエかのうの描いた綺羅びやかな天井画がぼんやりと浮かんでいる。


(姫路城。ここだ。毛利攻めのため、わしと信忠は、姫路城に行く。光秀は、一万の兵を率いて先に姫路城に来ておる。飯を──いや、風呂だ。風呂を用意し、わしと信忠を風呂に入れる。そして、殺す)


 信長と信忠が姫路城に到着する予定日は、六月六日。

 もっとも近い場所にいる四国征伐軍は、この時には全軍が渡海を終えている。信孝や長秀が変を知っても、すぐには身動きが取れない。

 空白の時間を利用し、光秀は備中高松城を囲む秀吉の背後を襲うだろう。目の前に毛利軍。背後から明智軍では、羽柴軍はひとたまりもあるまい。講和が途中まで進んでいる毛利がどう動くかは不明だが、秀吉の味方になることはあるまい。事態がはっきりするまで様子見がせいぜいだ。

 羽柴軍を潰走させ、四国征伐軍を封じ込めれば、余裕が生じる。

 魚津うおづ城を囲む柴田勝家の北陸軍。

 上野こうずけにいる滝川一益の関東勢。

 彼らが変を知って戻る前に、京を制圧する。近江と美濃の街道を関が原で封鎖し、北陸の出口である敦賀を押さえる。

 不確定要素が大きいので、その先の展開までは読めないが、中央を押さえた光秀の優位は揺るがない。朝廷を利用し、織田家残党と停戦できればしめたものだ。やがては各個撃破して勢力圏に組み込めよう。

 織田の天下は泡沫うたかたの夢のごとくに消える。


「……それでこそ。それでこそよ」


 うっすらと微笑みすら浮かべ、信長は声に出してつぶやいた。

 信長と義昭が共に目をかけ、その期待にこたえてきたのが光秀だ。久秀や村重とは格が違う。両者の失敗を糧にして謀反を起こす。


 六六事変。

 姫路の乱。

 後の歴史書に、光秀の謀反はこう書かれるはずだ。

『天正十年(1582年)六月六日。織田信長は姫路城で家臣の明智光秀に殺害される。謀反を起こした明智光秀は、姫路城を出て備中高松城を包囲中の羽柴秀吉を背後から攻め、敗死させる。四国遠征中の丹羽長秀は石山城(旧石山本願寺)に上陸直後、明智軍に捕捉されて敗走する。七月。柴田勝家ら北陸軍は、滝川一益ら関東勢、河尻秀隆ら濃尾勢と連携して近江に攻め込むも、戦況は一進一退となり──』


(そうはさせぬ。わしが先手を打つ)


 光秀の異心いしんを見抜いた今、姫路城まで待つ必要はない。

 かといって、今すぐ光秀に「詮議したきことあり。安土城まで来い」と言っても、久秀の二の舞である。いや、村重の三の舞である。


(光秀と軍勢を引き離さねばならぬ。それも、わしが光秀の謀反に気づいておらぬかのように、自然な形で)


 坂本城で軍を集めた光秀は、丹波亀山城に向かい、ここからさらに西へ進む。丹波を抜け、三草越えして姫路城だ。


(亀山城からの進軍経路を変えさせる。東に向かわせ、老ノ坂を通ってから南下させる。そこから山陽道を西へ向かわせる。少し遠回りになるが、平地を進む形になる。ありえぬ動きではない)


 その後、緊急の件があるとして光秀だけを京に呼ぶ。


(疑われぬよう、東国で変があったことにしよう。甲斐信濃の情勢は今も不穏だ。あるいは、家康が留守中の徳川で内紛ということにしてもよい。内密に話をしたいと光秀を京に呼ぶのだ。そして──)


 四国征伐軍が渡海しておらず、備中高松城を囲む羽柴軍も奇襲するには遠い。

 光秀にしてみれば、謀反を起こしたくとも起こせない条件が揃っている。


(本能寺で、光秀を捕らえる。これでしまいだ)


 信長は、暗闇の中でニイ、と笑った。



挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 「本能寺は有り得ない」、後の歴史を知ってると皮肉と言うか。そこまで視野狭窄に追い込まれてるということなのかもしれませんが。
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