猫を飼う⑨
カーテンからさす光で目を覚ます
つくりものじゃない、おひさまのひかり
時計を見ると朝の7時
隣には金髪の猫がひとり
ちょっと寒いのか毛布にうずまってる
そっと髪を撫でる
なんだろうこの感情
愛しい、かな
そうだといいな
しばらく美しい寝顔をみつめていると
意識が戻ってきたのか薄目があく
んー…もう起きたの?
明るくて目さめたの
んー、と鳴きながらもぞもぞ動く
さむくない?
え、あー、ちょっと?
そう答えると私を自分のほうに寄せて
毛布をかぶせる
朝日に照らされた彼はどこか大人っぽくて
顎のライン、喉仏、首筋に男らしさを感じる
ぴったりくっついた身体から
私より高い体温と拍動が伝わって
あ、生きてるんだなって
あたりまえだけど しあわせな時間を
まどろみのなかで味わっていた
少しして、
彼の手のひらが私の頬を包んだ
ん、なに
おきる?
あー、地味にこんな時間か おきよう
お風呂入らないと
そう言われて昨晩そのまま寝たことを思い出す
いっしょに入る?
と聞かれるので
調子に乗るな、とデコピンで返す
そのまま起き上がってお風呂の用意を始めた
お風呂から出てパンを頬張る
SNSを流し見して
ぼーっとする いつもの朝
また髪乾かしてないの?
だってめんどくさいんだもん
女子力無さすぎでしょ
はいはい、うるさいですー
そう言いながら私の後ろに座って
ドライヤーを取り出した
はるかって話さなきゃかわいいのにね
は? 失礼すぎんか?
だって(笑)
追い出すぞ家から
はい、すみませんでした
そんなくだらないやり取りをして
髪の毛をセットしてくれる
ありがと、と伝えると
んーと答えてパンを食べながら動画を見る
これもまたいつもの流れ
半年で当たり前になった、"いつもの" 幸せ
時刻は8時半
家を出るまであと1時間
ゆっくりとした朝だ
せっかく髪の毛を綺麗にしてもらったので
お気に入りのワンピースを着て
ばっちりメイクをする
なんか気合入ってるね、なんて言われるから
たまたまだよ
デートでもする? と聞くと
え? いいの? って目を輝かせてくるから
今日は1日浮かれてもいいかなって
定時に帰るよ今日は、なんとしても
絶対に約束だからね!
うん、嬉しそうだね
そりゃもちろん
帰るとき連絡するね
満面の笑みで抱きしめられる
その笑顔に私も柔らかい心地になって
こたえるように抱き返した