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猫を飼う  作者: れい
4/15

猫を飼う④


職場について一日が始まる

昨日のチャットに目を通して

今日の作業予定を確認する

締切が近い班は忙しそう

その流れに呑まれてどこかピリピリしていた

まあそんな感じ

仕事中は虚無、感情は無い

最近社会に出て企業で働いてる人は

皆アンドロイドなのではないかと思っている

私も本当にアンドロイドだったらなって


感情は大事だよ、って

感性を豊かにとか

良い教育ってそういうものだって

なんとなく大学で学んできたのに

そのままで居ると

鋭利なもので刺されたり

遠くから弾丸が飛んできたりするから

感情の最低限だけ残して

あとはスイッチを切る、みたいな

そうして自分を別物にしていく

それが社会性で企業で働くってことなんだなと、

呑み込んだら

みんなが感情を思考する機械に見えるようになった


お昼になってふと自分のスマホを見ると

[おなかすいた]

とメッセージが来ていた

[なんか買いなよ、お金まだあるでしょ?]

[138円ある]

え、そんなに何に使ったんだと思ったけど

昨晩コンビニ行った時に家に置いておいた財布から

お金を出したことを思い出した

[ウーバー呼んでいいよ]

[やった、]

[ありがと]


私もお腹がすいたので

同期とお昼を食べに行くことにした

いつものように仕事の話と

ゲームの話、最近バズってるものの話とか

たまには真面目な話もする

同期の中で一番仲の良いこいつは

優しさに溢れて心のある社会人だと思う

同期だけど院卒だから学部卒の私とは2個上で

同僚であり友達であり兄貴みたいな人


スマホで時間を確認すると

またメッセージが来ていた

[よるごはん何?]

[きめてない]

とだけ返信していると

猫くんから?

と聞かれる

そうだよ

猫くん拾ってから何ヶ月だっけ

えっと、どのくらいだろ…半年くらい?

え、もうそんな経つんだ

だね。はやいわ、老けたなこれ。

23歳が老けたとか言うんじゃないよ


といういつもの流れ

でももう半年か、


*

例年よりひと月遅い春一番が吹く頃

お気に入りの古着屋で買い物をした帰り

なんとなく耽りたい気分だった私は

その近くの公園に寄った

子連れの親子がちらほらいる先に

スラリとした長身の男性がいた

平日のこんな時間に珍しいなと思ったら

ふと目が合ってしまって、

おねえさん

と声をかけられてしまった

近くで見ると

端正で海外の血が混じってそうな顔立ちの中に

どこか幼さを感じた

留学生かな、と思った


はい?

おねえさん、いま暇ですよね?

え、まあ

ごはん食べさせて貰えませんか?

は?


これが最初の会話だった

懐かしい

その時はまだ日本に慣れてないのかなとおもって

なんだか面白そうな出会いに好奇心が勝てず

近くのファミレスでオムライスを奢ってあげた


*

あ、そろそろ時間だから戻らないとやばい


そう言われてスマホを見ると13:55

会計を済ませて私たちは店を出た

その時ディスプレイには

[きょうはオムライスがいい]

の文字があった

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