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第17話


 レンとティエラは南の砦で勇者と

その一行と合流して以来、毎日実践中心で

彼らを鍛えてきた。


 勇者の加護もあり彼らの実力の伸びは

正直二人の想像以上であったが、

一方でこれからの魔族領での戦闘は

今までとは全く違うものになると知っており

これからが本当に彼らの真価が問われると

理解していた。


 ミッドランドの南部からこの山の中の

戦闘は常にぶつ切りで、戦闘、休んで回復、

そして再び戦闘…の繰り返しで

一度戦闘を終えると回復する時間的余裕が

あったが、これから先は連続して戦闘する

可能性が高く、どこまで集中力を持続

出来るかが鍵になる。


 二人は口には出さなかったが明日以降は

自分たちが積極的に討伐に参加し、

勇者とその一行の体力の負担をできるだけ

軽くしてやることが護衛の務めだと

思っていたのだ。


 その頃洞窟の奥では…


『いよいよ魔族領だな。』


『それにしても、自分たちの能力を

惜しみなく教えているな。』


『本当にできた人間よ。』


『あの二人、自分たちのことよりも

どうやったら勇者とその一行が強くなるのかしか

考えてないわね。私も長い間人間を見てきたけど

あんな人間は初めてよ。嫉妬も打算もなく

純粋すぎる位に純粋で真っ直ぐな二人。

人間にもここまで純粋な人たちがいたのね。』


『全くシヴァの言う通り。いや、見事だ。』


『これからが大変だけどあの二人なら

やり遂げるだろう。やり遂げたあと、

彼らと会うのが楽しみじゃて。』



 山裾で野営をした翌朝、テントを畳むと

緊張した勇者とその一行に


「さてと、この荒野はまだ魔族領の

ほんの入り口だ。ここで時間を食ってる訳

にはいかない。できるだけ戦闘を

避けるルート、敵が少ないルートを

探して進む。本番は魔王城に入ってからだと

思ってくれ。 じゃあ行こうか。」


 レンとティエラが前に出て、その後ろに

勇者と一行が続いて荒野に進み出した。


 探索スキルを使ってできるだけ戦闘を

避けながら進んでいく。


 とはいえ100%戦闘を回避するのは不可能で、


「左から1体 ニック達に任せた。」


 そう言うとレンとティエラは右に固まっている

ランクSの魔人の群れに突っ込んでいき、

あっという間に4体の魔人を討伐し、戻ってくると

ちょうど彼らが1体を倒したところだった。


 勇者と一行の様子を見て問題ないと判断したレンは


「どんどん行こう。」


 と進み出す。


(俺たちが1体倒す間に二人で4体か。本当に彼らは

凄い。俺もあのレベルに行きたい)


 前を歩くレンとティエラの背中を見ながらニックは

片手剣を持っている手で剣の柄を強く握りしめていた。


 その後も瘴気の荒野を進んでいくレン達と一行。


「正面にランクAの魔人5体。魔法系の魔人は

俺とティエラでやるから真ん中にいるのをニックが

その右のをキースらで頼む。」


 返事も聞かずに飛び出していく二人。

魔法系の魔人を精霊魔法で倒していく。


 二人の指導もあり、勇者もその一行も

無駄な動きをせずに各自が役割を果たしていく。

僧侶のペドロの強化魔法がかかると同時に

1体に向かっていくニック。


 キースとジミーはもう1体と対峙し、

キースが盾をうまく使って相手を

いなす間にキースの剣とライアンの

精霊魔法で削っていく。


キースとほぼ同時に魔人を退治し終えると

休む間もなくそのまま荒野を進む。


 その後も魔人討伐の間、途中で3時間、4時間という

細切れの休息をとり、交代で休んで短い睡眠を

繰り返しながら進んでいくと荒野の中にある

小高い丘の上に来た。


 そこからは荒野の中にある魔王城の

全景を見ることができた。

そして城のちょうど真上辺りには

魔族領の暗雲の中心にある黒い

渦が見えている。


「あれだ。あの中にお前達の倒す敵がいる。

そして、あの渦。あの渦が魔王の住んでいる

世界とつながっているんだ。いまあの黒い

渦は一番大きくなっているから瘴気が

絶え間なく流れ込んできている。

魔王を倒すとあの黒い渦が小さくなって

そして俺たちの地上に平和が戻るんだ。」


 レンの話を聞きながら、

丘の上から魔王城をじっと見つめる一行。


「そして、あれがワイバーンよ。」


 ティエラが伸ばした腕の先に、ちょうど

城の影からワイバーンが2匹飛び出てきた。

口から火を吹きながら荒野の上を飛んでいる。


「ここから魔王城に入るまでは休めないと思ってくれ。

きつい連戦が続くが、気持ちを切らさずに。

お前達なら出来る。」


 レンが一行の気合を入れ直し、一行は

荒野の丘を降りて一路魔王城を目指す。


 レンとティエラも戦闘体制で、進路上に

立ちはだかっている魔人を次々と倒していく。


 勇者のニックも能力がかなりアップし

一人でランクSSの魔人を倒すにも

時間が掛からなくなってきていた。


「ワイバーンはこっちに任せて、

皆は前からくる魔人達をお願い。」


 ティエラの言葉に頷くニックと一行。

ティエラが近づいてくるワイバーンに

精霊魔法を撃つと、命中したワイバーンが

絶命して地面に落下してきた。


「すげぇ」


 立て続けにワイパーんを魔法で撃ち落とす

ティエラ。その間にレンは魔人を片手剣一閃で

切り裂いていく。


 ニックは魔人と正面からぶつかり、

相手の槍を躱しながら魔人に傷をつけていく

一行は4人のチームワークで魔人1体づつ討伐していく。


 そうして休むまもなく魔王城を目指して

荒野を進んでいく。


「これはきついな。本当に休めない。」


 パラディンのキースがぼやいたタイミングで


「ほらっ、また右から来てるよ。

左のはこっちでやるから右側から来るのを

任せた。」


 ティエラが指示を出す。


「おっけー やってやるぜ。」


 ぼやいたもののキースもランクSとの戦闘には

随分と慣れてきていて、ペドロの強化魔法を

うけるとすぐに向かってくる魔人が振り下ろした

斧を盾でいなして躱していく。


 その調子でほぼ丸1日休みなしで戦闘しながら

進軍し、ようやく荒野の中で岩に囲まれた窪地を

見つけた。


 レンが探索スキルで周囲を調べてみても

この周囲1kmには敵のPOPはなく

気をつけるのは空を飛んでいるワイバーンだけだ。


「この岩の下にいれば大丈夫だ。

周囲も魔人のPOPはないし、空からも

見つけられない。」


 そう言うと、勇者とその一行は

倒れ込む様に岩場の奥に腰を落とし


「はぁはぁ 今日はきつかった。」


「休みなしだもんな。」


 口々に言う勇者一行。

一方勇者のニックはレンとティエラに


「二人は疲れてないんです?」


 その問いにはレンが一言


「俺たちは慣れている。」


「慣れている?」


 鸚鵡返しに聞くニックに


「いつも籠もっているダンジョンは

最深部はどのフロアもこんな感じでほとんど

休めないの。そこに月に数度挑戦してたから

体力の配分や、短い時間で疲れをとる方法を

身につけてるの。」


 ティエラがニックを見て答える。


「やっぱり凄いんですね。お二人は。」


 岩場の奥に、他の一行と一緒に腰掛けた

ニックがそう言うと、レンがティエラと

並んで腰を落とし、


「俺たちは凄くもなんともない。普通の

冒険者だよ。自分たちは強くない

といつも思っていた。死にたくない、

怪我をしたくないってずっと思っていた。

だからティエラと二人毎日鍛錬してた。

毎日続けてやっていたら誰でもここまで

なれるさ。」


 ジミーが二人を見て、


「俺たちだけで魔族領にきていたらと思うと

ゾッとするな。あっという間にニック以外は

倒されてただろう。」


「加護をもらったからっていい気になってた

自分が恥ずかしいな。」


 レンの話を聞いてキースも下を向いたまま呟く。


「今からでも遅くない。魔王を倒して終わりって

わけじゃないだろう? それからその能力を

さらに鍛えて後輩を指導したり、国にいる魔獣を

討伐すればいいじゃないか。冒険者である限り

遅いってことは絶対ないと思うぜ。」


 レンの言葉に頷く一行。


「とにかく、今はしっかり休んで。

まだ魔王城にも入ってないのよ。」


 ティエラの一言で我にかえった一行は

岩場の下で疲れを取るべくそれぞれ横になった。


 レンとティエラは交代で眠り、疲れを取った。

と言っても道中のランクSS程度は彼ら二人には

雑魚の敵なのでほとんど疲労はしていなかったが。


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