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第16話


 夕食が済むと精霊士のライアンと僧侶のペドロが

レンとティエラの所にやってきて、


「俺たちと魔法の威力が全然違うんだけど、

俺たちも威力をアップすることはできるかな?あるなら

その方法を教えて欲しいんだ。」


 レンとティエラはこうやって自分達から教えを乞いに

来るのを待っていた。


「もちろん、今よりも威力を上げる事はできるわよ。」


 ティエラはそう言うと、以前レンに教えて貰った

魔力を手首に集める方法を2人に伝授する。


「そうそう、身体全身に感じたら今度はそれを魔法を

撃つ手の指先に流す感じでやってみて。」


「直ぐに出来なくても諦めるんじゃないぞ

毎晩寝る前にやるだけでも全然効果が違うからな。」


「俺たちはどうしたらもっと強くなれるんだよ?」


 今度は剣士のジミーが聞いてくる。パラディンのキース、

勇者のニックもじっとこちらを見ていて、


「俺たちは今でも毎朝素振りをしている。

さっきも言ったけど、大振りの必要はない。

敵を倒すのが目的だからな。恰好なんてどうでもいいんだ。

素早く剣を動かして何度も敵に傷をつけていく、そうすれば

するほど敵が弱って倒しやすくなるからな。

明日朝から出発前に剣の指導をしてやるよ。」


 レンがそう言うと3人が「頼む」と頭を下げる。


 (随分素直になったじゃない)


 (力の差が歴然とあるし、自分達でランクSもなかなか倒せないと

分かったからな。いい傾向だよ。)


 念話で話をするレンとティエラ。


 翌朝、周囲に敵がいないのを確認すると、

2人で3人の前衛職と模擬戦を行う。


「もっと踏み込むんだ。でないと削れないぞ。」


「剣を払った後すぐに次の攻撃をして。間隔を開けないで。」


 レンとティエラが3人を相手に模擬戦をする。

流石に勇者は飲み込みが早く、言われた通りの仕草で

力強い剣捌きを見せてくる。


「いいぞ、その調子だ。」


 レンが褒めると更に剣が強くなっていく。


 ジミーの剣も昨日よりは鋭さが出てきている

レンとティエラは3人の相手をしながら、

これが勇者の加護なのかと感じていた。


 朝の鍛錬が終わると一行は再び南下していく。


「前方にランクSの魔獣1体。やってみるか?」


「やらせてくれ。」


 キースが前に出る動きに合わせてペドロが

強化魔法をかける。連携も昨日よりずっと

スムーズだ。


 魔獣のパンチを盾で受け流すと同時に

片手剣を魔獣の脚に突きす。


 勇者とジミーは背後から同時に魔獣に切りかかると

大きな声を上げてのけぞる魔獣。

そこに精霊魔法が昨日よりは威力を増して

魔獣の顔に命中し、よろけた所を勇者のニックの

片手剣が魔獣の首を刎ねた。


「いいぞ、今の連携だ。」


「早かったわよ。魔法の威力も上がってる。」


「相手が魔獣とは言え、ランクSをこのスピードで

倒せるのなら、もっと上を目指せるぞ。」


 レンとティエラの言葉に頷く5人。

昨日より威力を増している剣や魔法を実感できた様で

彼らの顔色も昨日よりずっと明るくなってきた。


「この調子で鍛錬しながら進んで行こう。」


 その後も魔人1体を勇者とその一行で倒しながら

南へ進んでいった。


 南へ進んだ何日か目の夜、野営をしながら、


「今日の最後は良かったな。時間も短くなったし、

かなり慣れただろう?」


 レンの問いに、パラディンのキースが、


「レンとティエラのおかげだよ。俺たちの勘違いを

修正してくれなかったら、おそらく魔王城まで

たどり着くことができなかっただろう。」


 その言葉に頷く4人。


「明日からは、ニック、一人で魔人を倒してみるんだ。

他の4人はこれまで通り4人で魔人1体を倒すんだ。」


 食事の後で魔力操作の鍛錬をしていた精霊士の

ライアンがレンを見て、


「俺たちはレンとティエラの様に1人1体の討伐の

訓練の必要はないのか?」


 その問いにはティエラが答える。


「うん。必要ないの。なぜなら、最終の敵の魔王は

1体でしょ? だからみんなはその魔王戦に向けて

もっともっとパーティの連携を深めるのが大事なの。」


「なるほど。」


「勇者のニックに1人で1体の討伐をさせるのは

彼の能力をもっとアップさせるためだ。

魔王戦の時はニックは単独で魔王に攻撃し、

他の4人はチームで魔王に攻撃する。

これが一番効率的だと思う。」


 レンの説明に納得する一行。


「実際俺たちも魔王と対戦してないから

どれくらいの強さかわからないが、

聞いている話しだと、今まで勇者とその一行の

全員が無事で帰ってきたことはないそうだ。

今回は全員で魔王を倒して全員で帰還させたいから

これからもビシビシいくぞ。」


「「頼む」」


 今まで全員無事で帰還したことが無いと聞いて

勇者とその一行の目つきが変わり、

翌日からは朝の鍛錬から気合が入っているのが

レンとティエラには感じられた。


 ミッドランドの南部を進んでいく一行。

途中で出会う魔人、魔族には

1体を勇者のニックが、残り1体を4人で

倒していく。


「ニック、もっと動きながら剣を使うんだ。

切ったあとじっとしてるとやられるぞ。」


「ライアン、精霊魔法の威力が上がってきている。

その調子だ。今のはいいタイミングだ。」


 どうしても危ない場面ではレンかティエラが

補佐するが基本一行に任せ戦闘を見守る二人。


 最初は戸惑っていた一行も徐々に慣れてきて

ランクSをニックが1体、一行4名で1体を

危なげなく倒せる様になってきた。


 そうして実際の戦闘で鍛えながら南へ進み

前方に魔族との国境となっている山が見えてきた。

その頃には勇者とその一行のランクは

二人が出会った時よりも確実に1ランク以上

上がっていた。



その山の麓で野営する一行。食事しながら


「この山の向こうが魔族領だ。山の中も

ランクSがうじゃうじゃいる。

今まででかなりみんなのスキルが上がっているが

ここで無駄な時間をかけたくないので

明日は一気に山を超えて魔族領にはいるぞ。

俺とティエラも戦闘に参加する。」


 一行と南に下っている間にレンとティエラは

二人が最後の魔王の前まで責任を持って

同行することを伝えていた。


「いよいよか。」「やってやるぜ。」


 各自、山を見ながら思い思いに発言し

夜食を終えると武器の手入れをする。


「魔族領に入ったら十分な休息が取れないと思ってね。

なので今日はしっかり休んでおいて。」


 翌日野営の道具を片付けると、


「お前たちのランクは俺たちが砦で会った時よりも

確実に1ランク以上上がってる。自信もっていけよ。」


 レンの言葉に頷く一行。


 山に入るとランクSやランクAの魔獣、魔人が

集団で固まっている。


「突っ込むぞ、一気に蹴散らせ。」


 レンとティエラが先頭をきって集団に突っ込んでいき、

その後を勇者一行が続いて集団の中に。


 片手剣2刀流の二人が剣をふるとその場で

バタバタと倒れていく獣人、魔人。


 勇者のニックは単独でランクSの魔人を倒し、

一行はチームでランクA,ランクSの敵を倒していく。


 あっという間に多数の魔族を倒し、


「この調子でガンガン行くよ!」


 ティエラの掛け声で山の奥に進んでいく。

 

 その後も出会う魔族を討伐して進んでいくと、

山の向こうに魔族領が見えてきた。


「あれが…魔族領。」


 立ち止まり、魔族領を見る一行。


 瘴気が淀んでいるのが遠目からでもわかる程で、

木がほとんど生えていない荒野が一面続いている。


「あの先に魔王城がある。見ての通りほとんど

身を隠せる場所がない。細切れに休息を取りながら

進むしかないと思ってくれ。」


 レンの言葉に勇者のニックが、


「レンさんたちはこの景色を知ってた?」


「ベルグードの南にあるダンジョン、80階層の

ダンジョンの70階からは魔族領をイメージした

フロアになっててね。私達はそこでレベル上げや

鍛錬を何度もしてきたの。そう、この景色だったわ。」


「そこまでしていたのか…。」


 ティエラの言葉に驚愕している勇者と一行。

二人が想像以上に強いにも関わらずそれでも

さらに鍛錬していたことを知り改めて

驚かされている。


 「さて、このまま山を降りるぞ。魔族領の

山裾が安全地帯なら、そこでキャンプしよう。」


 レンの言葉で再び進軍を開始する一行、

相変わらずランクS、Aの魔族、魔獣が

散見されるが、二人と一行はサクサク倒して

進んでいく。と言っても殆どレンとティエラが

倒して、一行は2、3体を倒していく程度で

あったが。


 魔族領の山裾におりると、そこまで瘴気が

漂ってきている。


「勇者の加護があるから大丈夫だよな?」


 レンの問いに頷く一行。


「私たちも神獣の加護があるから大丈夫ね。

ここで野営する?」


「ああ。休める時に休んでおこう。」


 山をおりる少し前の大木や岩がある場所で

キャンプに適した安全な場所を見つけると

腰を下ろして野営の準備をする。


 準備をしながらも時折魔族領の荒野を

見ている勇者とその一行達。


 彼らの視線の先には荒野が見え

その空は薄暗く大きな雲が渦巻いている

その渦の中心は真っ黒になっているのが

見えている。


 レンとティエラもその渦の中心を

見ながら、


「おそらく、あの雲の渦の真下が魔王城だ。

この先に行くと、地上の魔族だけじゃなくて

空からワイバーンも襲ってくる。ワイバーンは

俺とティエラに任せて、お前たちは地上の

魔人退治に集中してくれ。」


「ワイバーンって火を吹くんだろ?

大丈夫なのか?」


 剣士のジミーが心配そうに聞いてくる。


「火を吹く前に倒せばいいだけよ。

火を吹かなければただの雑魚だし。」


 ティエラがあまりにあっさりと言うので

ポカンと口を開けている一行に、


「ずっと言ってるけど、お前たちは相当

強くなってる。自信もっていけばいい。

弱気は死に繋がるぞ。」


 頷く一行に、レンは続けて、


「正直南の砦で実力を見た時は

どうなるかと思ったけど、あれから

約2週間で相当強くなってる。

今だと4人でランクSSも倒せるだろう。

ニックはソロでランクSSSもいける。

それくらいに実力が上がってるのは

俺たちが保証する。

ただ、自信過剰、慢心は禁物な。

一瞬の油断が命取りになる。

特にここから魔王城までは殆ど

気が抜けないと思ってくれ。」


「「わかった」」


「これもレンさんとティエラさんの

おかげです。ありがとう。」


 ニックが代表して礼を言うが、


「お礼は魔王を倒してからして頂戴。

まだまだこれからもっと大変よ。

最後まで気を抜かないでね。」


 ティエラが彼らを嗜める様に言う。


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