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第14話


 そうして自分たちの鍛錬、地方の街や砦に応援、

辺境地区にある瘴気溜まりの管理等

日々多忙に過ごしていた2人。


 夜ウッドウォードの自宅のソファで食後の果実汁を

飲んで寛ぎながら、


 「ねぇ。私達が勇者一向に同行して魔王城に

向かう事、レンの両親にも言わないの?」


 ティエラがレンの目を覗き込む様に聞いてくる。


 「悩んでるんだよな。両親には言った方がいいのか、

それとも言わない方がいいのか。ティエラは

どう思う?」


 振られたティエラはあらかじめ答えを用意していたのか、

即答で、


 「言っておこうよ。ご両親も元冒険者だし。

事情は理解してくれるよ。他のギルマスとかには

言う必要はないけど、レンのご両親にはきちんと

説明しておこうよ。」


 その言葉で背中を押されたレンは、


 「そうだな。俺たちがどうなるにせよ

両親には俺たちなりのやり方を説明しておいた方が

いいな。」


 「じゃあ、今から行きましょ?」


 と促されるままにレンの燐にある両親の家を訪れた。


 両親のジグスとマリエに勇者一行の護衛をしながら

魔王討伐に向かうと説明すると、


 「神獣がそれで良いと言ってるなら父さんは

お前達の好きにすればいいと言うだけだ。

よく悩んだ結果については何も言わない。

責任は重いがしっかりやり遂げてこい。」


 一方母親のマリエは、


 「そうね。冒険者じゃない多くの人達は魔王を倒すのは

勇者様だって信じてるわね。その夢壊さないためには

レン達が一緒に行った方がいいでしょうね。」


 「ありがとう。」「ありがとうございます。」


 2人してお礼を言い、

 

 「何があったかは帰ってからきちんと報告するよ。」


 「ああ。そうしてくれ。」


 「楽しみにしてるわよ。」


 両親の家から自宅に戻ると、


 「よかってね。ちゃんと言って。」


 「そうだな。ありがとうな、ティエラ。

すっきりしたよ。」


 そう言って寄り添ってきたティエラの肩に手を回して

抱き寄せた。


 

 過去の魔王と勇者の戦いがどうだったかは

レンもティエラも知らないし、神獣にも詳しくは

聞いていない。


 でも、自分たちが得たこの加護は

自分たちだけじゃなくて

国中に住んでいる人たちのために使うべき

だろうとは2人とも常日頃から思っていた。


 たまたま選んだジョブが赤魔導士で、その時には

まさか自分達が魔王討伐に参加するなんて

思ってもみなかったが、神獣から加護を貰う度に、

こうして得た力を自分達だけで使うのではなく、

出来るだけ皆の役に立ちたいと思っていた2人は

積極的に魔獣の討伐を行い、ダンジョンに潜り、

そこで得た経験は周囲の冒険者に伝えてきた。


 その集大成となるのが魔王討伐の勇者一行の同行である。

レンもティエラもこの同行はたんなる付き添いではなく、

魔王討伐までにできる限り勇者とその一行のレベルを

上げることが自分立ちの責務だと理解している。


 そうしてダンジョンで鍛錬をし、人気のない

瘴気溜まりを管理して日々を過ごしていると、

ウッドウォードのギルマスのアンドリューから、

勇者一行がミッドランドの王都を出て

南に向かった。というニュースを聞いた。


 出発の前の日に2人は両親に明日から行ってくると

話をし、ウッドウォードの自宅でアイテムボックスの

持ち物の確認をしていた。


 「私はOKよ。野営道具も食料、水もたっぷり

入ってる。」


 「こっちもOKだ。」


 「勇者とミッドランドの南の砦で合流してから

魔族領との国境まで、2週間、魔族領に入ってから

魔王城までは2,3週間ってとこかしら?」


 「魔族領内での移動の速度が読めないけど、

そんなもんだろうと思ってる。

なので合流してから魔王の前にたどり着くまで

1か月半くらいかな?」


 「今から1か月半で全てが終わるのね。」


 「終わらしてみせる。」 「うん」


 翌日、2人はウッドウォードのギルドに顔を出し

2人の担当窓口になっているユーリーに


 「暫くあちこち移動しているからここにも

ロチェスターにも当分帰ってこられないかもしれない。」


 と不在になる事を言ってから、テレポリングで

ミッドランド南の砦に飛んでいった。



 飛んだ先はこの前死闘を行った砦で、

その時の指揮官も砦の中におり、レンとティエラが

入っていくと、


 「久しぶりだな。応援に来てくれたのか?」

 

 「ええ。それと差し入れを持ってきました。」


 そう言ってティエラがアイテムボックスから

食糧、薬品、ポーションなどを次々と取り出すと、


 「これは助かる。薬品類はいくつあっても

いいからな。」


 差し入れを渡したところで、


 「ところで最近はどんな具合なんだい?」


 「小競り合いは毎日の様にある。ただ、

集団で来てないのでなんとか対応できている

ところだ。」


 指揮官の説明に頷き、


 「ここから南はまだ奪回出来ていないの?」


 ティエラの問いかけに、難しい顔をして、


 「ああ。出来ていない。この拠点を守るのに

精一杯でね。


 申し訳なさそうな口調で言う指揮官。


 「いやいや、ここを守ってくれてるだけでも

大陸の人々にとってはすごく大事な事だよ。」


 「ティエラにそう言ってもらえると助かる。

それで、君たちは?」


 「勇者とその一行がここに来るまで

ここで待ちながら魔族退治をしようかと思っている。」


 レンが答えると、


 「その勇者一行だが、ここから南の国境まで彼らを

護衛する冒険者、騎士がいなくてな。困っているんだ。」


 指揮官の言葉に、


 「それについては、俺とティエラの2人で彼らを

魔族領との国境まで連れて行くつもりだ。」


 「えっ! 本当か?」


 レンの言葉に驚く指揮官。じっと二人を見ながら


 「そうしてくれたらこちらは本当に助かるんだが、

本当にいいのか?」


 「俺たちは全然構わない。ただ、一応訪問した国の

冒険者が同行するっていうしきたりがある中で

ロチェスターの俺たちが行ってもいいのかって話しだけだ。」


 レンの言葉にしばし考えてから指揮官が口を開く、


 「建前はそうなっているが、実質ここから南部は

既に魔族の支配地域だ。気分の悪い話だがな。

だから、ここから南は無理矢理しきたりを

強調することもないと思うが。」


 それに対して、ティエラが


 「私達はいいんだけど、ミッドランドの冒険者の

人達はそれで納得してくれるかしら?」


 指揮官とレンとティエラのやりとりを近くで聞いていた

ミッドランドの冒険者が一方前に出てきて、


 「俺たちが同行しも何の役にも立たないだろう。

残念ながら同行できるレベルの冒険者はいないし、

それより俺たちはこの砦の死守に全力を注ぎたい。

レンとティエラがOKと言ってくれているのであれば

是非お願いしたいところだ。」


  以前のミッドランドの冒険者からは想像もできない

言葉を聞いてレンもティエラも思わずそちらを見る。

精悍な顔つきをしているその男は、


 「この前あんた達がこの砦に来た時、俺もいたんだよ。

レンがうちの冒険者に話ししたことを聞いていたけど

結構堪えたよ。今までの俺達は何だったんだろうってな。

けど、あの後ここの冒険者らと話をして皆目が覚めたんだよ。

残念ながらまだこの国の南部は取り返せてないけど、

この砦から北にはいかせない。

俺たちはここを死守する。だからレンとティエラは

勇者一行を魔族領との国境まで護衛してくれ、頼む。」


 レンは思わず手を出してその冒険者と握手をすると、


 「わかった。護衛の件は任せてくれ。責任を持って

護衛して連れて行く。」


 握手している二人の背中をポンポンと叩きながら

指揮官が、


 「あの時のあんたの言葉で気が付いた奴は多い。

だからこの砦も、何度攻撃を受けても今まで

死守できているんだ。あんた達のおかげだよ。」


  その後は砦に常駐している冒険者や騎士と

情報交換をして、


 「勇者一行が来るまでまだ数日あるだろうから

その間は俺とティエラも砦の防衛を手伝うよ。」


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