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第11話


 王都北西の沼の土木工事を終えた一行は

拠点としている村に戻り、工事の結果を報告。

その後レンとティエラは王都に戻り、

ギルマスのシールの部屋で今回の王都北西方面

へ出向いた報告をしていた。


「なるほど。当面の脅威は去ったってことか。」


 ギルマスが二人に補給物資運搬の礼を言い、

その後の北西の沼の土木工事の報告を聞く。


「当座は大丈夫だろう。油断はできないがな。」


「確かに。それでも俺たちはこうやって目先の

脅威を少しずつ取り去っていくしかないからな。」


 シールの言葉に頷く二人。


 「それにしてもお前らが遊軍でいてくれて

大助かりだ。いなかったかと思うとゾッとするぜ。」


 「私達、できるだけ動いてるけど、それでも

やっぱり漏れはあるのよね。なので

他の冒険者や騎士達の方々にも

頑張ってもらわないとね。」


 ロチェスター国内のみならず、ミッドランドや

アルゴナまで飛んでは魔獣、魔人を

討伐している二人。


 その活躍はギルドの職員の間はもちろん、

冒険者の中においても有名で、かつこの二人に

期待している人々は多数存在している。


 当人も神獣の加護があり、本来なら到底

辿り着けないレベルにまで上がっており、

この恩返しは神獣との約束はもちろん、

冒険者になった頃から二人によくしてくれている

ギルドや一般の市民に還元ずべきと考えていた。


 「それで、これから辺境領に戻るのか?」


 「ああ。とりあえずこっちでの仕事は

一旦終わった。もちろん、

今後も定期的に顔を出すつもりだ。」


 「是非そうしてくれ。王都のギルド連中も

頑張ってはいるが、やっぱり限界がある。

お前らが頼りなんだよ。」


 シールは二人が超がつくほどに多忙であることを

知っているが、それでも目の前の二人に

頼まざるを得ないと言うことも分かっていた。


 「時間を見つけて出来るだけ顔を出す様にしますよ。」


 ティエラがシールに答えて王都での仕事は終わった。


 ギルマスとの面談を終えてギルドの受付に出てきた

二人をそこにいた冒険者達が見つけ、


 「レンとティエラだ。」


 「オーラがあるな。」


 二人を見て酒場でたむろしていた冒険者達が

ヒソヒソと言葉を交わしている中をギルドを抜けて

城門の外に出ると、久しぶりに我が家のある

ウッドウォードに戻っていった。


 翌日、ギルドに顔を出してアンドリューに

王都北西の状況について報告する二人。


 「ご苦労だった。それにしてもドラゴンに

見張りをさせるとはな。」

 

 苦笑するアンドリュー。


 「おかげでこっちは工事に専念できた。」


 あっさりと言い返すレン。 ティエラも


 「神獣の好意だからね。受けないと悪いでしょ?」


 「まぁ、今更お前達が何をしてももう驚かないが。

ところでこれからはどうするんだ? 

いつも通りの拠点廻りか?」


 「毎日行けるかどうかはわからないが、

基本はそうするつもりだ。

勇者一行はおそらく今はアルゴナ公国だろ? 

あと2ヶ月か3ヶ月程、彼らの魔王との対決の

結果が判明するまではこっちも

気を抜けないからな。」


 「勇者一行に何かあったらお前達が

直ぐに出向くって事になってるんだったよな?」


 二人の使命を知っているアンドリューが聞くと、


 「その通り。それはで俺とティエラはあくまで

控え組だ。その間は人族の領内での雑魚退治に

専念するつもりだ。」


 「お前らには負担かけるが、よろしく頼む。」


 ギルマスとの打ち合わせが終わってギルドの

受付に出てくると、そこには数組の冒険者達が

たむろしていた。


 「こんにちは。しばらく見なかったけど

どこに行ってたんです?」


 声をかけてきたのは30歳を過ぎた魔法剣士の

エバンズ。レベルはパーティ全員が62で

全員同じタイミングで魔法剣士に転生している


 まだLV60台だが、赤魔道士の特性から

実質はLV70以上言われている実力者達。


 レンとティエラに憧れて同郷の4名で

赤魔道士のパーティを作成、ベルグードの

レストランで二人から冒険者の心得を

教えてもらい、そのアドバイスを守って、

しっかり防具をそろえ、クエストをこなし、

身の丈にあったダンジョンを攻略して

成長したパーティ。


 他の3名もエバンズの後ろでレンとティエラに

挨拶をしている。このパーティはチームワークも

良く、レンとティエラに続くのは彼らだろう

というのがウッドウォード、ベルグードでの

評価であった。


 レンとティエラがベルグードからここ

ウッドウォードに生活の拠点を移し、

ここにギルドが新設されると発表があった時に

この4名は一番先に同行に手をあげた。


 レンとティエラを師と仰いでそれを

公言しているのもギルド内では有名な話しだ。


 「王都の北西の方ででかい瘴気溜まりが

あったんでそっちの処理に行ってたんだよ。

辺境領内は最近どうだい?」


 レンが逆に聞き返すと


 「相変わらずですね。ミッドランドの南部は

相当蹂躙されているって話は聞いていますが、

幸にして辺境領内で落とされた村や街は

まだないです。魔族も攻めあぐねているって

感じかな。」


 「魔王復活前から事前にしっかり準備して、

砦を強化したり冒険者の質も上げてたからね。」


 エバンズの言葉にティエラがフォローする。

エバンズと他の3人も同時にうなずき、


 「レンさん達の調べで魔族のロチェスター辺境領への

進軍ルートが判明しているのは助かりますね。

魔族領から来る魔族はほとんどがミッドランドとの

国境の山を越えて、そのまま北上するのと、

北西、辺境領に向かってくる2ルートですから。

 辺境領のベルグードにに向かってきた場合、

最初に南の騎士の砦が立ちはだかっていて、

そして次にここ、ウッドウォードを通ることになるけど

どちらも相当強化された街と砦だから

そう簡単には落ちないでしょう。持久戦にも

十分に耐えらますし。なので僕らはもっぱら

街に近い瘴気溜まりの管理とそこで沸いた

魔獣の処理をしています。」


 「なるほど。となると俺たちは砦の状況でも

見てくるか。」


 「そうしましょう。この周辺はお願いね。」


 二人は街で買い出しをしてからテレポリングで

辺境領南の砦に飛んで行った。



 砦について中に入ると、騎士と冒険者達から

歓迎され、そのまま砦の中の会議室に。


 差し入れを渡してからティエラが、


 「それで最近はどんな感じ?」


 砦の騎士が代表して応える。


 「散発で魔人や魔獣は見かけるが

騎士と冒険者で対応できている。

大規模な攻撃はこの前君達が退治して以来無いが、

いつくるかもわからないので冒険者達数名が

毎日砦の周辺に斥候に出ている。


 「ハンターさんがいるのね。」


 狩人はそのジョブ特性で、サーチ機能がある。

狩人でだいたい3〜500メートル、上位転生した

ハンターだと7〜800メートル。


 レンとティエラほどではないが、それでも

貴重なスキルだ。


 「その通り。彼らの探索スキルは有用だからな。」


指揮官の説明に頷く二人。


 「なるほど。それでとりあえず俺たちも

ここで待機していいかな? この砦は

要の位置にあるからな。」


 そう言って指揮官の許可(というか是非にと

言われたのだが)を貰って砦の見張り台の

近くに立ってしばらく外を見ていると、


 「レン。南東の方向、距離5km 魔人5体。

こっちに向かってきてる。ランクはSよ。」


 レンも探索スキルで魔人の接近を確認していた。


 神獣の加護によってハンターの探索スキルより

遠くまで探索可能な二人は砦の外側の見張り台

近くの場所から四方を探索していた。


 二人はそのまま指揮官のいる場所に移動し、


 「南東から魔人が5体、こっちに向かってきている。

俺たちで処理してくるよ。」


 「頼む。」


 二人が部屋から出ていくその背中を見ながら、


 (ハンターよりも探索範囲が広いのか。

彼らがずっとここに居てくれれば楽になるのだが、

あれだけの能力、この砦だけで使わせて

もらうのは逆に失礼になるな。)


 指揮官はレンとティエラの能力を高く評価しており、

それが故に彼らを1箇所に縛りつけるのが国のために

ならないと理解していた。

 部屋を出ると、冒険者と騎士達を集め


 「南東5kmに魔人が5体いる。レンとティエラが

討伐に出向いた。こちらは今まで通りに

砦の守備を固めていつでも戦闘できる様に

準備しておこう。

 彼らが魔人を討伐している間に他の魔獣が

くるとも限らないからな。」


 そう言うと皆それぞれの役割を果たす為、

砦のあちこちに散らばっていった。


 砦を出た二人はまるで散歩でもする様に

並んで南東を目指していく。


 「ランクSがたった5体でも、

砦が攻撃されると討伐に時間がかかるし、

武器も消耗する。やっぱり俺たちが

出向くのが一番いいよな。」


 「だよね。私たちでできるだけ倒しておいた方が、

砦で頑張ってる皆さんも楽になるしね。」


 道無き道を探索スキル上に現れている赤い点、

魔人に向かって歩いて行く。


 二人の視界に魔人5体が入ったかと思うと、

相手もこちらに気付いて剣や槍を構えて走って

近づいてきた。


 レンとティエラは歩くスピードを緩める

ことなく 向かってくる魔人を見ながら

左右に広がる。


 レンに3体、ティエラに2体の魔人が向かってくる

そうしてぶつかったと思った瞬間には

魔人5体が全て2つに切断されて地面に

倒れていた。


 魔人から魔石を取り出し、アイテムボックスに

収納すると、


 「おかしいな。こいつら斥候で本隊が

くると思ってたんだが。」


 レンがそう言うと、直ぐにティエラが


 「来たわよ。南東から本隊らしき集団が。

魔人が30体以上いるわね。全てランクS。

魔獣は20体程?こっちはランクSとAか。」


 「読み通りだな。」


 「本当ね。わかりやすいわね。」


 50体近くの魔人、魔獣がこちらに近づいてくるが、

二人は全く動じることもなく左右に広がる。


 地上には存在していないであろうランクSSSや

それ以上のランクの魔人をダンジョンの79階で

鍛錬のために討伐しまくっている二人にとっては

ランクSは既に雑魚以下の存在になっている。


 レンとティエラを見つけた魔獣が武器を振り回して

向かってき、その奥の魔人の中で魔法使い系の魔人は

魔法の詠唱を始める。


 二人は詠唱を始めた魔人に自分たちの精霊魔法を

ぶつけて頭を飛ばして絶命させる。


 生き残った魔法使いの魔人が魔法を詠唱するが

レベル差がありすぎでフルレジストして全く

ダメージを受けない。


 そうして向かってきた魔獣の群れに突っ込んでいくと

あっという間に魔獣を全て討伐し、そのまま魔人の群れに

突っ込んでいった。


 魔人の動きはまるでスローモーションの様に遅く

余裕で攻撃を交わしながら左右に持った2本の片手剣で

次々と魔人を倒していく。


 戦闘が始まって5分もたたないうちに草原には

魔獣と魔人の死体が積み重なることになった。


 「これが一番面倒ね。」

 

 倒した敵から魔石を取り出しながらティエラがぼやくと


 「全くだ。俺たちは不要だけど砦の連中に

討伐した証拠を渡す必要があるからな。

ぶーたれずにやろうぜ。」


 50個ほどの魔石を取り出し、アイテムボックスに

入れると散歩から帰る様な軽い足取りで

砦に戻っていった。


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