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第10話


 沼の周囲にはその瘴気溜まりから誕生したと

思えるランクAの魔獣が数体たむろし、

こちらに気づくと声を上げて一斉に突っ込んでくる。


 「ここで待っててくれ。」


 そう言うとティエラと二人で向かってくる魔獣に

向かっていく2人。


 向かって行ったかと思うとあっという間に

ランクAの魔獣を全て倒して何事も

無かったかの如く戻ってくる二人。


 ポカンと見ている冒険者と騎士達に


 「これで大丈夫だ」

 

 「あ、ああ。」


 仲間が間の抜けた返事をしていると、

レンとティエラの探索スキルに赤い点が2つ現れ、

急激に近づいてきた。


 「ド、ドラゴンだ!」


 「あれが見張り役をしてくれるドラゴンだ。

心配ないからじっとしていてくれ。」


 レンが周囲の冒険者に言う間に、ドラゴンが2体、

レンとティエラの前に着地して頭を垂れ

尾を地面につけた。


 周囲が信じられないという顔をしている中、

地上に降りた2体のドラゴンの前に近付いていき、


 「申し訳ないな。こんな事をお願いして。」


 レンがドラゴンに言うと、


 『何。気にせずとも良い。神獣様よりのお願いだ、

それにしてもまた一段と強くなった様だな。

我らドラゴンでもお主ら二人には勝てそうもないわ。』


 「あの時のドラゴンさんかな。

今回はよろしくお願いしますね。」


 レンとティエラがドラゴンと話しをしている間、

他の冒険者、騎士達は遠目にレン達を見ている


 「おい、ティエラがドラゴンの頭に

手を置いてるぞ。」


 「あいつら本当に規格外だよな。」


 話しが終わったのかレンとティエラが

冒険者一行に近づいて


 「話はついた。彼らドラゴン2体が沼の周囲を

警戒してくれるそうだ。

俺たちはさっさと仕事を始めようぜ。」


 その言葉をきっかけに川と沼とを結ぶ

用水路の建設が始まった。建設と言っても

土を掘って川と沼とを繋げる作業で、

最初に沼から川につながる下流側の土木工事を

行っていく。


 「オッケー、いい感じだ。」


 「ここ。もうちょっと幅広のがいいかも。」


 調整をしながら地面を掘り、

水路を作っていく。


暫く工事をしていると、誰かが


 「おいっ、魔獣が沸いたぞ!」


 と叫んだ。


 その声で工事をしていた冒険者達が沼を見ると

ちょうど沼の中央の瘴気溜まりから魔獣が新たに

誕生したところで、それを見たティエラが

沼の淵から精霊魔法を打って一撃で魔獣を倒した。


 「すげー。」


 「やっぱり魔法一発か。」


 「レンとティエラがいて、ドラゴンが周囲を警戒

してくれてるのなら俺たちも安心だな。」


 そうしてまずは沼から川に流れを作る水路を

作り終えると、今度は川の上流から沼に川の水を

ひきこむ工事をする。


 「OKだ。川の水が沼に流れこんできてるぞ。」


 流れを見ていた冒険者が言うと、


 「今度は沼から川への水路だな。」


 再び冒険者立ちが土木工事を始める。

魔獣や魔人の脅威を感じることなく、

工事に集中できたおかげで予想より早く、

夕刻前には2本の用水路が完成した。


 「沼から川へもうまく流れるな。」


 「レン、工事が終わったけど、

もう夕方だよな?どうする?」

 

 話を振られたレンは、冒険者達に


 「とりあえず今夜はここで野営しようか。

ドラゴンもいるし大丈夫だろう。

明日朝もう一度用水路を見て、問題なければ

街に戻ることにしよう。」


 レンの提案で沼の周囲にテントを張っていく

冒険者達レンとティエラも自前のテントを用意する。


 それから二人で沼の近くにたたずんでいる

ドラゴンに近づき、


 「工事は終わったが、もう遅い。

今日はここで野営して明日の朝、

用水路の状態を見てから帰りつもりだ。」


 『わかった。今宵は我らで見張っていてやろう。

ゆっくり休んでよいぞ』


 「ありがとう。助かるわ。」


 ティエラもお礼を言う。


 『なに。神獣様の加護を持っているお前達に

何かあったら我らドラゴン族の恥になる。

神獣様にも顔向けができなくる。

我らは1日や2日は眠らなくても全く問題ない。

しっかりと見張っているから安心してくれ。』


 再びドラゴンに礼を言うと、冒険者達が

キャンプをしている場所に向かい、

今夜はドラゴンが夜通し見張っているので安心して

休んでくれというと。


 「ドラゴンが見張ってくれるなんて贅沢だよな。」


 「これでゆっくり眠れる。今日は疲れたぜ。」


 などと二人に礼を言い、早々に皆眠りについた。




 2人が王都北西の瘴気溜まりの土木工事をする少し前、

勇者一行はロチェスター王国内を次の訪問地の

アルゴナ公国領内に向けて移動していた。


 「全く弱い癖にしつこい奴らだぜ。」


 途中で遭遇するランクAの魔獣を勇者一行が

何なく討伐していく。

 一行を護衛するロチェスターの冒険者は、

合流した時から


 「魔獣や魔人は下手に手を出すと怪我するから

俺たちに任せておけよ。」


 と言われていたので魔獣が出ると一行の背後で

立っているだけだった。


 勇者とその一行がランクAを次々に倒すのを見ながら、


 「俺たちって必要か?」


 「本当だよな。」


 と話ししていると、魔獣を倒した勇者一行の一人、

剣士のジミーがそちらを向いて


 「道案内が必要だろ? 唯一の仕事が道案内

なんだから間違わずにしっかり案内してくれよな。」


 その声に勇者以外の一行が声を上げて笑う。

言われた護衛の冒険者達はムッとしながらも、

丁重に案内する様にと国やギルドから言われているので

反論もせずにただ黙っていた。


 そうして整備された道を移動し、間もなくアルゴナとの

国境に到着するという頃突然勇者のニックが

護衛の冒険者達の方を向いて


 「ところで、君たちはこの国の冒険者のレンと

ティエラって言う魔法剣士の二人組を知ってるかい?」


 と聞いてきた。


 道中殆ど無口だった勇者が話かけてきて、

護衛の連中はびっくりして一瞬立ち止まったが、

一人が口を開く。


 「もちろんだ。冒険者で初めて赤魔導士から

魔法剣士になって、ダンジョンの謎や転生の仕組みを

見つけた2人組の冒険者。

 本人たちは神獣の加護をいくつも持っていて、

その1つが長寿の加護ってやつで今では

歳は30代半ばのはずだが外見は当時と

全く変わってなくて若々しいままだ。

レベルも2人とも80台半ばだと言われているが

今の正確なレベルは誰も知らない。」


 そう言うと一行のパラディンのキースが


 「レベル80台?の二人組? 

そんなのいるわけ無いだろう」


 「そんな話、俺は聞いたことがないぞ。」


 精霊師のライアンも同意して言う。


 言われたロチェスターの冒険者は


 「オムスクではどうだかしらないが

ロチェスターと隣のアルゴナやミッドランドでは

あの二人を知らない冒険者はもぐりだと

言われているくらいに有名だよ。」


 黙って聞いていた勇者のニックは


 「実際、彼らの戦闘を見た人はいるのかい?」


 「ここ数年はずっとロチェスターの田舎に

引きこもっていて殆ど辺境領から

出てきていなかったはずだ。

最近、魔王が復活する少し前から大陸の中の

瘴気溜まりの見回りをしてるって話だが、

俺たちがいけない様な場所ばかり行ってるらしい。

実際最近の彼らの戦闘を見た奴は辺境領の奴ら

以外だとほとんどいないんじゃないかな。」


 「じゃあもう腕も鈍ってるんだよ、きっと。」


勇者一行の僧侶のペドロが吐き捨てる様に言う。


 「一度お手合わせしてみたいものだ。」


 勇者のニックが言う。

その言葉に勇者以外のメンバーがびっくりして


 「ニックなら相手にならないんじゃないの?

勇者とただの上位冒険者だぜ?」


 剣士のジミーがニックに諭す様に言うが、別の

同行しているロチェスターの冒険者が、


 「俺は最近、辺境領から王都にやってきた冒険者に

聞いたが、二人の腕前は相変わらず半端ないって話だ。

辺境領の南にある砦に魔人達が襲ってきた時、

あの二人が砦から出たと思うとあっという間に

ランクSの魔人を30体倒したそうだ。」


「ランクSを同時に30体あっという間に倒した? 

そりゃ相当話を盛ってるんだろう。」


 キースは信じられないって顔をして冒険者を

見るが、


 「あんた達がどう思おうと、俺たちロチェスターの

冒険者は誰も今の話を与太話とは思ってないぜ。

あの二人ならさもありなんって感じだ。」


 「じゃあそいつら二人組は俺たちより

強いってことかよ? 有りえない。こっちは

勇者とその加護を受けてるんだぜ?」


 執拗にキースが食ってかかるが、それを

いなす様に


 「どっちが強いかなんて俺たちにはわからない。

どっちもランクS以上のレベルがあるからな。

勇者になっている分、あんた達の方が強いかも

しれないな。けど、もし模擬戦になったら

あんた達が勝つにしても相当苦労すると思うぜ。」


 「へっ、馬鹿馬鹿しい。俺たちが苦労する?

とんでもない話だぜ。ロチェスターの連中は

人を見る目がないのかよ。」


 これ以上議論しても無駄だと悟ったのか

ロチェスターの冒険者達はそれ以上何も

口にしなかったが、皆内心では、


(こいつらより間違いなくレンとティエラの方が

強い)


 と思っていた。


 黙ってやりとりを聞いていた勇者のニックが

おもむろに、


 「強いのと戦うと、自分がもっと強くなる気が

するんだ。なのでお手合わせしてみたいと

思ったんだが、どうやら叶わない夢らしい。」


 すぐにキースがニックに


 「ランクSクラスの魔人や魔獣ならこれからも

一杯出会うからさ、そん時たっぷりと

相手をしたらキースはもっと強くなるさ。」


 「そうかもしれないな。」


 それでこの話しは打ち切りとなり、

一行はアルゴナ公国に向かって進んでく。


 そうしてアルゴナとの国境に着くと、

向こう側でアルゴナの冒険者達が

勇者一行を待っていた。


 簡単な引き継ぎを終え、勇者一行を

アルゴナ公国の冒険者に引き渡し、

一行がアルゴナの領土を王都に向かって

進み出すのを見送ると、ロチェスターの

冒険者達はその場で大きな伸びをして


 「ふぅ〜 疲れたぜ。」  


 「本当だよな。あの生意気な一行の同行、

本当に疲れたよ。」


 「勇者以外の奴ら、何なんだよ、

偉そうにしやがってさ。勇者の加護をもらって

ちょっと強くなっただけのくせに。」


 国境から自分たちの王都に向かって

歩き出しながら口々に不満を言い合う。

 

 「それにしてもレンとティエラを知らない

奴っていたんだな。」


 歩きながら一人が口にすると、


 「オムスクって最近まで鎖国状態だったから

情報が流れてないんだろう? 

レンとティエラがあちこちで活動していた頃って

鎖国してたし、鎖国が解けた頃にはあの二人は

既に辺境領に籠もってたしな。」


 「それにしても実際あのパーティと

うちのレンとティエラがやったらどうなるんだろう?」


 「そりゃどう見てもレンとティエラだろう?」


 「俺もそう思う。」


 一人の言葉に別の冒険者が同意する。


 「いくら勇者一行でもランクSの魔人30体を

あっという間に倒すなんてできないだろ?」

 

 「勇者は確かにレベルが高そうだけど、

他のメンバーは間違いなくレンやティエラより

落ちてるな。」


 そんな話しをしながら任務を終えて

王都に戻っていった。



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