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第9話


 翌朝…


「今日はどうするの?」


 朝食を終えて街に出る二人、レンの左側に寄り添って歩きながら

ティエラがレンを見上げていうと


「とりあえず今の部屋を長期で抑えたから、最低限の生活用品を買うのと、

あと防具を見てみたいんだよ。剣は昨日もらったけど

防具がレベルにあってないだろう?せっかく金もあるし

いい防具買わないかい?」


「そうね、賛成」


 雑貨屋で生活用品や下着の替えなどを買ってから、

荷物を一旦ホテルの部屋に置いて再び外へ…

大通りに面した場所にある防具屋の前を通り過ぎて

ギルドに向かうレンにティエラが


「あそこの防具屋じゃないのかぁ。

こっちって防具店あったっけ?」


「ギルドに行って、そこでいいお店を紹介してもらおうと思ってさ。

今まで防具なんて買ったことないし、ギルドに聞けば安心だろう?

大通り以外で穴場の防具屋があるかも知れないしさ。」


「なるほど。レン頭いいじゃん」


 ギルドに入るとクエスト受注した冒険者達が出払ったあとだったのか

ほとんど人もいなくてその中をカウンターに向かうと、

受付嬢のキャシーを見つけて


「キャシー、この街でいい防具屋知ってるかい」


「防具ですか? 大通りの防具屋以外というのであれば

ギルド出て右に真っ直ぐ歩いて、

海鮮レストランの角を右に曲がった細い路地の中に、

エルフがやってる防具屋がありますよ。うちも素材を下ろしているところで、

良心的でいい防具を揃えているって評判です。

看板小さいから見逃さないでくださいね。」


「おっ、いいこと聞いた。ありがとう」


「ありがとうね」


 並んでギルドの前の通りをゆっくりと歩いていく


「ねぇ、防具って何買うつもりなの?」


「昨日剣を貰ったから武器はとりあえずいいと思ったんで、

魔法系のいいローブがあれば買おうと思ってさ。ティエラも買うだろ?

お互いにローブが結構傷んでるしさ」


「そうね、お金もあるしどうせならいいの買おうかな」


 ゆっくりと通りを並んで歩く二人、言われた通りに海鮮レストランの

角を回って路地に入ってしばらく歩くと軒先に小さな看板を見つけて


「ここかな」 


「ここだね」


 扉を開けて


「「こんにちは」」


「おや、いらっしゃい。珍しいね、こんな時間に」


 言いながら奥から年齢不詳のエルフの女性がが出てきて

店先にいる二人を見ると、


「ほぅ、赤魔道士かい。てことはあんたがレンとかいう冒険者かい?」


「そうだけど、よく名前知ってるな。んでこっちはティエラ。同じく赤魔道士」


「よろしくお願いします。今日は防具を見にきました」


 エルフの店主は二人の恰好をじっくりと見てから、


「私はここの店主やってるエルフのルフィーだよ。

久しぶりの赤魔道士ってことであんたの噂は流れてるよ、

これでも冒険者相手の商売してるからね、

情報はしっかり持っておかないとさ。

ただもう一人赤魔道士がいるってのは知らなかったよ。

まぁそこに立ってないで中に入りな。」


 勧められるままに店内に入るといろんが防具が陳列されている


「今日は何を探してるんだい?」


「魔道士系のローブがないかなと思って。

ギルドで聞いたらこの店を紹介されて来たんだ。」


「なるほど。そういうことかい。確かに私の店はギルドから

結構材料を仕入れておるからね」


 ルフィーは答えながらも今レンやティエラが来ているローブから

見えている片手剣の鞘の部分を見て、


「その剣、それが神獣の加護を受けているものか、

なかなかのモノじゃないの。

武器はあるから防具を買いたいってのかい。うん、いい心がけだ。

最近の冒険者は武器には金かけるけど防具は何でもいいってのが多くてさ。

防具もいいのを持つと攻撃も楽になるってのをわからない輩が多すぎるよ。

そのスカーフも神獣の加護を受けてるね。

なかなかも業物だね。ところであんたら、レベルはいくつなんだい?」


「2人ともLV43よ」


「ほぅ、赤魔道士でLV40超えの冒険者を見たのは本当に久しぶりだよ。

たいてい20台後半で挫折するんだが、2人ともまだ若いのに

相当頑張ったと見えるな」


「まぁ、その辺りは色々あって」


 レンはぼかして言いながら、


「ところで、ここには魔力が上がるとか、

魔攻が上がるとかいうローブってあるかな?」


「あるかな? ここをどこだと思ってるんだい? 

無いわけがないだろう。ちょっとお待ち」


 そう言うと店主は店の奥に向かい、ごそごそしてると


「これなんかどうだい?うちの店の秘蔵のローブさ。

値ははるけどいいものだよ」


 そう言って奥からローブを2着持ってきた。


 藍色に金の縁取りの刺繍が施された上品なローブを

両手に持って見せながら


「こっちのは魔法攻撃力アップと魔法防御力アップが付与されてる。」


「んでこっちのは魔法攻撃力アップと魔法量増大効果が付与されてる。」


 もう片方のローブは臙脂色に同じく金の縁取りの刺繍が施されている。

どちらも高級そうな外観で


「着てみな」


 言われて二人がローブを着ると


「あっ、これ軽い」


「本当だ、こっちのもめちゃくちゃ軽い」


 レンが藍色のを、ティエラが臙脂色のをそれぞれ着てみて、


「私、これ気に入った。もともとMPがそれほど多くなかったし、

魔攻も上がるのなら私にぴったりじゃん」


「俺はこっちかな。魔法防御アップって初めてみたけど

魔法系の魔獣相手なら有効そうだし」


「ほほほ、二人とも気にってくれたかい。この2つのローブは

私の故郷のエルフの村の近くでしか取れない繭からできた糸に

エルフの魔法使いが丹念に魔力を流し込んでから縫ったものなのさ。

今じゃそう簡単には手に入らない一品だよ。」


「いいのかい?そんな貴重なローブを」


「誰かに着てもらおうと置いておったんだが、なかなかこれという

私が気に入った冒険者が来なくてね。

赤魔道士は世間では不遇ジョブとか言われておるが、

実際はそんなことは無いんだよ。ジョブの特性をうまく生かせれば

これほど強いジョブは無いからね。見た感じ、あんたらだと

赤魔道士の特性をうまく生かして、不遇ジョブという伝説を

覆してくれるかも知れんの。それにひょっとしたら初めての

赤魔道士の上位転生が見られるかも知れんしの。」


「ほぅ、赤魔道士の歴史を知ってるんだ」


 レンの言葉にエルフの店長はうんうんと頷きながら、


「エルフは長寿だからの。昔は赤魔道士のジョブも結構多くてね、

でも彼らは皆苦労しておった。何と言ってもレベルアップの経験値が

他のジョブの3倍必要だからの。ところがある程度レベルが

上がると同じレベルの他のジョブより数倍は強くなってくるんだ。

理由は分からないけどさ。


 LV50位になると他のジョブのLV60クラス以上の強さになるって

言われてたもんだ。ただ、皆最初のレベル上げで挫折していき、

そのうち誰も赤魔道士なんて選ばなくなってしまったんだよ。

あんたらLV43って言ったよな、そのレベルだと普通のジョブなら

LV50超え、Bランクの実力は持ってると思っていいよ。」


「そんな過去があったのか」


 レンは言い、ティエラは


「実質LV50超えとか、凄くない? ランクBだよ、レン」


「そんな訳で私は最近赤魔道士を選んだ冒険者がいるって聞いて

久しぶりにワクワクしてたんだよ。そんな若者にエールを

送りたくなったって訳さ。それも二人もいたなんてね。」


「なるほど。それでこの秘蔵のローブを売ってくれるってことか、

で、いくらするんだい


「どちらも1着金貨15枚、2着で30枚だが、

特別サービスで2着で20枚で売ってあげるよ」


 思ったより安い値段を聞いて二人ともびっくりした顔をする。


「えっ、いいの?」


「ああ、構わないよ。その代わりしっかり赤魔道士で頂点を目指しておくれ」


 話しながらも暖かい視線をレンとティエラに送っていたエルフに

金貨20枚を支払い、その場でローブを着る二人。


「似合ってるのぉ。ローブに片手剣。

またこの格好を見られると思わなかったよ」


 今買ったローブを身につけた二人を感慨深げに見るルフィー


「ありがとう、大事にするね」


「そうだな。これ着て頂点目指すよ」


「うん、頑張りなさい。決して無茶はしてはならんぞ。 

また他に何か欲しいものがあったらいつでも来なさい。

お二人なら大歓迎だ。」


「ありがとうございます」


 ティエラが丁寧にお礼とお辞儀をすると


「おやおや、若いのに出来てるねぇ、

こりゃいい奥さんになるわ、ほほほ」


「お、奥さん?!」


 赤面しているティエラの手を掴んで


「じゃあ、本当に世話になった。また顔出すんでその時はよろしく」


「よろしくお願いします」


「ああ、待ってるよ」


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