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第9話



 『ひさしぶりね。レン、ティエラ。』


 シヴァの言葉に頭を下げる二人。


 『オムスクの勇者とその一行が魔族領に

向かってるわね』


 「ええ。そう聞いています。」

 

 ティエラがシヴァに答えると、シヴァは

他の神獣を見てからティエラの方を向いて


 『今回の勇者は、そうね。可もなく不可もなくって

ところかしら。

上手く魔王を倒してくれれば良いけど、

私達が感じているところでは今回の魔王は

過去に誕生した魔王より強そうなの。

なので心配しているのよ。』


 「なるほど。とはいえ、今の時点では

俺たちは動くことができない。

万が一の事態に備えて準備はしているが。」


 レンが言うと、今度はフェンリルが


 『とりあえずはそれで良いぞ。ただ、

今シヴァも言った通り今回誕生した魔王は

ちょっと厄介そうだ。いつでも行ける準備は

しておいてくれ』


 わかりましたと頭を下げる二人。


 すると今まで黙っていたこの洞窟の主である

神獣のイフリートが


 『ここに来たのは麓の森に棲んでいる

魔獣のことだな?』


 「そうです。魔王が復活、誕生してから

瘴気が更に強くなって大陸中のあちこちで

ランクアップした魔獣や魔人が出現しています。


 以前からランクAだったこの麓の森の魔獣、

魔人のランクが瘴気の影響を受けて更に

ランクアップしていると、我々にとって大きな

脅威となりますので、それを確認しに来ました。」


 ティエラはそのまま続けて、


 「森の中の魔獣は想像通りランクSに

なっていました。

でも王都からここに来る途中にある村で聞いた話では、

あの付近に出現している魔獣はランクAばかり

でこの森の魔獣は見かけませんでした。

それは偶々なのか、それとも他に何か森から出ない

理由があるのかを確かめるために来ました。」


 ティエラが説明を終えるイフリートとは

うんうんと頷き、


 『お主らは本当に変わらないな。

常に周りの人の心配をする気遣い、立派なものじゃ。

 ところで今のティエラの話しだが、

お主らが感じている通りこの麓の森の魔獣は

外に出ていってはおらん。

 この前ここに来た時は魔獣が森から出ないのは

我らに仕えているランクSのドラゴンが

彼らの上に君臨しているからだと言ったな?』

 

 確認を求めてくる言い方に頷く二人。


 『魔王が復活した時点で、彼らドラゴンのランクも

我らの加護でランクアップさせたのじゃ、

今はドラゴンはランクSSやランクSSSクラスになって

相変わらず魔獣が森から出て行かない様に君臨しておる。』


 「やっぱり」


 ティエラが呟くと、レンはイフリートを見ながら


 「でも、魔王が復活したら、魔獣は魔王の

支配下に入って統制をとれた動きを

するんじゃないのか?」

 

 思っていることを口にすると、


 『その通りだ。ただ、出て行こうとした魔獣を

ドラゴン達が軒並み倒したので、

最近は山の中でじっとしておる。

 彼らは人族に対する敵対心は魔王の影響で

相当高いが、それ以外に対してはそれほどではなくてな。

 このエリアは人の気配がない。

探しに外に出て行こうとするとドラゴンにやられる。

そう学習した様で、ランクこそ上がっているが

山から出ていくことは無いだろう。』


 イフリートがそう言うと、そのあとに

リヴァイアサンが続けて、


 『それと、この地が魔族が遠く離れているのも

理由の1つじゃ。

彼らは今は自分達の領地からの進軍に注力

しておるからの。

魔族の領地が仮に拡大できたとしたら、

人族に総攻撃をかける目的でこの山の魔獣達も

再度山を降りるかもしれぬが、

そうなる前にお前達二人が魔王を倒してくれるから、

実際そう言うことにはならないだろう』


 「いや、魔王を倒すのはまずは勇者と

その一行だろう?

俺たちは万が一の時の控え選手だぜ。」


 レンが否定する様に言う。


 『ふふ、そうであったな。ただ。

我々はお前達に期待している事は

忘れるでないぞ。』


 「それは大丈夫。勇者に何かあったらすぐに

魔王討伐に向かいます。それが私とレンの

使命だから。」


 ティエラの言葉に頷く神獣達。


 『ところで、お前達。村からここに

来る途中にある瘴気溜まりの沼は

どうするつもりじゃ?あの沼からは

ランクAの魔獣が結構湧き出てきておるぞ』


 フェンリルが問うてくる


 「ああ。ここに来る前に見た。

あの瘴気溜まり、淀んでいる沼に

近くの川の水を引き込もうと思ってる。

ただ、二人じゃ無理なので、冒険者達にも

声をかけて土木工事をするつもりだ。」


 レンがフェンリルに言うと、


 『それしかなかろう。あのまま放置しておく

訳にはいかんだろうしな。』


 それからイフリートを見て、


 『お主に仕えておるドラゴンを

レンたちの工事中、周囲の見回りをさせたらどうじゃ? 

ドラゴンがいれば他の魔獣も近付かないし、

レン達の仕事も捗ると思うんじゃが?』


 フェンリルの言葉にシヴァが続けて、


 『それはいい考えね。私達神獣は

手伝うことができないから代わりにこの世界にいる

ドラゴンに手伝ってもらいましょうか。』


 言われたイフリートは


 『わかった。ドラゴンには私から言っておこう。

レンたちが沼に着いたらドラゴンを見張りに行かせる。

それでよいか?』


 「ありがとうございます。助かります。」


 ティエラが神獣に礼を言う。レンも

 

 「そこまでして貰って申し訳ない。」


 『気にするでないぞ。ドラゴンもお主ら二人には

1目置いておる。彼らも見張りなら喜んでやるだろう。』


 再び神獣に向かって礼をする二人。


 『レン、ティエラ。分かってると思うけど、

根本的な解決方法は魔王を倒す事よ。

勇者一行は今魔族領に向かっているけど、

貴方達の出番は必ず来るわ。だからしっかり準備しておいてね。』


 シヴァが諭す様に2人に言うと、


 「わかりました。心しておきます。」


 神獣との話しが終わってテレポリングで

王都北西の村に戻った二人は村に常駐している騎士と

冒険者を集めて瘴気溜まりについて説明をした。


 「なんだって? ドラゴンが俺たちの

警護をしてくれるのか?」


 レンの説明が終わると素っ頓狂な声を上げる冒険者。

他の冒険者や騎士も信じられないという顔をしている。


 「その通りだ。実は俺とティエラは以前、

北西の火山に行ったときにドラゴンに会っている。

魔王じゃなくて神獣に仕えていると言っていた。

大丈夫だ。心配ない。」


 「心配ないって言ってもよぉ、ドラゴンだぜ。

ブレス吐かれたら一発であの世行きじゃないかよ。」


 一人の冒険者が言うと、直ぐに別の冒険者が、

 

 「レンとティエラが大丈夫と言ってるので

信用しようよ。それに、万が一ドラゴンが

裏切ってもレンとティエラなら何とかして

くれるでしょう?」


 「万が一は無いとは思うけど、もしそうなったら

私とレンでドラゴンを討伐するわ。だから安心して。」


 ティエラにそこまで言われるとその冒険者も頷くしかなく、

その話しに結論を出す様に、それまで黙って聞いていた

騎士のリーダーが、


 「いずれにしてもその瘴気溜まりは放置する訳にはいかない。

一方であのエリアはランクAが結構うじゃうじゃいるって話だ。

となると、俺たちは瘴気溜まりの沼と川とをつなぐ用水路を

作るしか、この村の安全は確保できない。

 ここはレンとティエラの提案に乗らせてもらおう。

この村から10名程出せばいけるか?」


 騎士が2人を見ながら言うと、


 「10名いたら1日か1日半でできると思う。」


 そうして騎士と冒険者の10名が翌日村から瘴気溜まりの

沼に向かって出発していった。


 途中で遭遇するランクAの魔獣は探索スキルを駆使する

レンとティエラが本体に襲いかかる前に次々と倒していく。


 「ランクAを魔法で一撃だぜ。」


 「圧倒的な差があるじゃないかよ、ランクAの魔獣が

まるで雑魚扱いだ。」


 事もなく次々と魔獣を倒していくレンとティエラを

見ながら10名の冒険者と騎士達が感嘆している。


 そうして途中で野営を挟みながら村を出て

4日目の昼前に目的の沼に到着した。



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