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第6話

 南の砦は幸いにしてこの日は戦闘がなく、

砦の中では騎士達が装備の点検をし、

冒険者達の多くは休息していた。


「昨日レンとティエラが相当やっつけてくれたから、

数日は安心できそうだ。」


「これ、差し入れね。置いておくね。」


 ティエラがアイテムボックスから

ベルグードの屋台や店で買ってきた差し入れを

大量に出すと、砦に駐在している

騎士、冒険者の間から歓声があがる。


「じゃあ、俺たちはテレポで南に飛んで

状況を見てくる。魔獣がいたら倒しておくよ。」


「悪いな。頼む。」


 最前線の砦を死守すべく、騎士と有志の冒険者達が

常駐して日々魔獣や魔人の攻撃を受けている激戦区。


 自分の国や知り合いを守るために自ら志願して

この砦に来ている冒険者達にはレンとティエラも

頭の下がる思いであった。


 レンとティエラはLV80になってからは、

時間があると国内のあちこちを回って

テレポリング用のマーキングをしていたので、

今ではほとんどのエリアに20分以内で

移動できる様になっていた。


 テレポリングで砦の南、以前の戦いで荒野に

されてしまった山裾にある魔族領と接する

高い山脈を見下ろせる崖の上に来た。


「いるわね。」


「数が揃うのを待ってる様だな。」


 崖から荒野を見ると、ランクAの魔人や

魔獣が集結し始めているところであった。


「こいつら、恐らく東のミッドランドから

来たんだろう。南の山を越えてきたとは思えない。」


「となると、このまま討伐しながら

東に移動していけば良いってこと?」


 ティエラの問いに頷き、


「ああ。東に移動していくと合流する前の

魔人や魔獣も討伐できそうだ。

放置しておいて万が一南の山にでも入られたら

亜人達にも迷惑がかかる。」


「そうね。じゃあ、サクッと行きますか。」


「そうしよう。」


 方針が決まると二人は崖下に飛び降りて魔獣、

魔人に向かって歩いていく。


 二人を見つけた魔獣が雄たけびを上げ、

仲間に知らせるとその場に集まってきていた

魔人が二人に向かって走り出してきた。


 レンとティエラは歩くスピードを変えずに

悠然と彼らを迎え撃つ。


 そのまま集団に飲み込まれる様に戦闘になったが、

あっという間にその場の魔獣、

魔人を倒していく二人。


 ランクAの魔族軍はいくら数が多くても

二人にとっては雑魚も同然で、

戦闘になっても直ぐに敵を全滅させた。


 魔石を取り出すと、顔を見合わせて頷きあってからそ

のまま東に向かって進んでいく。



 ロチェスター王国は魔族領とは高い山で

国境を接しており、その高い山が天然の要塞となって

魔族の侵攻を阻んでいるが、国境線を東に移動して

ミッドランド国になると、国境線が高くない山になり、

魔族は主としてその山を越えて人族の領地に

侵入してきている。


 侵入した魔族はそのまま北上してミッドランドの

領地を進軍していく部隊と、西に移動し、川を越えて

ロチェスター領内に入ってから北上していく部隊とに

分れている様で、今回レンとティエラがみつけたのも、

その西に移動してきた魔族軍であった。



 今回の目的は魔族を討伐すること故、

二人は隠れもせずに荒野の中を東に進んでいく。


 進んでいくと途中で2、3体固まって西に

移動しているランクAの魔獣と何度か遭遇したが、

まるでそこには何もなかったかの様に魔獣を

討伐していく。


 そうして東に進みながら目に入る魔獣を

討伐していると夕刻になった


「今日はここで帰るか。明日またこの辺りから

始めるか。」


「そうだね。」


 一旦南の砦に寄って、自分達の討伐状況を

砦の責任者に説明してから二人は

ウッドウォードに戻っていった。



 レンとティエラが辺境領の南部の拠点を

巡回している頃、勇者一行はオムスクを出て

ロチェスター王国の王都を訪問すべく

ロチェスター領内を移動していた。


 勇者の移動については各国の冒険者達が

自国領内での移動に付き添うのが通例となっており、

今も勇者一行のお付きとしてロチェスターの

王都の冒険者達が前後を歩き、総勢20名程で

王都を目指して移動していた。


「前方に魔獣3体。ランクはA」


 前方を歩いている狩人ジョブの冒険者が

サーチで本体に報告する

冒険者達が抜刀して構えると、


「俺たちが相手するよ。」


勇者のニックが抜刀しながら言うと、


「そうそう、俺たちに任せておけって

下手に立ち向かうと怪我するぜ。」


パラディンのキースが盾を構えながら続けて言う。


 勇者とその加護を受けているパーティメンバーが

言うと抜刀していた冒険者達は武器を収め前を開ける。


 もう何度目かの彼らの上から目線の物言いに

内心では頭に来ている冒険者達だが、

勇者一行の力は把握しているので言われるままに

道を開けると勇者一行が最前線に出てきた。


 その頃にはこちらに気づいたランクAの魔獣が3体が

叫び声を上げながら走ってくる。


「所詮ランクAのくせにでかい叫び声出しやがって」


 勇者の加護を受けている盾ジョブキースが言うと、

先頭で近づいてきた魔獣を自分の盾をぶつけて

吹き飛ばした。


 その時には勇者は既に別の1体の魔獣を

肩から腰に切り裂き、黒魔導士の魔法が

魔獣に命中してよろめいた所を別の剣士が

斧を振って止めを刺した。


「態度は横柄だが、流石に勇者一行だな。

あっという間だ。」


勇者の戦闘を見ていたロチェスターの冒険者達が

ヒソヒソ話しをしていると、


「倒したぜ、さぁ先を急ごう。」


 再び進み出した勇者一行。


 その後も何度かランクAの魔獣と遭遇するが、

相手をあっさり倒して予定通りの日程で

ロチェスター王国の王都に到着した。


 勇者一行が王都に到着したというニュースは

すぐにギルド経由で王国内の各地に連絡された。


「何でも道中で出くわしたランクAの魔獣を

あっという間に片づけてしまったらしぜ。」


「態度がでかいらしいな。」


 到着したという情報と共に勇者一行に関する

噂話も一緒に流れてきていた。



 それに関してベルグードとウッドウォードの

冒険者の間では、


「勇者といえどもレンとティエラ程の力はないだろう。」


「ランクAがあっという間って話だけど、


うちのあの二人ならランクAクラスの敵ならまるで

そこに敵がいなかった様に歩き続けるだろうな。」


 という評価が一般的であった。




「勇者が王都についたらしいわね。」


「そうみたいだな。予定通りに着いたってことは

途中で大きなトラブルが無かったってことだ。

つまり、オムスクから王都までに遭遇した

魔獣や魔人は勇者一行の敵じゃ

なかったってことかな。」


 ウッドウォードの自宅で夕食を取りながら

話しをしているレンとティエラ。


 「勇者一行ですもの。ランクAクラスは

さっくり倒せるはずだよ。」


 「まぁな。ここでもたもたしてる様じゃ

魔王城までたどり着けないか。」


 「そうそう。この調子でさっくりと

魔王も倒してくれると助かるよね。」


 「勇者一行が魔王を倒してくれると

それが一番いいからな。」


 二人にとってはある意味日常の会話の


一コマであった。



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