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第4話


 その数日後、ウッドウォードの自宅で寛いでいると

窓際に妖精が現れた。


 「魔王がさっき復活したよ。」


 「シヴァの洞窟に来て欲しいって。」


それだけ言うと消えた妖精。


 二人はすぐに自宅を飛び出してテレポリングで

南の洞窟に飛んだ。


 洞窟の奥にはいつもの4体の神獣が

レンとティエラを待っていた。

二人が洞窟に着くと、シヴァが、


『魔王が復活したわ。これからは人族の領地への攻撃が

より激しくなっていくわね。』


 それに付け足す様にフェンリルが口を開く、


『我らの感じるところ、今回の魔王は前回よりも

力を持っていて強そうじゃ。心しておけよ。』


 フェンリルも二人を見ながら言う。


 その言葉にうなずきながら、

  

『この時のために頂いた加護ですから、

私達が行くとなったときには全力を尽くします』


ティエラの言葉に頷く神獣達。


「勇者一行が魔王を倒したかどうかって言うのは

神獣にはわかるんだよな?」


 レンが言うと、そうだと頷いてからリヴァイアサンが、


『我らには分る。勇者一行の魔王討伐の結果、出次第

おぬしらに伝えよう。』


「「お願いします。」」


 その後勇者経由で魔王が復活したとの情報が

オムスク王国にもたらされ、オムスク経由で

全土に発表された。


 同時に魔王討伐に向かう勇者とその一行について

オムスク王国から他国に対して説明が出た。


 今回勇者の紋章が現れたのはオムスクでランクAに

なっている剣士の男(人族)、

そしてその剣士が所属しているパーティメンバーに

勇者の加護がついた。


 構成は、

剣士(勇者)、パラディン、剣士、精霊師、僧侶の5人組。


 勇者の剣士には勇者の紋章が出て能力がアップされるが、

他のパーティメンバーにも勇者の加護が付与され、

勇者程ではないが能力がアップされる。

 この勇者の加護があることにより、瘴気の濃い

魔族領内を問題無く

移動できることになるのだ。


 ちなみにレンとティエラは神獣の加護により瘴気を

完全にレジストしている。

 勇者一行は各国を回ってお披露目をしてから魔王領に

進軍するのが従来よりのしきたりになっていて、


今回は、

オムスク → ロチェスター → アルゴナ → 

ミッドランド 

と訪問し、ミッドランドの南から国境を越えて

魔族領に入っていくことが王都より発表された。


 各国の王都(首都)を訪問、挨拶をしてから

魔族領に向かうのでここの辺境領には来ないが、

魔族領に向かう途中でどこかで必ず戦闘するから、

その際に勇者一行の戦闘をみて、彼らの持っている力を

見てみたいと二人は考えていた。



 魔王が復活してしばらくすると、今まで単発で

人族の領地に侵入していた魔人、魔族らは

魔王の下統制のとれた動きを始め、組織として

オールバニー大陸全土で活動を開始した。


 各地の瘴気溜まりからは次々と魔獣、魔人が湧き出て、

それらが集団となって近くの村や町を襲ってくる様に

なった。


 対して迎え撃つ側の人族は防護柵や防護塀に 

覆われた街を中心として対抗し、冒険者や騎士達は

時に街の外に出ては魔族と激しい戦闘を繰り返していた。


 湧き出てくる魔獣、魔人のランクは1ランク以上上がり、

ランクAが主体となって攻撃してくる様になり、

冒険者、騎士達は徒党を組んで魔族を退治することと

なり、戦闘のやり方が従来と変化した。


 ここ辺境領でも事態は他の領地と同じで、

城壁や防護柵で覆われている街の外には日々

魔族が出現しては何度も攻撃をしかけてきていた。



 この日二人の姿は辺境領の南の砦にあった。

魔族が組織化されて攻撃してきた場合、

最初の防波堤となる南の砦は常に激戦となるのは

明白だったからだ。


 尤も冒険者上がりの現在の辺境領の領主は来る事態を

予想しており、1年以上前にはこの砦の拡張工事を終え、

常時100名程の騎士および有志の冒険者達が拠点として

魔族軍に対抗していた。


 弊の上から矢や魔法を放ち、近づいてくる集団の

魔獣を倒しながら、


「こいつら、以前より組織だって攻撃してきやがるな。」

 

 一人がぼやくや否や、


「後方から魔人達が近づいてくる!」


見張り塔から声が聞こえてくる。


「俺とティエラで討伐してくる。お前達は砦を頼む」


「分かった。気を付けてな。」


 冒険者と思える男の声を背後に聞きながら

レンとティエラは砦の門から外へ出ていく。


 外にでると、二人を見つけた魔獣が数体

襲いかかってくるが、ランクAの魔獣は

レンとティエラの敵ではなく、

両手に持った片手剣であっという間に討伐すると、

そのまま近づいて来る魔人の集団に向かって

駆け出していく。


「あいつら、あっという間に魔獣を倒しやがった。」


「いつ見ても半端ない強さだな。」


 砦ではそんな会話がされているが、二人には

聞こえるはずもなく、魔人の集団に向かって遠隔から

魔法を撃って、数体身動きさせなくさせると

集団に突っ込んでいった。


 ランクAとランクSの混合軍の魔人だが、LV92ある

二人にとってはランクSも雑魚以下の扱いで、集団に

突っ込んでいった二人の周囲では次々と魔人が

倒れていく。


「何なんだよ、剣の動きが全く見えない。」


「魔人が自分から倒れていってるみたいだ。」


 今や魔人達は砦ではなく、レンとティエラの二人に

向かって全員で攻撃してくるが、

その攻撃をいとも簡単にかわしつつ、

剣を左右に払うたびに地面に倒れていく魔人。


 結局30体強いたランクSの魔人をあっという間に

すべて倒し切った二人。


「ランクSでも大したことないわね。」


 両手剣を鞘に納めながらティエラが言うと、


「全くだ。数だけ多くても雑魚は雑魚だったな。」


 息を乱すこともなく、平然としたまま外から砦に

戻ってきた。

二人を騎士達、冒険者達が出迎え、


「相変わらずけた違いの強さだな。」


「ランクSの集団をあっという間に討伐かよ。」


 口々に二人を賞賛する声を聞きながら砦に

常駐している騎士団の司令官に会うと、


「よくやってくれた。矢も失わずに済んだし。

大助かりだ。」


 礼を言われて、


「ここは落としたらいけない拠点ですからね。

今回かなりの敵を蹴散らしたので数日は大丈夫かも。

レンと二人で今後も定期的に顔を出す様にします。」


 ティエラが答えると、


「お二人も多忙だとは思うが、よろしく頼む。」


 そうして二人はウッドランドの自宅に戻っていった。



 レンとティエラがいるロチェスター王国の辺境領は

南で魔族領と国境を接しているとは言え、

国境が高い山になっていること、

領主が早くから防衛のための手を打ち、

また所属している冒険者の質も高く、

更にはレンとティエラが定期的に巡回しては

魔獣、魔人を討伐していたこともあり、まだ街や村で

魔人の手に落ちたという所は無かったが、


 高位冒険者の少ないミッドランド王国では

魔族相手にかなりの苦戦を強いられていた。


 ミッドランド王国と魔族領との国境が

高い山ではなく、森となっており、

魔族の侵入が容易いこと、及び

ランクA以上の魔獣に対しては軍隊を投入して

退治するという戦法しか持っていなかったこの国は、

魔王誕生が近いという情報が流れた後、

防護柵などは設置したものの、

 魔族との戦闘方法に関しては従来の方法を

変更しなかった為、魔王誕生後に魔獣のランクが

ランクS、ランクAとなった今は、ハイクラスの

魔人の攻撃に成すすべがなく、

既に同国の南部のいくつかの村は激しい魔人の攻撃に

さらされていた。



「何故俺たちが負けるんだよ! 勇者はいつ来るんだよ!」


退却しながら冒険者が叫んでいる。

その叫んでいる冒険者に並走して走って逃げたいた

別の冒険者が魔人の精霊魔法に撃たれてその場で

倒れこんでしまった。


 それを見ながら必死で逃げる冒険者と騎士達。

ほうほうの体で砦に駆け込むとその場で

へたり込んでしまう。


「こらっ、休んでる間なんてないぞ、すぐそこまで

魔人が来てるぞ。死にたいのか? 戦うんだ!」


 軍の指揮官の声でよろよろと立あがる冒険者達、

その砦の周囲には大勢の魔獣と魔人が

砦を取り囲む様に集まり、精霊魔法やら矢を砦に

放ってくる。


 ランクA、Sの魔族に対してせいぜいランクB、Aの

冒険者では勝負にならず、矢が飛び、

魔法が打ち出されるたびに倒れていく騎士や冒険者達。


 ついに砦の門が破壊されると魔獣と魔人が一斉に

砦に流れ込んできてそのままそこにいた人族を

蹂躙していった。


 しばらくして魔族が砦を出て北に向かったあとには

多数のミッドランド人の死体が砦に放置されたままとなった。



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