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第70話


「いや、そうじゃない」


 即座にレンが否定する


「ん?そうじゃないってどういうことだ?」


「正確に言うと、あのダンジョンをクリアできない奴は

魔王までたどり着くことが出来ないってことだ。

俺たちだって実際魔王がどれだけ強いのかは知らないからな」


「なるほど」


 納得したアンドリュー


「それで、神獣はお前らに何か言ってたのか?」


「魔王は勇者が倒す。ただし、万が一勇者が

倒せなかった時は私たちの出番だって」


 ティエラが言うと、即座にアンドリューが


「ちょっと待て。いいか。次の魔王が登場するのは

まだ20年程先の話だ。いくらお前達がNo.1冒険者でも

20年後には引退してるだろう」


 その言葉を聞いてレンとティエラは二人で顔を見合わせてから


「これから言う話はギルマスのあんたと、

領主様止まりにしてくれるか」


 またか…と思いながらも頷くアンドリュー


「実は、私たち、神獣からある加護を貰っているんです。

長寿の加護…と言う加護で、なんでも寿命が

エルフ並みに長寿になるそうです」


「ええっ!」


 本当にびっくりしたアンドリューは思わず大声を出してしまって

廊下から職員が応接間に飛びこんできた。


「何かありましたか?」


「いや、何でもない、それより果実汁を3つ頼む」

 

 出ていった職員の女性が改めて果実汁を3つテーブルに置いて

 部屋から出ていくと、


「そんな加護があるのか」


「俺たちはいらないって言ったんだけどな」


「断ったのか?」


「断った。でも勇者がどんな人間かまだわからない。

もしもの時の為に俺とティエラにいつでも魔王退治に

行ける様にそれまで現役を続けて欲しいって言われてな」


 レンが言うと、ティエラが


「なので、勇者が無事魔王を倒した時は加護を外すという条件で

この加護を貰いました」


「いやいや、加護を外すって長寿できるんだぜ。こんな話が

人族の王家や貴族に知れたら皆欲しがるのは間違いない」


「前も言ったけど、俺もティエラも特別な人間じゃない

普通の冒険者だと思ってる。なので普通に暮らして

普通に年をとっていきたいんだよ。でも神獣にそこまで

頼まれたら断る理由もないしな。色々と加護を貰って

世話になってるし。ただ、今ギルマスが言った通り

こんな話が間違って外に伝わった時の影響が

予測できなくて。それで相談しようと思って来たんだ」


「そうだよな、いずれ年が経てば経つほどお前達が

年を取らないのが周囲に知れ渡って色々と不都合が

起きそうだな」


 アンドリューの言葉に二人頷く


「とりあえず確認だ。今はその長寿の加護ってのが

掛かっているんだな?」


 頷く二人


「近い将来、登場するであろう勇者一行に何かあったら

お前達が魔王討伐に行く腹はくくっているんだな?」


 再び頷く二人


「わかった。一度領主と相談する」


「お願いします」


「それで、お前達、これからどうするんだ?最難関の

ダンジョンもクリアしちまったら、もう行く場所が

無いだろう?」


「南のダンジョンの80階の最下層でダンジョンの主のフェンリルと

話をして、79階だけ魔獣のランクを更に上げてくれるそうだ。

なので、当分そこでレベル上げしてLV80を目指すつもり」


「なるほど。神獣も本気モードってことか」


 一人納得しているギルマス。


 レンとティエラは一人で納得しているギルマスを見ながら念話をしていた


(武器や身体能力が2倍になったことは黙っていようぜ)


(そうだね。余計なことまで言う必要ないしね)

 

 暫くしてから、


「いずれにしても当面このベルグードで暮らしていくって事に

変わりはないんだな?」


「それは大丈夫だ。せいぜいたまに俺の田舎に行くくらいだ」


「それを聞いて安心したよ。じゃあ俺は近々領主と話しをしてくる。

その結果はまたお前達に知らせる」


「よろしくお願いします」



 ギルマスとの話しが終わってギルドの受付フロアに出てくると

また冒険者達から声をかけられる。


 今度は職員がいるのでもうもみくちゃにされることは無かったが

話を聞かせてくれというので併設している酒場に移動して

飲み会となった


「やっぱり下に降りると相当強いのが出てくるのか?」


 エールを飲みながら最近ランクAになった冒険者が聞いてくる


「最後はランクSSまでいたな。」


「「ランクSS??」」 


「で、どうやって倒したんだよ」


「どうやってって。正面からぶつかっていって剣で

なんども切り裂いただけだぜ? 流石に1度じゃ倒れないから

5、6回攻撃したけどな」


 あっさり言うレンだが、周りの冒険者達はその言葉を聞いて

暫く声も出せなくて。ようやく一人が、


「5.6回で倒したって、その間は魔獣の攻撃を食らってたんだろう?」


「必死で避けてたよ」


「避けられるのかよ? いやレン達ならできるのか」


 一人で喋って一人で納得している冒険者。


 周囲の冒険者も


「ランクSSの攻撃を避けるなんてレンとティエラくらいしか

出来ないだろう?俺たちなら一撃でドボンだぜ」


「そうだよな。レンもティエラも普段からこうして

接してるからついつい俺たちとさほど変わらないって思って

しまうんだけど、本当は桁違いに強いんだよな」


「ティエラもレンと同じ様に避けながら攻撃してたの?」


 ティエラはエールじゃなくてジュースを飲んでいて


「そうだよ。早くて重い攻撃してくるからさ、

 避けられない時は左手の片手剣で受け止めながら

右手の片手剣で攻撃してたの」


 ティエラがそう言うと


「ちょっと待ってよ。ティエラ、あんたランクSSの魔獣の

剣を一人で受け止めてたの?」


「だって、レンはレンで別のを相手してるし、一人しか

いないから仕方ないじゃない。重いけど何とかなったわよ」


「はぁ、やっぱりこの二人は別格ね。」


 その言葉に周囲の冒険者もそうだそうだと声を出している。


 その後は冒険者同士で差し支えのない範囲で情報交換やら

武器、防具についてのやりとりなどしながら遅くまで

ギルドの酒場で盛り上がっていた。



 レン達と会った2日後、ギルマスのアンドリューは

領主の館を訪ね、旧友でもある領主のヴァンフィールドと

二人きりで面談していた。


 レンとティエラの80階クリア、それと70階以降のダンジョンの

造りを説明していくと


「なるほど。文字通り試練の場になってるな。しかし、そこまで

たどり着ける奴らってあの二人以外にいそうなのか?」


「若手でイキのいいのは何名かいるが、まだまだだな。

あまり褒めると勘違いして無理して下層に突っ込んでいかれても

困るからこちらも注意して接してはいるが。いずれにしても

あの二人とそれを追いかける次のグループとの間には

相当大きな差があるのは間違いない。」


「なるほど。やっぱり頼りになるのはあの二人だけか。

それにしても神獣も79階だけあいつらの為に

魔獣のレベルを上げてやるとか、相当好かれているのか

あてにされているのか」


 領主のヴァンフィールドが感心しながら言うと


「両方だろ。ところで、あいつらから俺とあんた止まりってことで

話を聞いている」


 そういってアンドリューは長寿の加護の件を領主の

ヴァンフィールドに説明していった。聞き終わると、


「長寿の加護。エルフ並み?

王家や貴族の連中が知ったら俺にも加護をつけろって

大変な騒ぎになるぞ」


「ああ。彼らもそれを気にしててな。かといって

こっちが何もしないと、あいつらのことだ、

王家や貴族からのアプローチがあるやいなや、

とっととこの街を出ていってしまいかねない。

こっちとしてはあの二人には何としてもこの街に

留まっていて貰いたいんだよ」


「そりゃそうだろう。正直俺だってもらえるものなら

その長寿の加護ってのを欲しいくらいだしな」


 思わずヴァンフィールドが本音を言い、それを聞いた

アンドリューも苦笑いをして


「俺ももらえるなら欲しいよ。まぁそれはそれとして

貴族、王家から二人を守る為にギルマスの俺としては

この神獣の加護を取るのがいかに難しいかという観点から

ストーリーを作ってギルドから正式に発表したいと思っている」


 ギルマスの言葉にヴァンフィールドが驚いて


「発表するのか?」


「ああ、いずれあいつらが年を取らないのはバレちまう。

その時になって周りからグダグダ言われる前に

こっちから先手を打とうと思ってな」


 アンドリューの話に


「お前がそこまで言うからには何かアイデアを持ってる

ってことだな」


 旧友のヴァンフィールドは流石にギルマスの考えを

読んでいた。


「ああ、こんな話はどうだ?」


 そう言って領主に説明していくギルマス

途中で何度か質問するものの、最終的に


「それなら貴族連中も諦めるだろう。今の話しには

本当の部分が入ってるし、まんざら100%作り話って

訳でもないからな」


 領主の同意を得られてホッとしたのか


「最終的にはあの二人の同意を得てから

ギルドとして正式に発表するつもりだ」


「わかった。万が一王都の方から俺に問い合わせが

会ったらそれはこっちで対応しておく。二人には

直接コンタクトがいかない様に俺が防波堤になろう。


「そうしてくれるとこっちとしては非常に助かる」


 アンドリューの言葉に、


「俺もお前も、あの二人が大好きなんだよな。

あいつらがずっとこのベルグードにいてくれる様に

俺たちが頑張るのは当然だろう?」


「ああ、あいつらこの2日前に会った時も

ランクSの誘いをあっさり断りやがった。

王家、貴族は糞食らえって感じでな」


 それを聞いて自分も貴族であるヴァンフィールドは

声を上げて笑い、


「その気概がいいよな。ますます気に入ったよ。こんな

貴族の世界にいるとな、周りを蹴落として自分が

上に行く、王家に認められることしか考えてない

奴ばかりでな。そんな中で糞食らえって言える態度

を取れるあいつらはやっぱり最高だよ」


「言えるだけの実力を持ってるしな」


 ギルマスも同意し、続けて


「じゃあ。二人の同意が取れたらそう言う説明で

ギルドから発表するから、ややこしい貴族関係の

対応を頼む」


「わかった。そのかわりあいつらの面倒は見てくれよな

他の領に行かせない様に頼むぜ」



ギルマスとアンドリューの話はこうして終わった


その後ギルドに戻ったアンドリューはレンとティエラに

長寿の加護の取り扱いについて説明をし、彼らの了解を

取り付けた。

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