表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/101

第67話

    

「今、みんなレベルいくつなの?」


「LV21です」


「そうなんだ。じゃあダンジョン攻略ができる

ランクDってことかな?」


「そうです。先週からリヴァイアサンがダンジョンボス

だと言われているダンジョンの攻略をはじめました。

と行ってもまだ2階層ですけど」


「あのダンジョンも降りていくと結構手強いわよ。

決して無理しちゃダメよ」


「「はい!!」」


 レンが真面目な顔になって


「冒険者は無謀な奴は生き残れない。

自信過剰な奴もしかりだ。慎重で臆病な

くらいでちょうどいい。

一度でも死んだらそれで終わりだからな。

常に自分の力を把握して決して無理をしない。

これが冒険者の鉄則だと思ってる」


 レンの言葉を4人の赤魔道士が真剣に聞いている。


「今みんなが挑戦しているダンジョン、

私達も挑戦したんだけど、途中でね、

冒険者の荷物とか武器が散乱したままだったりするの。

それがどういうことかわかるでしょ?」


 無言で頷く4人。


「脅かすつもりはないんだけど、レンが

言う通りで決して無理をしちゃダメ。

ダンジョン攻略は競争じゃない。

自分自身を高める場。

だから他の人が何階クリアしようが関係ないの。

自分たちの力に見合ったフロアの攻略が大事なの。

結果的にそれが一番強くなる近道なのよ」


 4人の赤魔導士を見ながら力説していくティエラ。


「レンさんとティエラさんはサクサク攻略

していると聞いていましたけど、そうじゃ

ないんですか?」


 サンディが顔を上げて二人を交互に見ながら聞くと、


「そんな事ないわよ。私達だって攻略に

苦労するフロアなんていっぱいあったし。

そのときは攻略を一旦止めて、そのフロアで

レベル上げしてたわ」


「そうなんですか」


 そうだよ。とレンが言ってから続けて、


「赤魔道士はLV20台、30台が一番きついって

言われている。俺たちは幸いにというか

神獣の加護を貰ってその辛いレベル帯を

ほとんど経験してないけど、

それでもレベルが上がったら上がったで

きつい事は何度もあったし、

そんな時はティエラと二人で地味にレベル上げを

してたよ」


「そうなんですね」


 皆熱心に聞いている、どうやら巷では

レンとティエラの二人は無敵の冒険者

として認識されているらしいと聞いて

二人は苦笑しながら、


「そんな訳ないだろう?俺たちだって

普通の人間だぜ? それに死にたくないしな。

いつもレベルに見合った敵を倒してるよ」


 その後も食事をしながら彼らの質問に

答えたり、自分達が日々している事、

例えば毎日家で素振りをしたり、時々

ギルドの鍛錬場で模擬戦をしたりして

技術を高めていることを説明した。


 一般にはダンジョンやフィールドの敵を

倒して賞金やアイテムを貰うことに

焦点が当たりがちだが、その陰で

たゆまぬ努力をしている事を知って

4人の赤魔導士達はまた決意を新たにした様だ。


 ある程度食事が進んだところでティエラが、


「ところで、ちょっと皆の装備を見せてくれる?」


 4人が皿の引かれたテーブルの上に片手剣を

置いていく。


「あら、4人とも同じ片手剣なのね。ローブや

ズボンも同じみたい。仲がいいのね。」


 ティエラが微笑みながら続けて、


「どこでそろえたの?この武器と防具?」


「大通りに面している武器屋さんと防具屋さんです」


 シャーロッテが答える。


「ギルドから出て大通りに向かい合って面している

武器屋さんと防具屋さん?」


 頷く4人。


 レンもティエラももちろんその店は知っていた。

場所が良いのかいつも冒険者で賑わっているお店で

二人も中に入ったことがある。

価格は普通でそこそこの武器や防具が揃っている。


 もっとも、この街で質の悪い武器や防具、あるいは

ぼったくりの店を出すとすぐに冒険者間の情報交換で

評価が下がってつぶれていくので、今街の中にある店で

程度の低い店は存在していないのだが。


 黙ってやり取りを聞いていたレンが、


「あの防具屋と武器屋ももちろん悪くない」


 その言い方を聞いて、


「レンさん達はあそこで買っていないのですか?」


 エバンスが言う


「ああ、俺たちはあそこで買っていない」


「「ええっ? じゃあどこで?」」


「私達のこの防具とこっちの片手剣は

どちらも大通りから入った路地の中にある

小さなお店で買ってるの」


 ティエラがその店の場所の説明をしていく


「武器屋さんは、ドワーフのズームって人が

やってるお店。一応小さな看板は出てるけどね。

職人気質のドワーフさんだけど腕は一流よ。


そして防具はここの通りから路地に入った奥にある

エルフのルフィーさんって人がやっているお店。

ここは本当に小さな入り口で、おまけに看板も小さいから

よく見ないと見過ごすかもしれない。


店の扉もしょっちゅう閉まったままだしね。

でもお店はたいていやってるの。

このエルフのルフィーさんはね、赤魔導士の事を

凄く知ってるから色々と相談すると良いわ。

私達も今でもよく相談してるから」


「へぇ、そんな所にも武器屋や防具屋があったんだ」


 4人は感心して話を聞いている。


「効果があるかどうかは分からないけど、私とレンの

名前を出したら少しは便宜を図ってくれるかもしれないわよ」


 レンが続けて


「お金との兼ね合いはあるけど、装備関係は出来るだけ

充実させておいた方がいいよ。特に防具な。

多くの冒険者は武器ばかりに金をかけてるけど、防具にも武器と

同じ位にお金をかけて、良いものを持たないとだめだ」


「見る限りそのローブやズボンも何の効果もついて

ないみたいね」


 言われて4人はお互いの顔を見合わせて申し訳なさそうに


「ええ。とりあえずローブだったら良いかなと安いのを

選んじゃいました」


 レンがそれを聞いて違う違うと顔を振りながら、


「ダンジョンに入る様になると、防具の良しあしで

生きるか死ぬかの瀬戸際で助かったりする。

ルフィーに頼むとお金はかかるけど、特殊効果の

付いているローブとかを売ってくれるからそれを使った

方がいいよ。素早さがアップしたり、MP回復量が増えたり

物理防御が上がったり。それらの数値が少し上がるだけで

戦闘が劇的に楽になったりするからな。」


「そうなんですね。明日にでも早速行ってみます」


「でもその前にお金を貯めないとね」


 4人でのやりとりを聞きながらティエラは、


「私達、自分の力だけでランクAになったって思ってないから。

ズームさんやルフィーさん達がいい装備を分けてくれるから

元々の力以上の能力が発揮できていると思ってるよ。

なので今でももっといい武器や防具がないかって相談してるもの。」


「それと、お金を貯めるのなら、ダンジョンよりクエストをこなした

方が良い。ランクDならいろんなクエストがあるだろう?

それをこなして装備を充実させて、それからダンジョン攻略しても

全然遅くないぞ」


 レンが続けて言う。


「「わかりました」」



 その後は雑談をしてレストランでの夕食を終え

彼らと店の前で別れた。


 二人並んで大通りを歩きながら


「赤魔導士4人組みか…頑張って欲しいわね」


 腕を組んで歩きながら大通りから

曲がって路地を歩いていき、武器屋の前で


「まだやってたな。」


「おいおい、まだやってたって、つぶれたとでも

思ってたのかよ。」


 店の前にいたズームがレンを睨んでいる。でも

その目は笑っていた。


「いや、ごめん。閉店時間なのかということさ。」


「何を言ってやがる、この時間なんてまだまだ

宵の口さ。これから疲れてグッタリして

街に戻ってきた冒険者達相手にぼろ儲けする

時間帯じゃないか。」


 ズームが笑い声を出し言う。

流石に店番の犬族の店員は返している様だ。


「ところで何の用だい?あいにくお前さん達が

持っている武器以上のものは今は手持ちはないぜ。」


「こんばんは、ズームさん。今日はね、私達のじゃないの。」


 そう言ってティエラが夕食の時の話しをして、


「そういう訳だから近々男2人、女2人の赤魔導士の

4人組がここに来ると思うから、その時は

ちょっといい武器を安く売って貰えないかしら。」


「金の不足分はあとで俺たちが払うからさ、その4人組

には俺たちのことは言わずに安くしてやってくれると

助かる。」


 レンが店の前、周囲には誰もいないのだが、小声になって

ズームに言う。


「そういうことなら後でがっぽりとお前らに請求できるな。

分かった。目ん玉が飛び出る様な請求書をお前らに

送りつけてやるよ。 その代わりそいつらには

俺の店のお勧めの良い武器を4つ格安で売ってやる。」


「ああ、頼む」、「お願いします」


二人がお礼を言うと、


「相変わらず人がいいというか何というか、

お前らももうちょっとはランクAの威厳ってのを

出したらどうなんだい?


ベルグードでお前らの名前知らない奴はいないし

この街にいるガラの悪い奴らもお前らを見たら

裸足で逃げ出すっていうのによ。」


「俺たちに威厳ってのが似合うとでも思ってるのか?」


「そう。私達にそれを求められても無理無理。」


 口調は相変わらずべらんめえだが、ズームは

この二人が大好きで、二人もこのドワーフの店主が

大好きだった。お互い気心の知れた者同士故に

遠慮なく軽口をたたき合う。


「ということでよろしく頼むよ」


「わかった。それでこれからあっち(防具屋)に行くのかい?」


「ええ。ルフィーさんにもお願いしておこうと思って。」


「あいつも宵っ張りだからまだ店やってるだろう。


 ズームに礼を言って二人は今度は別の路地に入っていって

ルフィーの店の前に立つと、扉を開け、


「こんばんは。」


 店の奥に声をかけると、奥からルフィーが出てきた。


「おや、こんばんは。相変わらず仲がいいねえ。

で、こんな時間に何の用だい?」


 ティエラが同じ様にレストランでの話をしてから


「武器屋のズームさんにも頼んだんだけど

その4人組が来たら特殊効果の付いている良い装備

を安く売ってあげて貰えないかしら?

差額は私達が負担するので。」


「赤魔導士の4人組かい。あんた達が有名に

なってから街で結構赤魔導士を見る様になったよ。

もっとも、この店に買い物に来るのはいないけどね。」


「じゃあ俺たちがもっと宣伝してやろうか?」


 冗談とも真面目とも取れる口調で言うと


「よしてくれよ。あたしゃこれくらいが

丁度いいんだよ。」


 そしてティエラを見て


「わかったよ。どうせ大通りの防具屋で何の効果も

無い安いだけのローブやズボンを買って身に着けてるんだろう。

防具の重要性をよく理解しているあんた達のお願いだし。

ちゃんと説明してうちにある防具で特殊効果のある良い品を

いくつか見繕っておくよ。」


「ありがとうございます」


「その代わりにばっちり請求させてもらうから

覚悟しておきなよ。」


「ズームさんと同じ事言ってる。」


 ティエラの言葉に


「ふん、こっちも慈善事業じゃないからね。」


 そういうルフィーの目も笑っていた


「それでその子たちのレベルはいくつなんだい?」


「確かLV21って言ってたな。」


 ルフィーはうんうんと頷いて、


「となるとこれからだね、赤魔導士としての

辛さを味わうのは。」


「その辺も説明してもらえると助かる。」


「わかったよ。あんた達の頼みだし

このルフィーがしっかり赤魔導士心得を

叩きこんでやるよ。」


「よろしくお願いします。」


「ところで、あんた達はどうなんだい?

今は南のダンジョンに潜っているんだろう?」


 違う話題を振られ、ティエラが、


「ええ。ようやく78階をクリアしていよいよ次は

79階です。ここをクリアすると最下層の

神獣のいる部屋ですね。」


「難易度が半端ない、激ムズって言われてるダンジョンも

あんた達にかかればそうでもなかったってことかい?」


「いや、結構きついよ。ヒィヒイ言いながら挑戦

してるよ。」


ルフィーはレンの言葉を殆ど信じてないって表情で


「まぁ、頑張りなよ。」



よかったら評価をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ