第66話
レンとティエラはしっかり休んでから
南のダンジョンの77階の入り口に来ていた。
目の前は宮殿の内部の様な造りの磨き上げられた
大理石に見える広めの廊下が見えている。
探索スキル上は廊下の先にランクSの魔人が
見えている
お互いに顔を見合わせてから77階のダンジョンに
突入していく二人。
廊下を歩くと二人に気付いた魔人がこちらに向かって
来るのを遠隔から精霊魔法を2発撃ち、魔人が
よろめいたときにはその身体に剣を走らせて
絶命させる。
光の粒になるのを見ることもなくそのまま廊下を進んでいく
76階で安全地帯が無く、夜通しでフロアをクリアした
経験からできるだけスピード重視での攻略を
心がけていた。
「レン、左から魔人」
「了解、正面のオークチャンピオンは任せた」
廊下の左からくる魔人の突き出す槍を軽く躱すと
そのまま片手剣を横に払う。
倒れたのを確認するとオークを倒した直後の
ティエラを追い越し、廊下の先に見える別の
魔人に走りながら精霊魔法を撃っていく。
殆ど止まることなく連続で戦闘を続け
進んでいると廊下の左右に部屋が見えてきた
ドアの空いている部屋もあれば閉まっている部屋
もある。
探索スキルで部屋が無人なのを確認すると
一応念のために念話でティエラに
『音を立てずに行くぞ』
と言うとゆっくり廊下を歩く
扉の空いている部屋は中を覗き込みながら
廊下を進んでいく。
『今のところ何もいないわね』
ティエラの念話に頷いて廊下を進むと
廊下が右に折れていてそこを曲がると
今度は廊下の右側だけに部屋が並んでいるのが見える。
一歩進めようとしたティエラをレンの手が遮る。
『真ん中を歩くな、トラップがある』
言われてティエラが探索スキルを使うと
確かに廊下の中央部分に赤い線が走っている
『本当だ。危なかった』
トラップが落とし穴なのかそれとも音が鳴って
魔人を呼び寄せるのかは不明だが
探索スキル上では廊下の中央に不気味な
赤い線が走っている。
レンとティエラは中央の赤い線の左右に分かれて
ゆっくりと進んでいく。
探索スキルを駆使して部屋に敵がいないのを
確認しつつ進んでいると、突き当りで廊下が
また右に曲がっている。
曲がり角に立ち止まって探索スキルを使うと
廊下にはトラップは無さそうだが
今度は部屋に魔人がいるのが見えた
『これは戦闘は避けられそうにないな』
『リンクしない様にしないとね。でも
万が一リンクしたらもう強硬突破(強行突破)よ』
魔人の感知距離が20メートルで変わらないのであれば
部屋の前に来た途端に気付かれるだろう。
両手に持った片手剣にエン魔法を付与すると
剣が雷を帯びて紫状に光る。
大きく息を吸うと一気に廊下を駆け出してその
部屋に飛び込んでいった。
部屋に飛び込むと同時に魔人もレンに気付いて
振り返るがその時には既にレンの剣が魔人の身体を
薙ぎ払って絶命させた。
後から部屋に入ってきたティエラが光の粒になる
魔人を見ながら
「いい手際ね。幸いにリンクしてないわ。
このまま行きましょう」
再び廊下に出て歩いていく
廊下の先に魔人が2体構えているのがわかり
今度はダッシュをしながら敵に突っ込んでいき
その場でバッサリ切り倒した
その後も広い宮殿ダンジョンの中を
進んでいくが、今までの荒野ほど広くはなく
そこらかしこに魔人がいるものの、それらを
順調に倒し、夕刻になったごろに
78階に降りる階段を見つけた
「宮殿設定のせいか、広くはしてなかったね」
階段を降りて転送板に記録し、78階の
やはり宮殿の中の様なダンジョンを二人で
見ている
「ただ、敵の密集度合は上がってるよな
この78階、そして79階と広くはなくても
それなりの難易度がありそうだ」
1日開けたその翌日
78階に挑戦した二人、
宮殿の中の通路を進みながら相変わらずの
魔人を倒しているとレベルが73にアップした。
73になり能力値が上昇したのが幸いしたのか
魔人の数は増えてもそれほど苦労することなく
倒していき、79階の階段を見つけた
階段を降りて転送板に記録し
「ようやくここまで来た」
「ね。あと1階だ。ここをクリアしたら
あのフェンリルが待ってる部屋に行けるのね」
階段から降りた場所で二人感慨深げにフロアを
見る。
最初に転移魔法陣にて突然最下層に飛ばされた時、
階段を上がってそこに見えたSランクの魔人や
魔獣を見て震え上がっていた頃から比べると
二人ともレベルもあがり、神獣の加護も
もらい、剣や魔法の威力、技術も上がっている
「あの時はこのフロアの魔獣や魔人を見て
絶対死ぬって思ったよな」
「そうそう、絶対無理って思ったもん」
「そう考えると俺たちやっぱり成長
してるんだな」
「そうだね。神獣さん達のおかげだね」
「さて、ゆっくり休んでから79階を
クリアしてフェンリルに挨拶いくか」
そう言って地上に戻っていった。
『いよいよね』
『宮殿の中の造りのダンジョンの攻略も
危なげないな。周囲が見えておる』
『しかし、最高難易度というダンジョンを
こうもあっさり攻略してこられると
ダンジョン主の我としては嬉しさ半分、
悲しさ半分ってところじゃ』
『あの二人は別格よ。それが証拠にあの二人
以外の冒険者はいまだに40階にすらたどり着いて
おらぬではないか。気を落とすことはないぞ、ふふ』
ベルグードに戻り、レンの提案で今日は
外食にして夕刻の商業区をのんびりと
歩く二人。時折冒険者達を会うと、挨拶したり
言葉を交わしたりして黄昏時の街を楽しんで、
結局ティエラがすれ違った女性冒険者から聞いた
新しいレストランに入っていった。
テーブルに座って料理を注文し、
待っている間に二人で四方山話をしていると、
「あ、あの…すみません」
「はい?」
突然声をかけられ、ティエラが返事をすると、
ローブに片手剣というスタイルの冒険者が
「あ、あの、魔法剣士のレンさんとティエラさんですよね?」
「そうだけど?貴方、赤魔道士さん?」
「そうなんです! お二人に憧れて赤魔道士を
選択しました。実は今、他の3人、彼らも全て
赤魔道士なんですが、と4人でパーテイを組んでるんです。」
「へぇ、全員赤魔道士のパーティか。珍しいな」
「い、いえそうでもないです。最近赤魔道士同士の
パーティってそれなりにいるんです。それはともかく
ここでお見かけしましたので、先輩赤魔道士、いや
魔法剣士のお二人にいろいろ話を聞かせてもらえないかと
思いまして不躾ですけど声をかけさせてもらいました」
一気にまくし立てた赤魔道士の話を聞いて
「どうする?」
「いいんじゃない? アドバイスできるか
どうかはわからないけれども、私達の
経験くらいなら話できるでしょ?」
「そうだな。じゃああっちの3人も皆ここに来て
一緒に座って飯を食いながら話しようか」
レンの提案に大喜びの4人、テーブルごと
こちらに移動してくっつけて一気に6人の
テーブルにした。
集まると4人が自己紹介をしていく
男性2人、女性2人で全員同じ街の出身らしい
「僕たちこのベルグードから北に上がった
辺境領の北東の方の街出身なんです」
どうやら声をかけてきた彼がリーダーらしい
エバンズという彼、そしてもう一人の男性が
ボリス、女性二人はシャーロットとサンディ
「北の貴族領との境あたりか?」
レンが聞くと
「そうですけど王都に続く道じゃなくて
それよりは東側にある街でアルゴナ公国
と通じている道沿いの街です」
ボリスが緊張しながら答える。
女性二人は口も開かずにずっと黙っていて
それを見かねたティエラが
「そんなに固くならなくても大丈夫よ
貴方達と年もそう変わらないんだし」
「でも、お二人って若いけれどレベル70超えて
ランクAで赤魔道士で初めて上位転生して
神獣の加護をいくつも持っているし、
もう雲の上の人ですから」
女性の一人が言うと、レンとティエラは
顔を見合わせて笑い、レンが、
「でも、そうだからって俺たち化け物じゃないんだから
もっと気楽にしてくれよ。でないとこっちも
疲れちゃうよ」
レンが4人にお酒を勧めて飲み始めると
ようやく彼らの緊張も解けてきた
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