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第65話


 自宅でゆっくり休養した2日後

二人は再び南のダンジョンに向かった。


 76階に降りて周囲を見る。


「地形は同じ?でも魔獣の数が

また増えてるわね」


 ティエラが探索スキルと自身の目で

目の前の荒野を見ている。


「ティエラは空からのワイバーンの

動きを見ながらそっち優先で頼む。

俺は地上の魔人と魔獣優先で」


 作戦が決まり荒野に踏み出す

まず空のワイバーンが二人に気付いて

火を吹きながら降下してきた。


 ティエラに任せてレンはそのまま

進んで魔人の群れに突っ込んでいく。

 

 4体の魔人がレンに気付いた時には

魔法系の魔人の詠唱をレンの精霊魔法

で止め、剣や斧を振りかざしながら

向かってくる魔人の動きを躱しながら

片手剣の二刀流でその脚や胴を

切り裂いて倒していった。


 ワイバーンを倒したティエラが合流し

魔法系の魔人に精霊魔法を連続で

発動して倒した時には残り1体の

魔人もレンが討伐していた。


「だいぶ慣れてきたね」


「そうだな。この調子でどんどん行こうぜ」


 その後も荒野を突き進んで空と地上の魔獣、魔人を

倒しているとレベルが72になった。


 72になりレベルアップ分の能力の上昇があり

討伐は楽になりつつあるも、別の問題が二人を

襲っていた。


「レン、これ野営する場所が無いんじゃない?」


「そんな気が俺もしていた」


 5体の魔人を倒し、リポップまでのわずかな間に

水分補給をしながら岩場に凭れる様にして

休息を取っている。


「予想はしていたが、見事に安全地帯が

見当たらないな」


「まぁ、安全地帯がある方がおかしいっちゃ

おかしいよね」


 ため息をつき、諦めた口調でティエラが

空を見上げている。


「となるとわずかなリポップ時間で

細切れの休憩を取りながら前に突き進むしか

無いって事だな。じゃあ行くか、そろそろ

ここもリポップする時間だ。湧く前に

出来るだけ進んでおこうぜ」


 その後も荒野を突き進み、魔人と

魔獣を片っ端から倒しては

適度に休憩を挟んで進んでいく。


 ダンジョンの中は時間の感覚がないが

恐らく外はもう真夜中であろう時間、


「これでおしまい!」


 固まっていた魔人の最後の1体を

片手剣でバッサリ切り裂いたティエラ。


 そして二人で前にある大きな岩の

向こう側に周ってその目の前の景色を見て

思わず絶句してしまう。


「これはまた…いやらしいわね」


「ティエラ、あの先見てみろよ、

あれ、下に降りる階段だ」


 そこは身を隠すものが何もない

だだっ広い荒野というが原野が広がっていて

その先に下に降りる階段の入り口が見えていた。


 荒野の幅は約500メートル、


 その荒野のそこらかしこに

魔人がうようよ徘徊している。

 

 空には当然ワイバーンが何体も

飛翔していた。


「どうする?」


「ここは一気に駆け抜けよう。

倒さなくてもいいから、全力で

走り抜けて階段の入り口まで行こう」


 レンの言うところの意味が分かったのか

ティエラが片手剣にエン魔法を付与する。


 レンも同じ様にエンを付与し

お互いに顔を見合わせてから、ダッシュで

荒野に突撃していった。


 左右に分かれて隠す物が何もない荒野を

突っ走る二人。


 空からワイバーンが火を吹きながら降下

してくるのを左右に躱し、地上にいる

魔人達が二人に気が付いてこちらに

向かってくる。


 止まらずに魔人の集団に突っ込むと

エンを付与した片手剣二刀流を

左右に薙ぎ払って魔人の脚を切断して

その場から動けない様にしていく。


 魔法系の魔人には魔法で対抗してから

同じ様に動きを止める


 集団戦になるとワイバーンもブレスが

使えず、その鋭い嘴と脚の爪で

何とか二人を捕まえようとするが、

レンもティエラも右手の片手剣で

地上の敵を払いながら、左手の片手剣で

精霊魔法と下からの突きでワイバーンを

倒しながら前に進む。


 脚を切断された魔人達がそこらかしこで

地面に倒れ込んでのたうち回っているが、


 その姿を確認する間もなくひたすらに

下に降りる階段を目指し、


 最後、階段の前にいた剣と槍を持った

魔人をバッサリ切り裂いてそのまま

階段に飛び込んだ。


 階段の途中で倒れ込む様に座り込んだ

ティエラが


「久しぶりに疲れたわよ。休みなしで働いて

しかも最後がこの集団なんてね。」


 座り込んだ隣にレンも座って

水を飲みながら、


「睡眠無しでこれはきつかったよな。

でも俺たちはやったぜ」


 二人で座りながらハイタッチをする。


「さてと、77階の様子を拝んでから

帰るとするか」


一息ついて階段を降りると


「レンの言った通りだ。」


 目の前には宮殿の様な造りの

ダンジョンが…全体的に黒基調の

暗めの幅の広い廊下が伸びていて

魔人が立っているのが見える。


「これが恐らく魔王城の城内を

イメージしたダンジョンだろう。


敵のランクは取り敢えずSか、

それなら何とかなりそうだけど、

恐らく79階になるとランクS以上も

出てくるんだろうな」


「ようやくだね」


 二人でしばらく廊下を見てから

転送版で地上に戻っていった。



 地上は朝で、そのままベルグードの街に戻ってギルドに

顔を出してギルドカードを更新していると、


「よう、レン。ダンジョンからの帰りかい?」


「ああ。朝帰りだよ。」


「何階までクリアしてきたんだ?」


 レンが 76階だと言うと、朝のクエスト

探しで来ていた冒険者達からうぉーという

歓声があがる


「もうすぐクリアじゃないかよ」


「やっぱりお前らが一番だよな」


「ティエラもすごいじゃないの」


 色々声を掛けられる。


 ティエラは知り合いに、


「でもさ、だんだん安全地帯も無くなってきてて

76階なんて野営する場所もなかったんだよ。

おかげで夜通し魔獣相手でもう疲れちゃった」


 等とぼやきまくっている。


 ギルドカードの更新が終わると

キャシーが2枚のカードを返しながら、


「お二人ともレベルアップしてたんですね。

おめでとうございます。それと討伐した

魔獣の代金への交換はどうされますか?」


 二人とも金には困っていないのでギルドに

カードでの討伐数の報告はしていたものの、

換金はせずにずっと放置していた。


「そうね。特に急いでないし、そのままに

しておいて。そのうちに換金するから」


「ちなみに今いくら位貯まってるんだ?」


レンがカウンター越しに声を潜めて言うと、


「えっとお二人合計で金貨38枚ですね」


キャシーも声を潜めて答える。


「結構貯まってるんだね」


「そうですよ。だってお二人とも全然

精算されないんですから。今回1階から

今までの階の分の全てがギルドから見て

未払いの状態ですからね」


 キャシーが困った顔して言い、そのまま続けて、


「あまりに高額になるとギルドでも一度に

支払えないかもしれません」


「わかった、わかった。じゃあとりあえず

今までの分を換金してくれ」


 キャシーの困った顔をみてレンは申し訳ないと

換金を依頼する。


 結局今までのダンジョンでの討伐の報酬と

今回のクエスト報酬の合計48枚の金貨を受け取ると

そのまま自宅に戻り、二人ともあっという間に

眠りに落ちていった。



 レン達が76階に挑戦している頃

ギルドマスターのアンドリューは

南に現れた魔人の件の報告に

領主の館を訪ね、ヴァンフィールドと

面談していた。


 領主の執務室で机からソファに移動してきて

アンドリューと向かい合って座ったヴァンフィールド。


 アンドリューが今回の南の砦からの

依頼について報告していくと、


「なるほど。澱んだ沼が瘴気溜まり

になっていてそこから今回魔人が

湧いたってことだな。それでその魔人

もしっかり討伐してくれたと。」


「その通り。アイテムボックスに

倒した魔人と傷づいた魔石を

持って帰ってきているから間違いない。

ギルドでもクエスト終了と確認して

奴らには報酬を支払った」


「相変わらずきっちり仕事してくれるな。

その川と沼を繋ぐ水路は砦の騎士が

土木作業するってことだよな。こっちからも

指示を出しておくか。」


 昔冒険者で同じパーティであったこともあり

二人の間には遠慮も気遣いもなく当時の

関係性のまま話を進めていく。


「ところでお前はレン達がもってかえってきた

魔人を見たのか?」


 ヴァンフィールドが興味深々と言った感じで

アンドリューに聞いてくると、


「もちろんだ。ほぼ完全な状態だったよ。

見たところ、魔人は魔石のある首の根元を

剣で一突きで倒されている。

そこ以外に全く外傷が見られない。

綺麗な死体だった」


その言葉にびっくりした表情をする領主。


「ちょっと待て。ランクSの魔人の魔石を一突きで倒しただと?

本当に他の場所に剣や魔法の傷はなかったのか?」


「無かった。本当に一突きで倒してる。

何なら見てみるか? ギルドの解体場にまだある筈だ」


 ギルマスの言葉に信じられないという顔をしながら、


「俺とお前が組んでた時、その時のパーティもそこそこ

強かったが、それでもランクSの魔人を一突きで

倒せるなんて出来ただろうか?」


「まず無理だな。俺たちの場合だと

あんたが盾でがっちり魔人を受け止めている隙に

俺たちが背後から剣や魔法でダメージを与えて

倒していくだろう? そうなると背中や羽根に

相当傷がついているはずだ。しかも討伐に

時間が掛かってるだろうからそれ以外の場所にも

傷がついている可能性が高い。


それに比べてあの二人は一撃で倒してる。

信じられないが事実だ。当人達の話しだと

魔人を見かけたという森に入ると分かれて探索し、

レンが魔人を見つけて、ティエラが周囲に他の魔人が

いないかどうか探っている間にレンが一人で

しとめたらしい」


 ソファに座ったまま、顔を天井に向けて

うーんと絶句する領主。


 アンドリューは続けて、


「もし見つけたのがティエラだったとしても

ティエラが一人で同じ様に倒しただろうな。

このベルグードにいる冒険者が束で掛かっても

今のあいつらは倒せないだろう。

それくらいに強い。」


「まぁ、あいつらが尋常なく強いってのは

分かってたが、それにしてもランクSを

一撃で倒せるとはな…」


「それで、クエストの報告で領主の所に

一緒に行くかと誘ったんだが断られたよ」


 それを聞いてヴァンフィールドはがばっと

ソファから身を起こし、アンドリューの顔に

自分の顔を近づけて、


「おいおい、そりゃどういうこった?

この街から出ていくなんて言ってるのか?」


 アンドリューは身を乗り出した領主の肩を手で

押さえてゆっくりソファに座らせると、


「早とちりしすぎだ。そんなことは言ってない。

あの二人は自分達が余りに領主から特別扱い

されているこの状況が周りの冒険者達に

申し訳ないって言ってる。

他にも優秀な冒険者が沢山いるからそいつらにも

領主のクエストをさせてやってくれとな」


「そういうことか。うーん、あいつらの言うことも

分かる、分かるんだがな。」


「俺からは、今後はそういう風にするが、

お前らがベルグードでNo.1の冒険者である限り

お前らしかできないクエストがあるわけでで、

その時はは引き続きよろしく頼むと言っておいた。」


「それで?」


 再び身を乗り出そうとしたヴァンフィールドを

両手で押しとどめ、


「快く受けてくれたよ。

冒険者としてクエストからは逃げないってな」


「そうか、そう言ってくれたか。とりあえず一安心だな」


 ホッとしてソファにドンと座った領主を見ながら

ギルマスのアンドリューが、


「まぁ、あれだ。今後はあいつら以外の冒険者にも

チャンスを与えてやればいいじゃないのかな」


「そうだな。それにしても本当に欲がないな。

欲が無い奴ほど怖い奴はいないって言うけど。

奴ら金にも困ってないだろうしな」


「金なら唸るほど持ってるはずだぜ、あんたも

金貨3,000枚渡していただろう? それだって

殆ど手を付けてなくても十分生活できる位に

日々稼いでいるからな。周りの冒険者に聞いても

贅沢で派手な暮らしをしてるわけでもなさそうだし

本当自然体なんだよ、あの二人は。」


「俺が言うのもおかしな話だが

余りあの二人を刺激しない方がいいか」


 笑いながらヴァンフィールドが言うと

それにつられてアンドリューも口元を緩め


「辺境伯に気を遣わせるってのは大したもんだよ、

あいつらは。幸いに今のところこの街と領地を

気に入ってくれてるからすぐにどうこうってのは

無いからそこは安心してくれていいと思う。」


「わかった。引き続きよろしく頼む。

冗談抜きで魔人や魔王やらが出てきたら

奴らくらいしかまともに相手できないだろうからな」


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