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第64話

     

 ティエラが森の方に探索スキルを作動させ

レンは森と反対側に探索スキルを作動させている。


「森にはいないっぽいね」


「他の魔人がいたら間違いなく徒党を組んでた

だろうからな」


 そのまましばらく進んでから


「前方左手に沼がある。そこで止めてくれるか?」


 御者をしていたリンツが了解といい

暫く進んだところにある沼の手前で馬車を停めた。


 馬車から降りる5人

目の前に広がる沼を見ながら


「いかにも怪しいって雰囲気よね」


 ソリアが言うとリンツも


「レンさん達の言う瘴気溜まりに

ピッタリの雰囲気だ」


 そのやりとりを聞いたレンも


「恐らくここだろう。何か嫌な雰囲気が

漂っている。馬車で沼の周囲をグルっと

廻ってくれるか?」


 再び馬車に乗り込んで沼の周囲をゆっくり

進んでいき、


「ここで止めてくれ」


 レンの指示で馬車を停めた場所は

左手に沼、右手の20メートル程離れた場所には

川が流れている。それを見ながら


「何かの拍子で川の流れが変わって

この沼の水が外に出なくなったんだろう。

 それで時間がたって澱んできて

瘴気溜まりになったんだな」


「なるほど」


「おいっ、あれを見ろ」


 突然リンツが沼のある場所を指先ながら

叫ぶ、その方向を見ると

どす黒い煙の様なのが沼の縁で発生し

ゆっくりと渦を巻く様にしながら大きく、

人の身長くらいまで筒状に回転していく。


 色はどんどん禍々しい黒色になっていき

そして黒い雲が消えると、その中から

魔獣が現れた。魔獣はそのままゆっくりと

森の方に向かって歩いていく。


「魔獣の誕生の瞬間…」


「初めてみた」


 皆見とれている中、ティエラが森に向かい始めた

魔獣に精霊魔法を撃って、一発で仕留める。


「ランクBね。でもこうやって魔獣が

生まれてくるんだ。魔人もこうやって

生まれてきたんだろうね」


「恐らく瘴気の濃度が濃いとレベルが高い

魔獣が生まれるんだろう」


 全員でしばらく沼を見ていた後、

騎士のソリアが


「となると、瘴気が溜まりにくくしちゃえば

取り敢えずここでは魔獣は湧かなくなるわね。

あの川の水をこの沼に引き込んだらいいんじゃ

ないかしら?」


「それがいいと思います。出来れば引き込む

水路は2本あるといいですね。、傾斜があるから

1本は沼に水を流し込む水路にして、

もう1本は沼から川に流しだす水路で」


 部下のリンツがソリアの提案に

引き続いて言う。


「いいアイデアだと思う。綺麗な水が

常に沼に入って循環していれば、瘴気が

溜まりにくくなると思う」


 騎士達の提案にレンも同意する。


「じゃあ、この水路の建設は砦の

私達でやるわ。幸い川から沼への距離も

短いし、2本程度なら1日もあれば

作れちゃうから」


 川と沼を通す水路は砦に駐在している

騎士達でやることになった。


 この件はひとまず決着し、


「せっかくだからもう少し東側まで

見ていく?ほかに瘴気溜まりが

あるかもしれないし」


「こっちは時間があるけど、そっちは

どうだい?」


 ティエラに続いてレンがソリアを見る。


「そうね。あと1日分くらい東に進んで

みましょうか。それで何もなかったら

今回は引き返すということで」


 方針が決まり、再び馬車で東に進んでいく

道なき道を東に進み、夕刻になって

野営をして5人で夜食と取りながら


「結局あの沼以外にそれっぽい場所は

見つからなかったわね」


「仮に森の中にあったとしても、

私達が調査できる限界もあるしね。

 木の配置具合やら土の状態やら全てを

調べないといけないし。何より

魔人がいたら私達じゃ勝てないわよ」


 ソリアとリルが話しをしている。

ティエラが口に入っている食事を

飲み込んでから


「でも1か所でも見つかっただけでも

良しとしないと。魔人も討伐できたし」


「そういうこと。見た限り魔人はいないし

当面は安心だと思う。できるだけ早急に

川と沼とを繋ぐ水路を作ることだ」


 話しながらレンはこれからこういう瘴気溜まり

から強い魔獣、時には魔人が湧き出てくるのか

と思うと気が重くなると同時に

冒険者の血が騒ぐのであった。


 それから3日かけて砦に戻った一行は

砦の隊長のレオンにことの一部始終を

報告し、砦の広場に魔人を出して見せた。


「これが魔人か…想像以上にでかいな。

これがランクSだったのか?」


「そう。人間の言葉もしゃべるし、知性も

そこそこ高そうだった。」


「ふむ。魔人が我々の言葉をしゃべるというのは

聞いていたが、やはりそうだったのか。

それでこいつはどうするんだ?」


 地面に寝かされている魔人を砦の騎士たちが

興味津々の態度で見ている。


「とりあえずベルグードのギルドに持ってかえるよ。

それより沼への水路工事はよろしく頼む。」


「わかった。我々も近くに魔獣や魔人が湧く

ポイントがあるってのは寝覚めが悪いからな。

早急に工事しよう。」


 隊長との話が終わると魔人をアイテムボックスに

戻して


「じゃあ、俺たちはこれで帰る」


「いろいろお世話になりました」


 二人が礼を言うと、


「こちらこそ、助かったよ」


「今回はありがとう。ここにはしばらくいるから

また差し入れ持ってきてね」


 レオンとソリアと挨拶を交わして二人は

テレポリングでベルグードの街に戻った。



 戻るとギルドを訪ね、ギルマスのアンドリューと

面談する。


 ティエラが南での出来事を説明すると、


「なるほど。魔人は今アイテムボックスに入ってる

のか?」


「ああ。必要ならいつでも出せるが」


「ここで出されても困るな。あとでギルドの

解体場で出してくれ」


 ギルドには魔獣を解体する場所と解体専門の

ギルド職員がいる。

 

 魔獣を皮と肉に分けたり、貴重な角や目、触覚など

素人がやると難しい作業をギルドで代行している。


「それで、とりあえずレンとティエラが

見つけて退治した魔人は1体で、他の魔人は

見えなかったということでいいんだな」


「はい。レンと探索スキルで砦から馬車で3日程

進んだところまでは調べましたが、魔人は

1体だけでした。恐らく、私達が見つけた

澱んだ沼が瘴気溜まりの場所になっているんだと

思います。そこも砦の騎士さん達が水路工事を

するって言ってましたので間も無くそのポイントも

消滅するかと」


 じっとティエラの話を聞いていたアンドリュー


「わかった。聞いている限り今回の依頼は

完全に遂行したと言えるだろう。実際に倒した

魔人も持って帰ってきてくれるしな。

じゃあこれでクエスト完了とする。

俺は明日以降で領主に報告に行くが、お前らも

一緒に行くか?」


 レンとティエラは同時に首を横に振る。


「領主への報告はギルマスに任せるよ」


 それを聞いたアンドリューは笑いながら


「なんだ?領主が苦手なのか?


「いやそうじゃない。むしろ逆で

今の領主は冒険者出身だし、俺たちの事を

よく理解してくれてると思ってるよ。

ただ、いつも領主に会うのもなんか俺たちだけ

特別って感じがしてて」


 ここまで言って次の言葉を探していると

横からティエラが


「ベルグードの冒険者ギルドには他にも

優秀な冒険者達もいっぱいいるし、

むしろそういう人たちにももっとチャンス

を与えてもいいんじゃないかと思ってます。


多くの冒険者が領主様のクエストを受けて

こなしていけばこの街ももっと良くなると

思います。もちろん私も領主様は

嫌いじゃない。だけど他の冒険者にも

目を向けてもらいたいんです」


 一気にまくしたてるティエラ


「本当にお前らは欲がないというか何というか

わかった。今回の件はギルドのクエスト扱いに

したことでもあるし、報告は俺からしておく。

そのときに他の冒険者についても話しておくよ」


「そうして貰うと助かります」


「勝手な事ばかり言ってすまない」


 二人が軽く頭を下げる


「しかしだ」


 アンドリューは二人を交互に見ながら


「お前達がどう思おうと、このベルグードで

最上位の冒険者であることは間違いのない事実

だからな。最上位は最上位しかできない

クエストがこれからもあるだろう。

そん時はしっかり頼むぜ」


「それはわかってるし、そこから逃げるつもりは

ない。これからもギルドの冒険者として

今まで通りやるからには全力でやるつもりだ」


「それを聞いて安心したよ。

さて解体場に行くか。魔人ってのを

拝ませてもらおう」


 3人はそのまま解体場に移動していく

ギルドの建物の裏にある解体場は

思った以上に広くて

いくつもテーブルがあり、今もそのテーブル

の上で魔獣の解体が行われていた。


 解体場に入るとアンドリューがその場にいた

職員達に


「レンとティエラが魔人を倒して持ってきた

今から出すから」


 というと


「魔人かよ。実物を見るのは初めてだ」


「解体してもいいのか?」


 など口々に言う。アンドリューが

どうする?と言う目でレンを見ると


「ギルドに提供するつもりだったから

あとは解体するなり好きにしてもらって結構

魔石も持ってきているし、全部どうぞ」


「おおおっ」


 職員から声が上がる。


 大きなテーブルの上を片付けてからそこに

アイテムボックスから取り出した魔人と

魔石を置く


「これが魔人か 想像以上にでかいな」


「この羽根、飛べるのか?」


「魔石もそれなりの大きさがあるな」


 職人達が魔人の周りに集まって

専門職の目で見ている


「人間の言葉をしゃべるって本当か?」


「ああ。喋ってたぞ」


「この剣はあまり質の良いものではないな」


 職員達が思い思いのことを言い始めたので


「じゃあ俺たちはこれで行くよ。魔人も

魔石も好きに処分してくれ」


「レン、ティエラ、ご苦労さんだったな」


 アンドリューの労いの言葉を聞きながら二人は

久しぶりに自宅に戻っていった。



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