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第52話

 

 翌朝、ギルドに顔を出した二人はそのまま街を出て

南の森に向かって歩き出した

森までは歩いて約2時間程の距離。


 街から東に向かう道はきれいに整備してあるが、南への

道は歩く人もほとんどいないためか、街を出て

少し歩いたら道がなくなってしまった。


 二人は草原の中を森を目指して歩き、

街を出てから2時間弱で森の入り口に着いた。


「探索スキルには何も現れてないわね」


「ランクC、ランクBの魔獣もいない様だ。

フォレストウルフくらいはいるかと思ってたけど。

何か様子がおかしい。そう思わないか?」


 話しながら森に入っていく。

暫く歩いても探索スキルに魔獣を示す赤い点が

現れない。


 そのまま奥まで進んでいってしばらくすると

前方に赤い点が現れた。


「何だこれ?」


 赤い点が示す魔獣名は“???”と表示され

ランクも“??”と表示がある。


「行きましょう!」


 ティエラが駆け出し、それに続いてレンも走って

赤い点に向かう。すると森が終わり、山裾に代わる辺りの

境界の場所の木が多数倒されていて、大きな広場の様に

なっていて、その中央にはレンとティエラが見たことが

無い様な異形の魔獣がいた。


「レア種?」


「だとしても何故ここに?」


 その異形の魔獣は一言でいえば下半身がスライム

上半身がトレントの様な樹木で

スライム状の下半身はヌメヌメした身体を変形させて

無数の触手を作り出してそれらが伸びている。


 遠目に見ていると一匹の魔獣が誘われる様にその異形の

魔獣に近づいたかと思うと、あっという間に触手に絡めとられ

そのまま上半身の樹木の口が大きく開かれた口に放り込まれた。


「匂いか何かで魔獣を呼び寄せて、捕食しているのか」


「それで魔獣や動物がここから逃げてるのね」


「どうやら俺たちは誘われない様だ。加護のせいなのか

それとも元々人間には効かないのか」


 異形の魔獣は上半身の幹の太い部分に口や目があり

下半身の触手がうごめきながら周囲を這いまわっている

暫くそのおぞましい様子を見ていた二人は


「ティエラ、やるぞ! ティエラは魔法で外から

攻撃してくれ、触手に注意で」


「わかった。レンは?」


「俺は背後からあいつに近づいて木をぶった切る」


 そう言うとその場から移動していくレン

その後ろ姿を見ながらティエラが前に出ていく。


 ティエラを見つけた異形の魔獣が身体から作り出している

多数の触手を伸ばしてくる。

普通の人間から見れば触手の動きは相当早く、避けるのは

簡単ではなさそうだが、ティエラにとってはスローモーション

の様に遅く、余裕をもってそれを交わしながら 

<<ファイア>> を上半身の幹に何度も撃っていく。


 魔法が上半身に当たる度に触手の動きが鈍くなるが、

しばらくするとまた触手を伸ばしてティエラを捉えようとしてくる。

上半身には <<ファイア>> を、そしてスライム状の下半身には

<<サンダー>> を撃って十分に相手をけん制しつつ異形の魔獣の

体力(HP)を削っていると、


 異形の背後に回ったレンが片手剣に <<エンファイア>> を付与して

ジャンプして一気に魔獣の幹を左上から右下に切り裂いた!


 聞いたことがない様な叫び声を上げて上半身を切断された

魔獣がゆっくりと倒れていくと、ティエラを狙っていた触手も

その動きを止めて全ての触手がバサッと地面に落ちた


 探索スキルの赤い点が消えて、目の前の異形の魔獣が死んだ

のを確認すると二人して近寄り


「一撃かぁ。私たちの敵じゃなかったわね」


「それより、これ見てみろよ、ティエラ」


レンが手にしているのは今倒した魔獣から取り出した魔石


「すごく大きい。それにこんな魔石初めて見た」


 魔石は通常よりも大きく、こぶし2つか3つ分の大きさがあり

禍々しい色がまじりあっている。


「もってかえってナスコのギルドで見てもらおうか」


 そう言うとアイテムボックスに魔石をしまって、


「それにしても見たことがない魔獣だったな。ちょっと

この辺を探索して原因を探してみるか」


 倒した異形の神獣の恰好から、移動ができない、若しくは

殆ど移動しない魔獣だから、その原因もこの近くだろうと

推測して二人で魔獣を倒した辺り、特に山裾を歩いて何か

変わった事がないか調べていると、


「レン!」


 声のする方向に近づくと そこには

岩の裂け目から金属の様なものがむき出しになっている


「何かしら、これ」


 触ろうとするティエラを手で制し、


「すごくいやな予感がする。直接触るなよ」


 アイテムボックスから古びた片手剣を取り出したレンが

その金属の地表に出ている部分を片手剣で切り、

手に触れない様にしてから大きな葉の上にのせて、

その葉ごと袋に入れて

アイテムボックスにしまった。


「念の為にこの裂け目を塞いでおこう」


 ティエラが <<ストーン>> で土の壁を作って

地表に出ていた部分を隠し終えて

他に何かないかと周囲を探索する


 地面からむき出しになっている金属は倒した魔獣の場所から

そう離れてはおらず、何となくこれがさっきの魔獣と

関係がありそうな気がしたレンは、他にもないか

 周囲をじっくり探索したが、さっきの場所以外には

見つからなかった


「こっちは無さそうだ。そっちはどうだい?」


「うーん、こっちも無いわね」


 周囲をぐるっと探索し、何も無いのを確認すると


「取り敢えずナスコに戻ろう。倒した魔獣が今回の原因かどうかは

これから魔獣や動物がこの場所に戻ってくるかどうかで判断できるしな」


 レンの言葉に頷いたティエラがテレポリングを使うと

二人の姿はその場から掻き消えた。




 ナスコの郊外に着いた二人は街の城門を通って城内に

入り、ギルドの扉を開けた。


 そのまま受付嬢にギルマスのスワンとの面談を依頼すると

すぐにマスター室に案内された。


「早かったな。何かわかったか?」


 机の向こうから移動して二人の正面のソファに座ったギルマスに


「恐らくこれだろうという原因は分かった。

見たことがない魔獣、恐らくレア種だと思うが、そいつを

倒してきた。」


「もう倒したのか?早すぎないか?」


 驚くギルマスに、レンがアイテムボックスから

魔石を取り出してテーブルの上に置く、それを見たスワンが


「かなり大きな魔石だな。それにこんな色のは見たことが無いぞ

これが倒したレア種の魔獣の魔石か?」


 そうと頷きながらレンがナスコの南の森からレア種の討伐までの

流れを説明する。

最後まで聞いてからギルマスのスワンが


「その金属も持ち帰っているのか?」


「ああ、これだ」

アイテムボックスから袋を取り出し

慎重にその中にある金属片をテーブルの上に置く。


「個人的な感覚だが、すごく嫌な予感がしたので

直接手に触れてない」


 それを聞いて触ろうとして伸ばしていた手を引っ込めた

スワンが


「レンがそういうならその感覚を俺も信じよう。

それにしてもこの金属も今まで見たことが無いな。

魔石と金属、ここじゃあ分析もできないから

王都の錬金ギルドに送って中身を調べてもらうか」


「そうした方がいいと思います。私とレンとの間では

一応今回のレア種について仮説はあるんだけど

余りに荒唐無稽な話しなんで、信じてもらえないかも

しれませんが」


 魔石と金属の欠片を丁寧に袋に入れているギルマスに

ティエラが話かける。ギルマスは作業している手を

止めてティエラを見て、


「いや、お前らが実際レア種を倒し、その近くで

この金属を見つけたんだ。荒唐無稽かどうかは

別としてその仮説ってのを聞かせてくれないか?」


 レンが目線でティエラに促すと、

姿勢を正したティエラが、


「私たちは今日倒した魔獣が突然変異で誕生したと

考えています。そしてその原因がその金属にあるんじゃないかと」


「その根拠は?」


「あくまで想像ですが、今日倒した魔獣は

元々はランクBのトレントだったんじゃないかと。

トレントは普通の樹木と同じ様に地面に根を張りますが、

その根が金属に触れて、その成分を根から吸収している

間にその体内に金属の部分が蓄積し、ある程度の量を

越えた時に突然変異を起こしたのではないかと考えています。」

 

 ティエラの話しを聞いたギルマスのスワンはうーんと

唸り声をあげてソファの背もたれにその身体を預けて

暫く天井を見て、


「レンはその辺りが感覚的に分かったからその金属には

触れない様にしていたのか?」


「その通り。なんとなく嫌な感じはした。まぁその辺の

本当のところは錬金ギルドの分析待ちになるんだろうけど、

冒険者の感(勘)というか、特に根拠はないんだけどな」


 スワンも他の街のギルマスと同様、以前はAクラスの冒険者

であったこともあり、レンの言う“感(勘)”が非常に

大切であることを理解していた。


「わかった。王都にこれを送る際に今の仮説も手紙に

書いておこう。それで魔獣はランクにするとどれくらいの

強さだった?」


「恐らくランクAとSの間かと。下半身のスライム状の

部分は自由に形を変えられる様で、無数の触手の形にして

攻撃してきました。その触手の攻撃ですが、私たちは

問題なく避けられましたけど、他のランクAの冒険者なら

苦労したと思います。 偉そうに言ってすみません」


そこでスワンが


「いや、お前たちの実力が実質ランクS以上だってのは

皆知ってるからな、謝る必要はないぞ。続けてくれ。」


「はい。精霊魔法は下半身にはサンダーを、

上半身にはファイアを撃ちましたが私のレベルの

精霊魔法だとダメージを与えることはできますが

魔法だけで倒せと言われたらかなり時間が掛かったかと思います。

低ランクの冒険者の精霊魔法だとレジストされて

殆どダメージを与えられない気がします」


「なるほど。その話を聞く限りランクはSとAとの間

じゃなくてSクラスかもしれんな。それもレターに

書いておく。」


 ありがとうございますとティエラが言ったあと、


「それでこれからどうするんだ?」


「取り敢えず今日倒した魔獣が本当の原因だったのかどうか

数日森を探索してみようと思う。普通の動物や魔獣が

森に戻ってきたのなら脅威が去ったということになるから。

もし戻ってこないのならまだ他に原因があるってことだろうから

引き続きあの一帯を調査するつもりだ」


「そうして貰えるとこちらも助かる。危険が去ったと確認

出来るまでは南方面のクエストは中止にしよう」


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