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第50話


 その後2週間強をかけてようやく49階をクリアし

50階に降りてきた2人


「Aクラスの魔獣が出てきたか」


 探索スキルで見えている魔獣のランクを確認するレン


「あと30階よ、頑張りましょ」


50階は薄暗い洞窟のダンジョン

洞窟の通路の幅は広めで、大人4、5人なら

並んで歩けるほど。


 壁には等間隔で火が灯っていて、かろうじて通路を

照らしている。いくつも分岐がある洞窟を

ゆっくりと進んでいく2人。


 通路の向こうからランクAのオーガが1匹現れた

こちらを見つけて唸り声をあげて突進してくる。


 ティエラが <<ファイア>> を撃ち、怯んだところを

突っ込んでいったレンが剣で袈裟懸けに切り捨てた。


 その後の単発でランクAの魔獣が登場してくるが

魔法と武器のコンボで倒して洞窟の奥に進んでいくと

通路の先の十字路の左側から魔法を詠唱する声が

聞こえてきた。


「一度まともに受けてみる。ダメが大きかったら

回復よろしく」


 レンが言い終わったタイミングで <<サンダー>> の

魔法がレンに直撃した


「うん、大丈夫っぽい」


 まともに食らってもほとんどダメージを感じなかった

レンはそのまま両手に剣を構えて魔法を詠唱した

ランクAのオークメイジに突っ込んで剣でバッサリと倒した


「服も全然いたんでないね」


 後から追いついたティエラがレンの格好を見て

チェックする。


「この装備と加護があればなんとかなりそうだ」


 装備と加護の優秀性を確認してから再び洞窟の攻略を

進める2人、その後も単発でランクAの魔獣と遭遇

したものの、2人は攻略スピードを落とすことなく

階層をクリアしていく。


 1フロアを1日で攻略していき、55階に降りた時には

2人ともレベル65になっていた。


 ギルドから攻略情報が出ているのか

2人が54階までクリアしたことは冒険者達の中で

知れ渡っていて、例によってギルドに顔を出すと

そこにいた冒険者達から話しかけられ、そのまま

酒場に移動して他の冒険者達と話しをしていると、


「ギルドマスターがおよびです。」


 振り返るとレンとティエラが座っている後ろに

受付嬢のキャシーが立っていた。


「何の用事だろうか」


 ティエラと2人、ギルドの応接に入ると

そこには既にギルマスのアンドリューが座っていた。

2人を見ると、


「ダンジョンの攻略は進んでるか?

何階まで行ったんだ?」


「次回から55階の攻略です」


「相変わらず早いな。まぁランクAのお前達なら

普通か」


レンは受付嬢が持ってきた果実汁を一口飲んでから


「で、俺たちに用ってなんだい?」


アンドリューは2人を交互に見ながら


「実はダンジョン攻略を一時中断して、西の港町

ナスコに行ってもらいたい。」


「ナスコに? 一体どう言うことなんだい?」


「慌てるなって、これからその理由を話す」


 アンドリューが話すには、最近ナスコの

郊外にある森でランクAの魔獣が見つかったそうだ。


 それが1体なのか他にもいるのかはわからないが

残念ながらナスコにいる冒険者は最高がランクBの

レベル52なので魔獣の討伐は厳しく、

かと言って放置しておいて人に危害を加えられても

困るということで、ベルグードのギルドに討伐依頼

が来たらしい。


「そういうことでナスコ郊外の森の探索および

ランクA以上の魔獣がいたらその討伐をして

もらいたい。もちろんクエスト扱いで報酬も出る。

それとここからナスコへの移動はギルドの馬車を使って

いいぞ。」


「なんか大盤振る舞いね。 報酬に移動手段まで

提供してくれるって」


「それだけナスコのギルドは困ってるってことだ。

どうだい?受けてくれるか?」


「ティエラ、どうする?」


「困ってるなら助けてあげようよ。それに

ナスコなら新鮮な魚料理とかも食べられそうだし」


「ああ。無事討伐できたらそのままのんびり

してきてもいいぞ。」


 アンドリューのその言葉が決め手となって

2人はギルドの依頼を受けてナスコに行くことをOKした。



「ここがベルグード、そしてここがナスコだ」


 テーブルの上に地図を広げながら位置関係を説明していく。

アンドリューはナスコの南に広がる森を指差し、


「そして、この辺りがAランクの魔獣の発見情報があった場所だ。

ナスコまではギルドの馬車だとだいたい4日程で着く。


 この道はナスコの海産物をベルグードに運ぶ

主要な道になっていて整備されているし、村も多く

点在している。夜は野営じゃなくて村の宿屋に

泊まれるだろう。それにこの道沿いは

魔獣もほとんど現れない。」


 地図を覗きこみながらティエラが


「この森の奥にある山脈のあたりも怪しいわね」


 レンはその言葉に頷き、


「わかった。馬車は行きだけ利用させてもらおう。

帰りは俺たちはテレポリングがあるからそれで戻る」


「そうか。そうしてくれると助かる。今のところ

ナスコ周辺で誰かが被害にあったという報告は

こちらには来ていないが、今後どうなるかは分からないからな。」


 その後細かい打ち合わせをし、明日の朝にベルグードを出発

することにして打ち合わせを終えた。


 その夜、家で食事をしながら


「山にいたAランクが山の麓まで降りてきたって可能性

があるよね」


「ああ、王都の北西の山脈みたいにランクA以上の魔獣が

住み着いて、生態系の頂点から引きずり降ろされてきたかもしれない」


「もしそうだとしたらあの地区の生態系の頂点にいるのが

何かってことになるわね」


「そうだな。実際行ってみればわかるだろう」



 翌朝、二人がギルド前に行くと既に馬車が用意されていた

ギルマスのアンドリューからナスコのギルマスへの手紙を

預かってから街を出て西のナスコを目指していく。


 ナスコとベルグードをつなぐ道は整備されていて

馬車も揺れることなく順調に進んでいく。

窓から外を見ながら


「国内の主要道路の1つだけあって、道幅も広いし、

行きかう人も多いわね。」


「平原の道が多いし、魔獣や盗賊もいないから

商人も安心して歩けるな」


 途中の村の宿屋で夜を過ごしながら予定通り

ベルグードを出発して4日目の昼過ぎに

ナスコの街に到着した。


 街の入り口のゲートで冒険者カードを見せて城内に

入ったところで馬車と別れ、二人はそのまま

ナスコのギルドハウスに向かう


「どこのギルドも同じだね」


 二人が扉を開けてギルドに入り、正面にある受付カウンターに

向かって歩いていくのを、併設されている酒場にいた冒険者達が

見ている


「見慣れない顔だ。それに余り見ない恰好だな」


 ローブに片手剣を持っている二人を見て冒険者の一人が呟くのを

聞いて別の冒険者がテーブルに座りながら背後を振り返って二人を

見ると、


「おいっ、あいつらベルグードの魔法剣士の奴らじゃないのか?」


言葉を発して、そのままカウンターで受付と

話しをしている二人に視線を送りながら続けて、


「そうだ、間違いない。ローブに片手剣二刀流、それに

首にお揃いの真っ青なスカーフ。 赤魔導士から魔法剣士に

上位転生してランクAになったベルグードギルドのNo.1の

実力があると言われているレンとティエラだ。」


 レンとティエラの名声は王国内の冒険者の間では知れ渡って

おり、その冒険者の言葉に周囲がざわめく。


「あいつらが噂の…思ってた以上に若いな」


「あの外見に騙されちゃいけねぇ。二人とも魔法も剣も

半端ないって話だ。」


「ベルグードでNo.1張ってるってことは相当なんだろう。

今回のランクAの魔獣退治に来たってことか」


 酒場の方でそんな話しなっているとは知らず

二人はカウンターでギルマスのスワンへの取次をお願いしていた


 一旦奥に引っ込んでいた受付嬢が再びカウンターに現れると


「ギルドマスターがお会いになりますので。奥のマスター室へ

どうぞ」


 と二人をカウンターの奥、廊下の突き当りにあるギルドマスター室に

案内し、外から声をかけて扉を開けると


「レンとティエラか。わざわざよく来てくれた。まぁ座ってくれ。

それとジュースを3つ頼む」


 執務机から精悍な顔つきをした狼族の男が立ち上がって

手を差し出しながら


「ここのギルマスをやっているスワンだ」


 二人も挨拶してソファに腰かける。

受付嬢がテーブルの上にジュースを置いてから部屋を出ると、


「お前らの事はこの国のギルドの職員は全て知っている。

いい意味で有名だからな。」


 二人はどういう返事をしてよいかわからずとりあえず軽く

頭を下げる


「ランクAだよな。今はレベルいくつなんだい?」


「レベル65です」


ティエラがジュースを飲みながら答えると、


「ランクAでレベル65か、アンドリューの話しじゃ

今でも実質ランクSの実力は普通にあるって事だが」


「その辺りは本人である俺たちにはよくわからない

評価は本人じゃなくて周囲がしてるからな。」


 何度も周囲から聞かされている言葉、ランクSだ、

いや以上だとか ベルグードNo.1だとか、

二人の耳にも当然入ってはいるが、

二人ともそれを聞いて浮かれたり自慢したりする程度の

人間ではなかった。


 二人でそういう話題について話しているときも

“ランク付けなんてのは周囲が勝手にするもの。それに、

死んだらランクなんて意味が全くなくなる。“


 とお互いに天狗にならない様に確認しあっており

ランクや順位については二人とも無頓着であった。


 レンの答えを聞いたスワンは納得してうんうんと

首を上下に振り、


「ところで、今回このナスコの街に来てもらった理由は

アンドリューから聞いているよな?」


「ええ。何でも街の郊外にランクAの魔獣が出たとか」


「その通り、ランクAの魔獣が発見されたのはここから

南に行った森の中だ。

複数の冒険者がクエストで森に入った所で見かけたと

報告があった」


 スワンはテーブルの上にナスコ周辺の地図を広げて

説明していく。その地図を見ながらレンは


「1体なのか複数体いるのかもわかってないんだよな」


「わかってない。わかってないが見かけたのがランクA

のオーガチャンピオンだったのは間違いないらしい」


「チャンピオンならランクAね」


 ティエラの言葉に頷きながらレンは、


「ほかにもランクAがいる可能性もあるな。俺たちは

この森の奥の山まで探索してみようと思う」


 レンの指先が地図の上で魔獣が出た森から、その

南にある連なっている山々にまで伸びる。


「それはありがたい話しだが、山まで探索するのは

何か根拠があってのことなのか?」


 聞かれたので二人で王都北西にある村の話しを

スワンに説明する。


「なるほど、生態系の頂点が変わって追い出されて麓まで

降りてきた可能性もあるってことか」


 話しを聞いたスワンが納得して言うと


「まだそうと決まったわけじゃないが、その可能性もあるので

ついでに山まで探索しておくよ」


「わかった。知ってると思うがこの街は平和でな

冒険者のランクもランクBが最高なんだよ。

そいつらも優秀なんだが、今回は相手がランクAしかも

複数体の可能性もあるって事になるとこのギルドだけでは

対応しきれなくてな」


 申し訳なさそうに話すスワンにティエラが


「気にしないで。探索が終わってランクAをやっつけたら

ここで美味しい海鮮料理を食べるのを楽しみにして

いるんだから」


 自分達で処理できないもどかしさを言葉にしている

ギルマスにティエラが明るく答える。


「ああ、終わったらナスコの海の幸をたっぷり堪能してくれ。

今日は宿でゆっくりしてくれて、明日から頼めるか?」


「わかった。明日朝からその森に行ってみるよ」


「よろしく頼む。そうそう、お前らの宿はもう押さえてあるから

あとで受付に聞いてくれ」


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