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第48話


 翌朝、朝食を済ませるとギルドに顔をだし

受付のキャシーを見つけると、


「これから南のダンジョンに行ってくる」


「あれ?あそこはクリアしてたんじゃ?」


「今度は1階から正攻法で攻略しようと思ってるの」


「そうなんだ。わかりました。気をつけて」


 南のダンジョン近くまでテレポリングで飛んで

ダンジョンの入り口にいくと、ギルドから派遣されている

警備員(職員)が2人を見て


「レン、またここに入るのか?」


「ああ、今度は正攻法で80階目指そうかと思ってさ。

ところで、今このダンジョンは何回までクリアされてる?」


「ちょっと待てよ…えっと、32階まで記録が残ってるな」


「まだ半分にも到達してないんだ…攻略が進んでないのは

やっぱり難易度が高いからだね」


 このダンジョンの主であるフェンリルも、ここは最も新しく

最も難易度が高いダンジョンだと言っていた


「お前達ならサクっとクリアしてくるんじゃないの?」


「そう簡単じゃないと思うけどな」

 

 警備員の言葉に返事をしながら2人、入り口の水晶板にギルド

カードを差し出して登録手続きを済ませる。


「気をつけてな」


 軽く手を上げて応えながら1階に降りていった。



 ギルドがダンジョンの秘密、転生条件などを発表して以来

ダンジョンは人気で、どこのダンジョンにも常に冒険者が

複数パーティ攻略している。


 この南のダンジョンもその例にもれず

1階に降りて暫く歩くとゴブリンを退治している

4人組のパーティを見つけた。


 2人は他のパーティの邪魔をしない様に

別の通路から2階に降りる階段を目指していく

たまに会うランクDの魔獣は自分達の進行を

邪魔するのだけ処理し、2階に降りていく

そうやって10階くらいまで一気に降りてきた


「10階まで降りると人が一気にいなくなってるな」


 10階に降りて転送板で記録して探索スキルで

チェックすると、このフロアには他の冒険者が

いないことがわかる


「ランクDクラスだと上の階がメインの狩場だろうし

ランクC,Bクラスだと逆にもうちょっと潜った

下の階で狩ってるだろうし、中途半端なのかな?」


 10階にいるのはランクDながら今までのフロアと

違って常に固まっている。

10匹近く固まるとランクDといえどもそう簡単に

討伐できなくなるために、低ランク冒険者達は

ここには降りてこない様だ。


 ランクC以上の冒険者なら、まぁ10匹程度なら

何とかなるだろう。

もちろん、レンとティエラにとっては

魔獣がいないも同然で、両手で剣を

振り払っては前に進んでいく。


 結局この日は1階から始めて18階まで

降りたところで転送版に記録して上に戻った。


 ダンジョンの入り口でギルドの職員に

カードを見せてからテレポリングで

ベルグードの自宅に戻る。



 翌日、朝ギルドに顔を出してから南のダンジョンに

向かう。18階に飛んでダンジョンの攻略を開始した。


 南のダンジョンは1階からこの18階までは基本通路と

小部屋の造りになっていて、このフロアも

レンガの様な壁の通路が三方向に伸びている。

探索スキルを使っていたティエラが、


「レン、懐かしいものがあるわよ」


 言われるままにレンも探索スキルを使用すると

左から伸びている通路の先に”転移魔方陣”が

見えた。


「あれに乗って最下層に飛ばされてから

俺たちの冒険者ライフが大きく変わったんだよな」


「うん、あれに乗って最下層に飛ばされなかったら

今頃どうしてたんだろうね」


「まだレベル20台位で、ソロで毎回死にかけながら

このダンジョンを攻略してたかもしれないな」


 しばらくその転移魔方陣を探索スキル内で見て

それが消えると


「行くか」


「うん」


 脚を踏み出して18階の攻略を始めた。

とは言っても相変わらず二人にとっては問題にならない難易度で、

最短ルートで次のフロアに降りる階段を目指していく。


 そうやって降りた20階。


「ようやく景色が変わって、見ようによっては

ダンジョンっぽくなってきたね」


 ティエラが見る先は一面草原で奥には森が見える

ダンジョンの広さも今までよりもかなり広く

探索スキルでも奥が見えない


 魔獣のランクはランクCとランクDが混在し、

おなじみのオーク、ゴブリンの他に

樹木に擬態しているトレントやウォーウルフなどが

草原や森を闊歩している


「フロアが急に広くなってる。下に降りる階段が

見えないけど、とりあえずはまっすぐに奥を目指そう」


 二人に気付いてうなり声を上げながらこちらに向かってくる

5匹のウォーウルフを魔法と剣であっさり倒し、

トレントはその蔓を切り落として火系の精霊魔法で

焼き、オーク、ゴブリンは魔法と剣で一刀両断にしていく。


 森にはいり、魔獣を処理しながら進んでいると

ようやく探索スキル上に階段が見えてきた。

そのまま一直線に進んで21階に降りていく。


 そのまま21階をクリアし、順調に下に降りていく2人。

22階、23階ともに同じ様に草原と森のフロアだが

23階には中央に大きな川が流れており、川沿いには

ホワイトブルと言う大きな水牛の魔獣が4匹

たむろしている。


「初めてだね。あの水牛の魔獣」


「地上でもみたことがないが、どこかにいるんだろうな」


 近づいていくと、こちらに気づいたランクC相当の

ホワイトブルが一斉に唸り声を上げて突進してくる。

左右に広がったレンとティエラは近づいてくる

魔獣をまずは <<サンダー>>で2匹を倒し

残りの2匹は突進を躱すと同時に剣を払って

真っ二つに切り裂いた。


「でかいだけか」


「でもこの大きさのが突進してくるのは

迫力あったわよ」


 水牛の魔獣は倒され、光の粒に変わっていく


 2人にとっては相手にならないレベルの魔獣だが

ランクBクラスのパーティでもこの大きさの

魔獣が数匹固まっていると間違いなく脅威となるだろう。


 そのまま川に沿って魔獣を倒しながら川上に向かって

進んでいると大きな沼にぶつかった。

その沼の縁に立って


「なんでこのフロアにランクSがいるんだろ?」


「ひょっとしてレア種だったりして」


「倒さない手はないよな」


「うん」


 探索スキルのマップでは沼の中央に赤い点が1つ見えている

動く気配はないが、ランクSの表示が…


「こちらから仕掛けない限りは襲ってこない設定かな」


「そうでもしないと皆ここでやられちゃうよ」


「確かに。となると、どうやってあいつを

こっちまで来させるか…だ」


レンは河原にある頭程の石を掴む


「いつでもOKよ」


 ティエラを見ると彼女の片手剣2本が火を帯びている

エンサンダーを付与したのを確認して、

石を沼の中央に放り投げてすぐに同じ様にエンサンダーを

付与し、二刀流で構える。


 石は放物線を描いて沼の中央、赤い点のある場所に落ちて

大きな水しぶきをあげると同時に、沼から魔獣が

飛び出してこちらにむかってきた。


「大蛇だ」


 向かってくる大蛇の頭部を狙ってに2人で <<サンダー>> を

撃つが、大蛇はそれを交わして突進してくる


「流石にこのレベルの魔獣だと距離があると

避けてくるか」


 大きな口を開けて向かってくる大蛇を左右に

別れてかわす2人


 躱したところでレンが <<フリーズ>> を頭の下を狙って

撃つ。魔法が命中し大蛇は頭部をのけぞらせるが

致命傷にはなっていなくて、レンの方を向いて

咬みつこうとばかりに頭を突き出してくる

それを躱しながら片手剣二刀流で魔法の当たった頭の下

に雷を纏った剣を当てて傷口を広げていると、


 作戦通りに反対にいたティエラがジャンプをして

背後から一気に大蛇の頭部を切り落とした

切り口から雷の閃光があがり、大きな叫び声をあげると

そのまま頭と胴体が別々に地面に落ちて絶命する。


「うん、作戦成功ね しかもレベルも上がったし」


ティエラが大蛇を倒した瞬間に

 

 <<レベルが上がりました>>


 の声が脳内に響き、2人ともレベル64になった。


「ランクSだけあって、倒した時に得られる経験値も

多かった様だ」


 しばらくして光の粒になって消えていく大蛇を見ていると、

光の粒がなくなった後に宝箱が出現した


「宝箱だ」


ティエラが蓋をあけると中には、”乾燥した大蛇の眼”と

”大蛇の皮”が入っている


「錬金術士が喜びそうなアイテムね」


「ギルドで買い取ってもらおう」


ティエラが自分のアイテムボックスに宝箱の中身を入れる。


 その後2人はフィールドを歩いて階段を見つけ、

24階に降りていく。


 24階も似たような平原と森のフロアであったが

ここには通常のランクC、Bの魔獣しかおらず

25階まで降りたところでこの日の攻略を終了し

転送板で戻る2人。ダンジョンから出ると


「どうだい?順調かい?」


 ギルドカードを水晶板にあてていると警備員が

レンに話かけてきて、


「順調っちゃあ順調かな。とりあえず25階まで

降りてきた」


「2日で25階かよ、早いな。もっともあんたらに

してみたら普通のペースなのかな」


 レンと警備員のやりとりを聞いていた同じ様に

ダンジョンから出てきた冒険者達からは感嘆の声が

出ていた。


「やっぱ凄いよな、あの2人。別格だ」


「当たり前でしょ。あの2人は今の王国No.1の冒険者よ。」


 踏破階を記録した2人は周囲にいた冒険者達と

挨拶を交わしてから街に戻り、ギルドに顔をだす。


 2人がAランクに昇格してから彼ら専用の受付となった

キャシーに


「これ査定してくれない?」


 ティエラがアイテムボックスから ”乾燥した大蛇の眼”、

”大蛇の皮”を取り出してカウンターに置くと、

一瞥したキャシーが顔をあげて、


「珍しいのをお持ちになりましたね。これは

南のダンジョンの宝箱から?」


「ダンジョンに隠れていたレア種を倒したら

箱の中に入っていたの」


「ダンジョンに隠れていたレア種ですが、

それはそれでギルドとしても興味がありますけど

とりあえずこの品ですね、錬金術士の方から見れば

貴重な材料ですので。査定する間お待ち願いますか?」


 査定の間レンとティエラはギルド受付横の酒場兼

打ち合わせのテーブルに腰掛ける

すると周囲から冒険者が集まってきて


「ダンジョンの中にレア種がいるのか?」


「いた。場所は言えないけどな。ただ、俺たちが

見つけたレア種の魔獣はランクSだったぞ」


「ランクS? そりゃとんでもないな。レンとティエラ

以外じゃ無理じゃないか」


「ティエラ、それってレア種の方から襲ってきたの?」


「ううん、多分こちらから攻撃しないと相手からは

襲ってこないと思う。レア種見つけたフロアにいる

普通の魔獣のランクはCとかBだったし。」


「なら安心ね。」


 差し支えのない範囲で情報交換はするが、詳細は

お互いに聞かない、教えないということが冒険者の間の

暗黙のルールになっている。特にレア種は取り合いに

なる可能性もあり、またリポップ条件など不明な為

見つけた冒険者は基本言わないことが多い。

 

 今回はそのレア種がランクS相当であったので

逆に注意喚起をする目的もあり、レンもティエラも

ある程度の情報を開示した。


 酒場で果実汁を飲みながら周囲の同業者と話し

をしているとキャシーから声がかかり、カウンターに

戻る。


「査定が終わりました。”乾燥した大蛇の眼”が金貨5枚、

”大蛇の皮”は金貨3枚となります」


「結構いい値だね」


 ティエラが金貨を受け取りながら言うと


「ええ。この素材は我が国ではほとんど見つかって

いなくて商人がたまに東の国から持ってきているのが

ほとんどなんです」


「東の国ってアルゴナ公国かい?」


「いえ、その南にあるミッドランド王国からですね」


 ミッドランド王国、ロチェスター王国の東にあり、

国土はアルゴナと同じくらいの大きさで、

北はアルゴナ公国と接し、南は山脈を境に魔人の国と

接している。そして東は海に面した国である。


「てことはミッドランドの連中はこの大蛇を倒している

ってことか」


 レンの問いにキャシーは首をかしげながら


「詳しいことはわかりません。ただ、ミッドランドでも

しょっちゅう手に入る様な素材ではないそうです」


「なるほど。ありがとう。じゃあ今後は俺たちが

定期的にダンジョンでこのレア種を退治して

箱からこの素材が出たらこの国の錬金術士達も助かるな」


「そうですね。是非お願いしますね」


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