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第40話


 領主一行は整備された領内の道を一路北にある

王都に向かって進んでいた。


 領主のいるベルグードを出ても、村や小さい街が

道沿い点在しており、行き交う人も多い中を

規則正しい音を立てて馬車が進んでいく。



 レンとティエラは先頭の幌馬車の中で向かいあって座り

外の風景を見ながら時折御者も交えて雑談をしていた


「王都ってどんな街かな? 私この辺境領から

出たことないから想像がつかないけど、

きっと大きな街なんでしょうね」


「俺もこの領内から出たことないぜ? 

まぁ王国の首都なんだから相当でかい街だと思うよ」


「大きい街だよ。ベルグードよりもずっと大きいよ」


「そうなんだ」


 御者の言葉に返事をし、


「レン、王都についたら買い物していい? 

きっと良いものや珍しいものが沢山あると思うんだ」


「ああ、無事に着いたらあとは自由だし、

すぐに火山に行くこともないだろうし

しばらく王都観光しようぜ」


「そうだね なんか最近バタバタしてたし、

息抜きしましょ」


 魔法剣士に上位転生して以来、常に周囲から注目を

集めていて、何となく落ち着かない日々を過ごしていたので、

周りが二人を知らない人ばかりの王都で

のんびりしたいと思っていた。

 

 ギルドに出向くと羨望の目で見られ、模擬戦をすれば

大勢の冒険者が見学に来るし、街を歩いていても

あちこちから声を掛けられる日々。


 二人とも普段から丁寧な対応をしているので周りからは

好意的な目で見られてはいるがそれでもいつも注目を

浴びているというのは二人にとっては結構疲れる事であった。


 その日一行は予定通り夕刻に領内の小さな街に到着、



 領主はその街一番の宿に宿泊し、レン達も衛兵も

同じ宿に宿泊した。


 翌日も予定通りの行程を進み、夕刻に村に到着。

ここには宿が1つしかないので、領主と衛兵が泊まり、

レンとティエラは村の隅でテントを張っての野営となった。


 もっとも村の中ということで、交替で起きている必要はなく

二人ともぐっすり休めた


 こんな感じで辺境領内を順調に移動して5日目の昼過ぎに

辺境領を超えて、隣接する隣の貴族が管理している

領内に入っていった


「ここからは情報があまりないから周囲の警戒が必要だ」


「そうだね。何が起こるかわからないしね」


 神獣の加護を受けて二人の探索範囲は半径2Kmまで

拡大しており、また、常時発動していても身体に

ほとんど負担がないので雑談をしながらも

常に四方に気を配っていける


「左の林の奥にゴブリンの集団がいるけどどうする?」


 ティエラがレンの顔を見ながら問いかけてくる


「こっちに近づいてきたらやっつけるし、

近づいて来なければ放置でいいんじゃないの?」


「他の冒険者や普通の旅人に迷惑かからないかしら?」


「それ言い出したら全ての魔獣を退治して

進むことになるぜ? ある程度割り切らないとさ。

いちいち魔獣を退治してると進む速度も落ちるし。」


「そうだね。私たちは探索スキルで見えてるけど、

あの距離なら普通は襲ってこない距離だよね。」


 ティエラも納得してそのまままた幌馬車に

揺られて進んでいく


 日が沈む頃に予定通りの村に到着。


 領主が村の宿屋に入っていくのを見届けてから、

レンが騎士のローズに昼間にあったゴブリンの件を報告すると、


「直接被害を受けそうな場合以外は放置で」


 と聞いたので今後はそう言う対応をする事で

ローズと確認した。


 その後も大きな山もなく、平原の中を伸びている道を

進む領主一行はこれといったトラブルもなく

順調に旅程をこなしていく。


 この貴族領の中心都市であるナッシュという街には

夕刻前に着いた。貴族主催のパーティが行われ、

それに領主、騎士が参加することになっており、

一方レンとティエラは冒険者ということで呼ばれずに

街の宿屋で待機となったが二人はむしろその方が良くて、

宿屋にチェックインしたあとは二人でこの街の中を

ブラブラと歩いていた。


「やっぱりベルグードとは違うものがあるよね。

ん?これ美味しい」


 屋台で買った串焼きを食べながらティエラが

この街の感想を述べている。レンも同じ串焼きを食べ、

ティエラに同意する様に首を縦に振りながらも

通りの周囲の店やや行き交う人に視線を送っていた。


 暫く歩いていると冒険者ギルドの建物が目に入り、

どんなものかと二人でギルドに入っていく


 ベルグードほどの大きさではないものの、

しっかりとした造りの建物の中は受付カウンターや

クエスト掲示板、そしてその横には酒場が併設されている


「どこのギルドもだいたい同じ造りみたいだね」


 中に入って周囲を一瞥したティエラが言う


「そうだな。結構活気があるじゃないか」


 二人が中に入ってきた時から、ギルドの中にいた

冒険者達が見慣れない二人に視線を注いでいた


「見慣れない顔だな。よそから来たのか?」


「いい女を連れてるな」


 テーブルごとにヒソヒソと話しをしながら

レンとティエラを見てる冒険者達。

当人達は全く気にしてなくてクエストの掲示板を

二人で覗き込んでいた。


 そのタイミングでギルドの受付の奥の扉が開いて

ガタイの良い年配の男がカウンターに書類を持ってきて、

受付の女性に渡したあと、その横にある掲示板を

見ている男女の二人組に気づいて


「お前ら、ベルグードの冒険者のレンと

ティエラじゃないのか?」


 突然名前を呼ばれてカウンターに顔を向け、


「そうですけど?」


ティエラが答えると、その男がカウンターから出てきて

右手を差し出しながら


「やっぱりか、その装備。ローブに片手剣二刀流、

青いスカーフ。最近魔法剣士に上位転生した

噂の二人かと思ったけどその通りだったか。

俺はビル。このギルドのマスターをやってる」


 差し出された手を握り返しながら


「レンです。領主の王都への護衛で今日この街に来た。」


「ティエラです。よろしく」


 そのやりとりを耳をすまして聞いていた周囲の冒険者達は

一様に驚きの声を上げて


「赤魔道士から魔法剣士に転生したレンとティエラだと?」


「ランクAでベルグードの実質No.1の実力だって聞いたぜ」


「神獣の加護をいくつも持ってるんだっけ?」


 今までの探る様な目つきだった他の冒険者の視線が

一斉に羨望の視線に変わった。


 ギルマスのビルは


「お前らのおかげでダンジョンの秘密や転生条件が分かったし

この国のギルドでお前らを知らない者はいないよ。

ここは一泊だけか?」


「ああ。明日の朝には出発する」


「そうか。まぁ辺境領の領主の護衛なら仕方ないよな。

今度ゆっくり来てくれよ。色々話しも聞きたいし」


 ギルマスとの挨拶を終えると、酒場にいた冒険者達が

一斉に声を上げて


「奢るからさ、話しきかせてくれよ。」


「今話題の二人に会えるなんてもう最高!」


 等ギルドにいた冒険者達からもみくちゃにされ、

その後はギルドの酒場で宴会となり

夜遅くまでその場でこの街の冒険者達と飲む羽目になった。


「ここまで有名になってるとはな」


「だよね。びっくり」


 結局ほとんど市内観光ができないまま

宿屋に戻る羽目になってしまった。



 ナッシュの街を出てからも移動は順調で、

いよいよこの貴族の領内の最後の宿泊地である村に到着。

明日は出発前から懸念していた森越えのルートとなる。

その日の夕食後、明日の打ち合わせをするレン達と騎士達。


「朝一番に出て夕刻までに隣領の宿泊予定地まで行ける?」


 レンがローズに確認を求めると、ローズや副官の騎士達は

渋い顔をしている。ローズがレンを見て、


「ここの村人の話しだと、

行けることは行けるらしいんだけど」


 と歯切れが悪い。そのまま黙っていると、

続けて口を開いて


「最近、魔獣の動きが活発になっているらしく、

多くの商人は遠廻りのルートを利用していて、

この森越えルートを通る人はほとんどいないらしいのよ」


「つまり…人通りが少ないから夜じゃなく、

昼間も危険になってるってこと?」


 ティエラの言葉に、


「そういうことになるのよ。

この話しを聞いて一応領主様にルート変更の

お願いをしてみたんだけど、断られてしまったわ」


 悔しそうに言うローズに、


「となると、明日はほぼ魔獣か盗賊。

下手すりゃ両方の襲撃があるって思っていた方が良いな」


 レンの言葉に騎士の副官が、


「そういうことになります。なので明日はレンさん達の

探索スキルが非常に重要になってきます」


「わかった。事前に事情がわかっただけでも

対応の仕方が変わるからな。

明日は俺とティエラで探索スキルを使って、

魔獣、盗賊の類がいたら先制攻撃で倒していこう。

ティエラ、それでいいよな?」


「そうだね、明日は基本殲滅方針でいきましょう」


「それでお願いします。我々は領主の馬車の護衛と、

レンさん達が撃ち漏らしてこっちに近づいてきた魔獣、

盗賊の処理をします」


 お互いの責任範囲を確認して、この日の打ち合わせを終えた。


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