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第39話


 自宅でさっくりと遠出の準備をし、夜食を済ませ、

風呂に入って夜に寝室に二人で入ると、ベッドにはいつのまに

入ってきたのか、2体の妖精達が座っていた


「あら、妖精さん。お久しぶり」


 妖精を見てティエラが話しかけると、妖精達は背中の羽を

パタパタさせながら


「今度王都に行くんでしょ? 

王都に行ったらその北にある火山に行ってみて」


「火山の火口近くに貴方達を待ってる神獣がいるよ」


 2体の妖精が交互に話しかけてくる


「火口近くに神獣がいるの?」


ティエラが鸚鵡返しに言うと、


「「火口近くに神獣がいるよ」」


 口を揃えて言う妖精達にレンは


「わかった。こっちの仕事が終わったら行ってみる」


「「じゃあまたね」」


 言うことだけ言うと妖精達はベッドの上から

ゆっくりと消えていった。そのあとを見ながら


「本当にあちこちに神獣がいるのね」


「ああ、せっかく教えてもらったから、

これは挨拶に行かないといけないよな」


「そうだね それにしてもすっかり神獣に

好かれちゃったのかなぁ」


 ベッドに座ってうーんと背筋を伸ばしながらティエラが言うと


「どういう理由かわからないけどさ、

普通の人が経験できないことをさせて

もらってるんだから、喜ばないと」


「もちろん、喜んでるし、嬉しいんだけどね、

でも私たちでいいのかなって思っちゃうのよね」


「言われてみればそうだよな。なんで俺たちなんだろうな」


 ベッドにゴロンと仰向けに寝て天井を見ながらレンが答えると

天井を見ている視界にティエラが顔を出してきてレンを見下ろして

じっと見つめてくる、その目を見返しながら、


「まぁ深く考えても分からないものは分からないか。

ひょっとしたらその火口にいる神獣が教えてくれるかも知れないし、

今は神獣の好意に甘えちゃおうか」


「そうだね、甘えちゃおう」


 ティエラもよく考えても分からない事で悩んでも

仕方ないとこれについて考えるのをやめて、

そのままレンの上にドスンと身体を落とした。



 辺境領から王都への街道は一応整備はされており、

それなりに人や物の通行量も多いが、それでも街道の一部は

山の中を通るルートになっていて

夕方から夜にかけては移動しない方が良いとされている。


 王都への護衛を明日に控えた昼間、レンとティエラの

二人は街の中の道を貴族街に向かってのんびりと歩いていた


 明日からの移動の前に領主に同行する騎士達との

打ち合わせが貴族街にある騎士団の詰所で行われるのに

参加するためだ。


 貴族街に入ってしばらく歩くと大きな建物が見えてきた。

その扉を開けて中に入ると


「やぁ、久しぶりね」


 と手を上げながら近づいてくる女騎士が…それを見たティエラが


「あら、砦にいたローズさんじゃない。こんにちは。

こっちに帰ってきたの?」


「ええ、あちらの任期が終わってね、

1ヶ月程前に戻ってきたのよ。それより聞いてるわよ。

お二人とも魔法剣士に転生して冒険者ランクもAになったんだって?

凄いじゃない」


「ありがとう。何かよく分からない内にこうなっちゃった感じで」


 ティエラが答えると、それに続けてレンが


「砦の隊長のガルシアも帰ってきてるのか?」


「ううん、隊長はあと半年向こうで仕事。

あの砦の仕事は半年で半分入れ替えているの。

私は隊長より半年前にあっちに行ったから」


「そうなってるのか。なるほど」


「明日からの領主様の護衛、二人がついてくれるんでしょ?

なら百人力だね」


 やけにローズが持ち上げてくれるが、それを軽くいなす様に


「まぁ、頑張るよ」


 とだけレンは答えた。


 その後は騎士団の詰所の中にある会議室に移動して

騎士団からはローズ(今回の護衛の隊長らしい)と副官の騎士

それとレンとティエラの4人でテーブルに王国の地図を広げて

打ち合わせが始まった


「領主様はこのルートで王都に向かいます。基本は途中の

街や村で夜を過ごしますが、予定通りにいかない

場合には野営もあり得ます。もっとも領主様ご自身が

冒険者だったこともあるので、野営をする事には

抵抗はないとのことです。全体の移動日数は約1ヶ月を

考えています。」


 副官の男性騎士が丁寧に説明を続けていく


「辺境伯領内はまず問題ないでしょうけど、

次のこの貴族の領とその次のこの貴族の領の領境の

あたりは治安が良くないとの情報が来ています。


また、このあたりは宿泊できる村がほとんどないので

この村を朝早くに出て、一気に領境の森を越えて

夕方にはこの貴族領のこの村まで移動したいところですが、

そうなると結構強行軍となるので何かの事情で遅れると

ここでの野営の可能性が高く、この領境の場所が

今回のポイントとなりそうです」


「つまり、万が一ここで野営になったら魔獣か盗賊に襲われる

可能性があるってことだよな?」


 確認する様にレンが地図の上のある地点を指で差しながら言うと、

ローズが頷き、


「その通りよ。我々としてはできるだけ野営を避ける

方向で移動してもらいたいけど、この頃になると

馬も疲れているだろうし、期待する速度で

移動できない可能性があるのよね。」


「なるほど」


ローズの言葉に続けて副官が、


「この領境を越えると草原地帯が続き、

村も点在しているのでまず安心できると思うのですが、

如何せん他の貴族の領地なので

我々も完全に把握していないというのが実態なのです」


「まぁある程度は行き当たりばったりにならざるを得ないよな」


 それまで黙ってじっと地図を見ていたティエラが、

地図を指差しながら


「こっちのルートなら森の中を通らなくて

安全なんじゃないの?」


 と地図にある別の道を言うと、ローズが


「ええ、ティエラの言う通り、こちらのルートだと

魔獣や盗賊による襲撃がほとんどないと思うのよ。

なので我々も最初はこちらのルートを

領主様に勧めたんだけど」


 ここで一旦言葉を切って、再び口を開くと


「ただ、ご覧の通りこの安全な方のルートは

かなり遠回りなルートになって、こちらを利用すると

森越えのルートよりも約1週間余分にかかるので、

それを領主様が嫌がってらしてね…」


「でも、安全重視ならそれくらい余分に掛かっても

問題ない様な気もするけど…」


 納得いかない表情でティエラが言う


「それと、もう一つ、領主様曰く、レンとティエラがいたら

森越えのルートでも何の問題もないだろう。だそうです」


 レンとティエラは顔を見合わせ


「また、えらくかって貰ってるみたいだな」


「本当よね。でもそれなら期待にお応えしないと。

いずれにしても。私とレンは探索スキルで常に

周囲を警戒するのが仕事ってことね」


「そういうことになります。我々は探索スキルを持ってないので、

冒険者のお二人にお願いすることになります。

もちろん、万が一魔獣や盗賊に襲われた時は

冒険者としての対応もお願いします」


 副官がティエラを見ながら答える。


「それは当然よね。問題ないわ。ね、レン」


「ああ、全く問題ない」


「それを聞いて安心しました。移動の隊列ですが、

最初の馬車にレンさんとティエラさん、

2台目の馬車に我々の内4名がそして領主様の馬車、

その後ろは領主様の荷物を積んだ馬車、

そして最期の馬車に騎士が4名。こういう布陣で移動します」


「俺たちが先頭だな。わかった」


 その後もいくつか細々したことを打ち合わせ、

明日の日の出と同時に出発するということで、

日の出前に領主の館の前に集合となった


 翌日準備を終えた二人はいつものローブ姿に

片手剣二刀流の格好で手ぶらで歩いていき、

貴族街にある領主の館に着くと、そこには既に

ギルドマスターのアンドリューがいて、

二人を見つけると手を上げながら近寄ってきた。


「よろしく頼むぞ。まぁお前らに任せておけば安心だけどな」


「昨日の打ち合わせでもそれ言われたよ」


「誰もが認めるベルグードの冒険ギルドの

トッププレーヤーなんだからそう言われるのも当然さ」


「せいぜい頑張るよ」


 3人で軽口を叩き合っていると館から衛兵を従えた領主の

ヴァンフィールドが出てきた。

礼をするレンとティエラを見つけ


「よぉ、今回はよろしく頼む。お前らが一緒なら

移動に何の心配もいらないな」


 またかという表情でレンとティエラが

顔を見合わせているのをギルマスがニヤニヤしながら見ている


「では参りますか」


 今回の護衛の騎士団のリーダーとなったローズが声を出すと

各自指定された馬車に乗り込んでいく


 レンとティエラは先頭の幌馬車に後ろから乗り込んで、

ギルマスに


「じゃあ行ってくる。

王都に着いたらしばらく観光してから帰るよ」


「ああ、せいぜい骨休めしてこい」


「行ってきます」


 レン達の馬車を先頭に、領主一行はベルグードの北門から

城外に出ていった


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