表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/101

第37話


 言われるままに里に入って行く。

ルフィーを先頭に村の中を歩いていくと、

村に住んでいるエルフ達がルフィーに

「おかえりなさいませ」と声をかけてくる。

ベルグードの街の防具屋の女主人にしてはえらく

有名なんだなと思いながらレン達がその後を着いて奥に進む。

しばらく歩くと、奥の世界樹に一番近い場所にある

すこし大きめのエルフの家の前に着いた。

家の門の前にはエルフの男性が2名、

門の両側に立っていて、彼らもルフィーを見ると

「おかえりなさいませ」と言いながら頭を下げた。


 そんな彼らに軽く手を上げながら


「ここがエルフの里長が住んでいる家さ。

代々里長はここに住むことになっている。さてと、入るよ」


 と家の玄関に近づくと、門番のエルフが扉を開けて


「里長が中でお待ちです」


 開けられた門から中に入ると、広い部屋にある

大きなテーブルの一番奥の玉座の場所に、

一人の女エルフが重厚な木で作られた椅子に

腰かけていた。3人が入ってきたのを見ると、

その場で立ち上がり


「おかえりなさい。お母さん。

そしてようこそエルフの里にいらっしゃいました」


「「お母さん??」」


 驚いている二人を見ていたエルフの里長は、

二人の驚きを無視してしばらく二人を見てから


「…まさか…」


「ふふ、あんたも気づいたかい?」


 突然里長が椅子から立ち上がって、

立っているレンとティエラに近づいてきたかと

思うとその場で跪いて頭を垂れながら


「失礼いたしました。神獣の加護をお持ちの

お客様よりも高い場所におり大変申し訳ありません」


 3人と一緒に入ってきた門番の男性エルフも

今の里長の言葉を聞いて思わずその場で跪く。

ルフィーがその様子を見ながら、


「神獣の加護、しかもこれほど強力な加護を

持っているのは、エルフでもおらんだろう?」


「ええ、しかも加護している神獣が3体とは。

とても信じられません」


 いきなり自分たちの前で跪かれたエルフにレンが慌てて


「まぁ、とりあえず立ってくれよ、そんなんされたら

こっちが困ってしまう」


「そうそう、私たちエルフの防具屋さんの護衛で

ここまで来ただけだから」


 ティエラも恐縮しきって跪いている里長に言うも、

彼女はその姿勢を崩さずに


「いえいえ、神獣の加護3体を授かっている方を

無下にはできません。」


 とこちらも頑なで。見兼ねたルフィーが


「もういいだろう?レン達が構わないって

言ってるんだし、それより長旅で疲れたから

お茶でもくれないかね?」


 一人のエルフが部屋の奥に向かい、

直ぐに4人分のお茶を持ってきた。

エルフの里長もようやく立ち上がり椅子に…


 今度は玉座ではなくてレン達と向かい合う場所に腰掛けた。

腰掛けてからも二人を見ては 

「…すごいですね」と感嘆しきりで…

これでは話しが進まないと、レンが口を開き、


「それでさっきの話しだけど、今のエルフの里長って

ルフィーの娘なのかい?」


 レンが聞くとエルフの里長がその言葉の後を続け


「私の母親で、私の前の里長です。申し遅れました。

私は今、エルフの里長をしております

センテニアルと申します」


「「ええ!!」」


 再び驚くレンとティエラ


「ルフィー、以前このエルフの里長だったのか?」


「そうさね。娘に譲ってからはここを出て

今のベルグードに住んでるんだよ」


「母は、私が里長になった時、

前の里長…お母さんです…が

前の里長が同じエルフの里にいると色々と

やりにくいだろうと

自ら街を出て行ったのです」


「なるほど」


「なんとなくルフィーさんらしいよね」


 二人して言うと、お茶の入ったコップを

テーブルに置いたルフィーが娘の

センテニアルの目を見ながら


「今日帰ってきたのは、世界樹の葉1枚と

樹液を少し貰おうと思ってね。

この二人の服に刺繍をいれたいんだよ。」


 話しを聞いたセンテニアルは頷きそして

レンとティエラを交互に見て、

再び自分の母親に顔を向け


「わかりました。このお二方はそれを使用する資格が

十分にありますので、喜んで差し上げます」


「ありがとう。助かるわ」


 レンとティエラは話しを聞いているものの、

世界樹の葉、樹液と言われてもピンと来てなくて

お互いに目を見合わせていると、

里長のセンテニアルが二人に


「今、母親が言った世界樹の葉、世界樹の樹液は

エルフの宝物の1つです。

特に世界樹の葉は非常に日持ちが悪いので、

この里から持ち出すことができません。

その場で直ぐに使わないと意味のないものなのです」


「ああ、だからルフィーさんはエルフの里まで護衛を兼ねて

私たちを呼んでくれたのね」


 ティエラが納得して言うと


「世界樹の葉を樹液に浸して作った糸、

その刺繍がされている服を着ていると、

世界中どこにいても常に世界樹の効果を

受け続けることができます」


「世界樹の効果って?」


ティエラの問いかけに


「具体的には常時HP回復、

MP回復されていると思ってください。」


「こりゃまた凄い効果じゃないの、ルフィー、

いいのかい? そんな貴重なものを俺たちに使ってくれて」


 ルフィーはテーブルから立ち上がりながら、


「あんた達はそれを使う資格が十分にあるんだよ、

遠慮することはない。

今日はもう遅いから休ませてもらおうかね。

明日は朝から世界樹の葉を取って糸を作るよ」


 門番のエルフに案内されて、村にある宿泊施設に

ついた二人1階にある食堂でエルフの料理を

堪能してから久しぶりにベッドの上で夜を過ごした。


 翌日、朝起きて1階に降りていくと既にルフィーは

朝食を食べていて、二人を見つけると


「朝食が終わったら早速世界樹の葉を取りにいくよ。

二人とも付いてきておくれ」


 朝食を終え、ルフィーの後をついて二人は

里長の家を出て世界樹の根元に歩いていく、

里長の家からは小さなツボを抱えた

センテニアルも出てきて挨拶を交わしてから

レン達のの後を付いてくる。

世界樹の木の根元まで来ると、


「本当にでかい木だ」


「葉っぱも大きいし、木の天辺がまるで見えないわよ」


レンとティエラが関心して世界樹の木の上を見上げていると、


「ここのを貰うよ」


 言うやいなやルフィーが枝から伸びている大きな葉を1枚

丁寧に切ると、その場で葉を裏返して葉脈にそって

丁寧に葉を切っていく。作業をしながら


「世界樹の葉はね、この葉脈の表面を糸状に

剥がして使うのさ。

使った後の葉は糸と一緒に樹液に浸して

全てを糸に含浸させていく。」


 二人がルフィーの仕事をじっと見ていると、

背後からセンテニアルが


「エルフでもこうやって取って浸した糸を

使うことができるのは限られた者だけなのです。

世界樹はあるがままの姿が一番という風に

考えられているので、普通は枝から葉を取ることも

しません」


「じゃあ、落ち葉を使ってるの?」


「ええ、ただ、落ちてすぐに拾って使わないと

効果がなくなるので、必要な時は何日でも

世界樹の周囲で葉が落ちてくるのを待っています」


「そんな大変貴重なのを、枝から取ってまで

私たちに使ってくれて本当にいいの?」


 ティエラは恐縮しまくっている。レンも言葉には

しないが同じ気持ちで。エルフでもないただの

ランクAの冒険者にそこまでしてもらっていいのかと

内心恐縮しまくりだった。


 そんな二人の気持ちを知ってか知らずかルフィーは丁寧に

葉脈の周囲を糸状に剥がしていくとそれを綺麗な白の布に

包んでから、センテニアルから壺を受け取り、

その布ごと壺の中に沈めていく


「こうやって含浸させるのさ。そうさね、

お昼過ぎにはできるだろう」


 糸状になったのを布に包んで丁寧に沈め終わると

壺に蓋をしてルフィーは立ち上がった。

センテニアルがその壺を受け取り、

里長の家の中に持ち帰っていった。


 それからルフィーの案内でゆっくりとエルフの里を

散歩した二人は昼食を里長の家でセンテニアルと

一緒に済ませると、再びセンテニアルが部屋の奥から

先ほどの壺を持ってきてテーブルの上に置き、

蓋を外してゆっくり布を取り出した。


 布にも樹液が浸透しているのか

濃い茶色に変色しており、

それをテーブルの上で丁寧に広げると、

金色に近い茶色の糸が出来上がっていた


「綺麗」


 ティエラがその糸を見て声を出すと、


「陽に当たると金色に光って見えるんだよ。

さてと、じゃあまずはティエラからやるかね」


 そう言うとアイテムボックスから刺繍針を

取り出して糸を通し、ローブを着ているティエラに

近づいてその裾の部分に世界樹の葉の形に刺繍していく。

それが終わると今度はレンのローブにも

同じ様に糸で刺繍をし、


「これでOKだよ。二人ともこのローブに

刺繍したから、これを着ている限り常時

HP,MPが回復されている状態になったよ」


 仕事の出来栄えに満足したのか、ルフィーは

大きく伸びをすると二人の刺繍を見ながら

一人うんうんと頷いている。隣で見ていた

センテニアルも出来上がったローブを見て


「お二人とも、綺麗にできてお似合いです。

世界樹の効果が出ているのが私にはわかります」


「ありがとうございます。

こんなにしていただいて恐縮です」


 こう言った御礼や丁寧な対応はティエラの方が

レンよりもずっと上手いので、いつしか対応は

ティエラがすることになっていた。

隣でレンも頭を下げて謝意を表している。



「いいって。神獣の加護3体受けてる人の

持ち物の強化に自分も参加できたというので

こっちも大満足だよ。いい思い出になったよ。」


 ルフィーは大したことないと言う様に言いながらも

その目は満足そうで、それを見た二人も

自然と笑みがこぼれていた


「これでまた強くなったんだから、

しっかり冒険者として魔獣退治を頼んだよ。」


「任せといてください!」


ルフィーの言葉にティエラが答え、レンも


「とても貴重な材料を使ってくれてありがとう、

この効果を生かして頑張るよ」


 ローブに刺繍を縫ってもらった二人は改めて礼を言うと


「さてと、これでエルフの里の用事は終わったけど、

せっかくだから私は久しぶりにこの里で

のんびりしてから街に戻ることにするよ。

なぁに、帰りは途中までエルフの若いのに

護衛させるから大丈夫だよ。あんたたちはこれで

クエスト終了だから、ギルドに戻って報酬を貰ってきな」


 ルフィーから渡されたサイン済みのクエスト終了書を

受け取ると


「じゃあ、俺たちは先に帰るわ。ルフィーありがとうな」


「ありがとうございました 街に戻ったらまたいいのが

あったら紹介してね」


 そう言ってエルフの里長のセンテニアルの見送りを受けて

エルフの里を出た二人はテレポリングで

家のあるベルグードまで戻ってき、そのままギルドに

報告してクエスト終了の通知と報酬を貰って家に帰った。


よかったら評価をお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ