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第35話


 翌日、レン達の家に領主の館から使いが来て、

木箱を置いていった。二人で箱を開けると中には金貨が

ごっそり入っていた。二人は数えもせずに適当に半分に分けて、

それぞれのアイテムボックスにしまいこんだ。


 レンもティエラも今まで結構稼いでいて、

お金に対してそれほど執着しておらず。

今回のシヴァの涙の代金と言われても

ピンと来ていないのが正直のところだった。

二人は街にいるときのいつもの生活パターンで、

朝はゆっくり寝て、それから二人で街に

昼食を食べに出て、街をブラブラし、

市場で野菜や肉などを買って家に帰って

家で食事を食べてのんびり過ごしていた。


 数日後、ギルドから連絡があり、今回のレンの報告を

まとめたのもを明後日の朝に王国内のギルドで

同時に一斉に発表することになったとの事


 ギルドの職員に聞くと、今回の発表については

ギルドの中でそれほど揉めなかったらしい。

というのはこの事実を発見したのが、

その前にダンジョンの意図を発表した

レンとティエラだったかららしい。


 今や王国のギルドの職員の中でお二人を知らない人は

いないですよ。

そう言って職員が出ていくと、


「これは明後日は絶対街にいない方がいいよな」


「なんか大変なことになりそう」


「俺の田舎に逃げよう!」


 とその翌日、ギルドの発表の前日に二人は

テレポリングでベルグードの街からレンの田舎の村に

逃げていった。


 レンの両親は二人の急な来訪を歓迎し、

家の中でレンは再び今回の南への旅について

両親に説明していった。レンが説明し終わると


「そうか、赤魔道士で上位転生できたか。おめでとう。

魔法剣士か、いいジョブ名だな」


 レンの父親のジグスは感無量という顔で喜びを表していて、

その隣では母親のマリエも


「二人ともよく頑張ったね。上位転生にランクAなら

私達に追いついたじゃないの」


「こりゃレンに抜かれる日も近いな」


 両親が喜んでくれたのがレンにとっては一番嬉しかった。




 その後の雑談の中でジグスが、


「亜人か…俺は聞いたことがないな、マリエは?」


「私も無いわ。それにしてもそんな山の中で長いあいだ

静かに暮らしていたんだったら

これからもそっとしてあげた方が良いわね」


「そう思います。亜人の人たちも裕福ではないけど、

それなりの生活ができてるのでできればそっとしておいて

欲しいって言ってましたし。それで一応辺境伯の領主様と

ベルグードのギルドマスターには話しをしたんですけど、

彼らも亜人には触れないって約束してくれました。」


「なら大丈夫だろう」


 父親が言うと、レンはアイテムボックスから

シヴァの涙を取り出して


「ところで、これ、シヴァから貰ったんだけど

この家で飾ってくれよ」


「何なの?これ?」


 マリエがテーブルの上に置かれた綺麗な水晶の様なものを

手にとって…綺麗ね…とか言いながらじっと見ている。


「シヴァの涙っていうものらしい、シヴァから貰ったんだけど、

そこには神獣の加護が掛かっていて、

その持ち主や周囲に幸せをもたらすものだって言っていた。」


 レンとティエラは今回実家に来る前にこのもう一つの

シヴァの涙はレンの実家に置いてもらおうと決めていた。

二人はもう3体の神獣の加護をたっぷりと受けているので

自分たち以上に必要とする近しい人

…レンの両親にあげるのが一番だと…


「見た感じ、高そうなものに見えるけど、大丈夫なのか?」


 父親のジグスが心配して言うが


「タダで貰ったものだし、それに父さんも知ってるけど

俺もティエラもすでに神獣の加護を受けているからさ、

だからこの家の方が良いと思うんだ」


「そこまで言うなら家に置いておくか、

いいだろう?マリエ?」


「ええ、もちろん。レンが初めて私達にくれた

冒険者のアイテムよ。家宝にしましょ」


 レンとティエラは顔を見合わせてお互い頷きあった。


「じゃあ、そういうことで。 そうそう、

それ結構レアなアイテムっぽいから大事にしてくれると嬉しい」


「わかった。ケースにでも入れて大事に保管しよう」


 早速父親が家の裏の物置から綺麗なガラスケースを持ってきて、

それを綺麗に拭いてからその中にそっとシヴァの涙を置いた。


 その後の夕食中も南の冒険旅行のときの話しで

夜遅くまで4人で盛り上がっていた最後の方には

お酒に酔ったジグスがもう一度冒険者になるって言って

マリエから窘められたりもしていたが…




 レンとティエラが実家に逃げてのんびりしている頃、

王国内のギルドで一斉にジョブの上位転生条件が

解明されたとの発表が出た。


 それと同時に赤魔道士ジョブの上位転生ジョブが存在し、

すでに2名の赤魔道士の冒険者が上位ジョブ魔法剣士に

転生したことも同時に発表された


 この発表は当然冒険者のあいだで大反響をよんだ。


 行いの良い冒険者には皆平等に上位転生のチャンスがある

ということで、今まで以上にダンジョンに潜る冒険者が増え、

それと同時に今まで頻繁に起こっていた冒険者同士の

いざこざや冒険者と市民のゴタゴタが急激に減少していった。


 一方、一部の冒険者のあいだでは魔法剣士に上位転生した

赤魔道士のことが話題に上り辺境領を中心に上位転生をした

元赤魔道士のレンとティエラの名前が広がっていき、それは

あまり時間が経たないうちに王国中に広まっていった。


 そんなことは全く知らない二人は実家でのんびり過ごしていた、

ティエラは母親のマリエと料理を作ったり、

庭に植えている草木の手入れや買い物を手伝い、

レンはジグスと一緒に森に入って木を切って薪をつくったり、

小動物を狩ったり。


 そして時々レンとティエラの二人で村の周囲を探索し、

魔獣を倒して(と言ってもランクD、せいぜいが

ランクC程度だが)村に危害が及ばない様にしていた。


 レンの実家で1週間ほど過ごしてのんびりした二人は

いつでも遊びにおいでという両親の言葉を聞きながら

久しぶりにベルグードの街に帰ってきた


 とりあえず一旦家に戻ってから二人でギルドに入ると、

そこにいた冒険者達が一斉に駆け寄ってきて


「すげぇじゃなかよ、魔法剣士だって?」


「お前ら本当に大した奴だよ。」


「ティエラも凄いじゃん。諦めずに頑張ってきてよかったね」


 もみくちゃにされながらカウンターに向かうと、

そこにいた受付嬢のキャシーからは


「レンさん、ティエラさん、こんにちは。

今までも殆どそうだったんですけどお二人は

ランクAになられたので、今後は私がお二人ランク

A冒険者の専用の受付担当になります。

よろしくお願いします」


 と頭を下げられた


「えっ!ランクA」


また周囲がざわめく


「そりゃそうだろう。上位転生したらランクAだろう?」


「けどさ、まだ20歳そこそこだぜ。メチャクチャ早くね?」


「ランクAってうちのギルドで何人いたっけ?」


 等と周囲が騒然として二人の周りでいろんな事を話すのを

横目に、受付のキャシーはレンとティエラに


「とりあえずランクAのクエストは今はありませんが、

どうされますか?」


「まぁ、今日はとりあえず顔を出しにきただけなので。

特にクエスト受けようと思ってたわけでもないし、

今日はこれで失礼するよ。今後街にいるときは毎日

顔を出す様にするから」


「わかりました。よろしくお願いします」


 受付嬢の言葉を背中に聞きながらティエラと二人で

ギルドを出て


「まだ落ち着いていなかったみたいだ」


「そうだね。もうしばらく掛かりそうだね。

で、今日はこれからどうするの?」


「うん。転生とランクアップの報告で武器屋と

防具屋に挨拶に行かないか?」


「いいわね!そうしましょう」



 二人が向かったのは先ずはドワーフの武器屋

いつもの犬族の店員にズームいる?と聞くと

すぐに呼んできてくれた


 店の奥からのっそり出てきた店主のズームは

二人を見ると破顔しながら近づいてきて


「レンとティエラ、聞いたぞ。上位転生したってな。

何だっけ?魔法剣士だっけか?いいじゃないかよ。」


 レンの背中とバシバシ叩きながら話しかけてくる


「おまけにランクもAになったんだろう?

文字通りこのギルドのトップブレーヤーになったって訳だ。」


「どうもありがとう。ズームと、防具屋のルフィーには

お世話になってるから、直接報告に来ようと思ってたんだ」


「ズームさんの作ってくれた剣、すごく使い易くて重宝してます」


 レンとティエラが報告とお礼を言うと、ズームが


「そう言ってもらえると嬉しいが、何たってお前さん達は

ランクAになったからな。よし、昇格と上位転生祝いに

俺が一丁今の剣を上回る剣を作ってやる。」


「えっ! そんなの悪いですよ、今のでも十分すごいのに」


 恐縮したティエラが言うも、ズームは聞き入れず、

俺が作ると言ったら作るんだ。お前達がびっくりする様な

剣を作ってやる。と息巻いていて、もうレンもティエラも

よろしくお願いしますと言わざるを得ない程であった。


「出来たら声かけるから楽しみにしておけよ!」


 という武器屋のズームの声を聞いて店を出た二人は


「すごい迫力だったわね」


「ああ、でも本気になったズームが

どんな剣を作ってくれるのかはすごく興味がある」


「うん。じゃあ、次は防具屋さんね」


 武器屋から防具屋に足を向けて、店の扉を開いて声をかけると、

奥から店主のルフィーが出てきて二人を見ると、



「おめでとうお二人さん。よくやったね。

あたしが思っていた通り、赤魔道士にもちゃんと上位転生の

ジョブがあったってわかって、それがあんたら二人

だって聞いてもう最高に嬉しいよ。本当に頑張ったねぇ」


「ありがとうございます。いい防具を作っていただいた

おかげです」


 礼をいうティエラ


「相変わらず謙虚だね。しかもランクAになったんだって? 

前も言ったけど赤魔道士のレベルってちょっと異常だからね。

ランクAってことはレベルでいうと60かい?

なら実質はもう70後半、いや神獣の加護があるから

80位の実力はあるんじゃないかと見てるんだけどね」


「流石にそこまではないでしょう?」


 思わずレンが言うが、


「いやいや、あんた達が思っている以上のレベルになっているよ。

いずれにしてもこの辺境伯の冒険者の中で、

実質No.1の実力者になったのは間違いないね」


 そう断言するルフィーは続けて


「あたしが売った防具を身につけて転生してくれただなんて、

嬉しい話しじゃないの。転生祝いに私が二人にとびっきりの

防具を作ってあげるから楽しみにしておいで」


 武器屋の時と同じ事を言われて困惑する二人にルフィーは


「いい素材を集めて作ってあげるからさ、出来たら連絡するよ。

楽しみにしておいてくれるかい」


と発言までズームと同じで、ここでも二人は


「「よろしくお願いします」」


 としか言えない状況になった。待っておいておくれよと

言う声を聞いて店を出た二人は


「なんとまぁ」


「でも祝ってくれるって嬉しいよね。

ここは素直に受け取ろうよ」


「そうだよな。楽しみにまってるか」


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