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第33話


 テレポリングを使った二人は南の砦の近くに飛んで、

そこから砦に向かって歩いていくきた時と同じ様に

門から槍を持った騎士が出てきたが、二人を見ると、

事前に話しを聞いていたのかすんなり砦の中に入れてくれて、

そのまま隊長の部屋に案内してくれた。


「戻ってきたか。」


 部屋には隊長のガルシアと副隊長のローズ、

それと騎士2名の4名が打ち合わせをしていたところで、

レンとティエラを見ると打ち合わせを中断し、ガルシアと

ローズが部屋に残った。


「南はどうだった?」


 レンとティエラがマッピングをした地図をテーブルに広げて、

この砦から南の山脈までの

地図を見せながらその様子を説明していく。

黙って聞いていたガルシアとローズは、

レン達の説明が一通り終わると、


「なるほど。ここまでは草原で遮蔽物がほとんど無いってことか」


「この荒野と草原の崖の段差はありがたいわね。

万が一の事態になった時でも崖を登るのに時間がかかりそうだから

我々にしたら時間が稼げるわね」


 二人は地図を見ながら状況を把握していく。


「魔獣はどうだった?」


「それが、ほとんど出会わなかった。

この南の山脈の麓の森にはいると、ランクC程度の魔獣

たまにランクBがいたけど。

それ以外のこの草原地帯では地上にも空にも全く魔獣の影が

無かった。おそらく餌となる動物や人間がいないからだと思う」


「なるほど。いや大変参考になった。

これと同じ説明を領主様にしてくれるんだな?」


「そうなる。元々領主様からの依頼だし」


 ガルシアはうんうんと頷き、


「とにかくご苦労様。今日はこの砦で風呂にでも入って

ゆっくり休んでくれ」


 隊長の心遣いで二人はきた時と同じ部屋に案内され、

交代で風呂に入って身体を綺麗にしてから、

部屋でくつろいでいた


「ねぇ、レン。なんか私たちって恵まれ過ぎてるって思わない?」


「そうなんだよな。別に大それたことをしてる訳じゃないのに、

いつも周りがなんか俺たちを助けてくれてるんだよな」


今の境遇が自分たちには過分なものとしか思えない二人。


「でもせっかくこうやって周りの人や神獣が

助けてくれてるのだから、それに応えないといけないよね」


「そう言うこと。街に戻って少し休んだらまた頑張らないとな」


「うん」



  ゆっくりと休んだ翌日、ガルシアとローズに見送られて

砦を出た二人はテレポリングを使って自分の家がある

ベルグードに戻ってきた


「うーん、やっと帰ってきたぁ」


 街の入り口の南門をくぐったところでティエラが

大きな伸びをして、それから二人でまずは

ギルドに報告に向かった。


 ギルドの入り口を開けると 受付付近にいた冒険者や

隣接している打ち合わせテーブル、

奥の酒場にいた冒険者達が二人を見て


「レン、帰ってきたのか。どこに行ってたんだよ」


「ティエラ、久しぶり〜。相変わらず仲がいいのを見せつけてくれるわね」


 知り合いの冒険者から声がかかり、それに答えて

言葉をかわしながら受付にいくと、キャシーが待ち構えていて


「おかえりなさい。ギルドマスターには声をかけましたから、

応接室にどうぞ。その前にギルドカードをお預かりしますね。」


 カードを受けとり、二人をいつもの応接室に案内すると、

すぐにギルドマスターのアンドリューが部屋に入ってきて。


「おお、帰ってきたか。お疲れさん」


と挨拶しているところにジュースを持ったキャシーが、

持っているジュースをこぼしそうな勢いで部屋に飛び込んできた


「ま、マスター…」


そのまま二人のギルドカードをアンドリューが受け取って、

それを見た瞬間に


「何だって!!! 魔法剣士?」


「ああ、それが赤魔道士の上位転生ジョブらしい」


「転生できたのか! いや出来たからこうなっているんだよな。」


「マスター、しかもお二人のレベルが60になってます!」


 キャシーが興奮冷めやらない口調で畳み掛けて言う


「お、お前ら…いやちょっと待て。キャシー、

すぐに領主とアポイントを取ってくれ、大至急で頼む」


 キャシーが部屋から出ていくと、

自分を落ち着かせる様にジュースをグイッと飲み、


「いろいろあったみたいだな。俺の前で説明して、

また領主の前で同じことを説明するより

また俺と一緒に領主の屋敷まで行ってくれ。

そこで詳しい話しを聞かせてくれ。」


「ああ、こっちもその方が楽だしな」


「帰って早々に悪いな。それにしても、そうか転生したか。

やっぱり上位転生ジョブが存在したんだな」


 独り言の様にブツブツと言うギルドマスターに


「マスター ついでにこれを鑑定してくれません?」


ティエラがアイテムボックスから”シヴァの涙”を

1つ取り出してテーブルに置く、それを見たアンドリューは


「これは何だ?えらく綺麗な水晶の様なものだな」


「シヴァの涙というものらしいんです、

シヴァから直接貰ったの」


「えっ!! ちょっと待て。シヴァの涙? 

これがシヴァの涙なのか?」


「ギルマス、シヴァの涙知ってるのか?」


レンが聞くと、シヴァの涙とレンを交互に見ながら


「知ってるといえば知ってる。その存在だけだがな。

こうやって現物を見るのは実は俺も初めてだ。

シヴァの涙ってのは幻のアイテムと言われていて、

ほとんど世に出回っていなくてな。

持っている家は未来永劫栄え続けていくって言われていて、

王族や貴族達がそりゃもう俺たちには想像もつかない程の

大金を出してでも欲しいって代物なんだよ。で、お前ら

これをシヴァから貰ったのか?」


「ええ。シヴァが言うにはこれを持っている人と

その周囲を幸せにする神獣の加護が宿っているって。

シヴァにとっては大したものじゃないからって2つ貰った」


「あん? 2つも貰った??」


 あんぐり口を開けているギルマスに


「俺たちは価値を知らないからさ、

だからギルドで鑑定してもらおうと思って」


「レン、悪いがこれが本物のシヴァの涙…

いやシヴァから貰ったから間違いなく本物だろうが…

こいつには値段を付けられないんだよ。

全財産を投げてでも欲しいってのがいっぱいいるからな」


「じゃあどうすればいいんだよ?」


 レンの言葉にしばらくじっと考えてからアンドリューが


「俺からのアドバイスで良いなら言ってやる。

1つはお前らで持っとけ。

持ってることも周囲には言わない方がいい。

で、もう1つはこれから会う領主のヴァンフィールドに

買ってもらえ。あいつならかなりの金で買ってくれるはずだ。

それにあいつに売っとけばいろいろ後が楽になるぞ」


「領主様か…どうせ売るなら領主様に買い取って

貰った方がいいかもね」


 ティエラがギルマスの提案に同意すると、レンも


「そうだな。領主には世話になっているし、

俺たちは2つもいらないしな」


「お前らな、よくそんなに冷静でいられるな。

目の前にあるこれ1つで戦争が起きるほどの代物なんだぞ?」


「まぁ、私達、よく知らないし」


 ギルマスとやりとりをしているとキャシーが部屋に入ってきて


「マスター、領主様は今日はどうしても時間が取れないので

明日の朝に来て欲しいとのことです」


「わかった。レン、ティエラ、そう言うことだから

今日はこのまま家に帰ってゆっくり休んでくれ、

明日は朝一番でギルドに来てくれるか? 

それからキャシー、こいつらをランクAにして

やってくれ。転生したらランクAってのは当たり前だしな」


 キャシーは頷いてすぐに部屋を出ていった


「ランクAになるのか」


「当たり前だろう? しかも赤魔道士初の上位転生だ。

誰も文句言わねぇよ」


「わかった ありがとう」


「ありがとうございます」


 テーブルの上のシヴァの涙をアイテムボックスに戻してから

二人立ち上がって


「じゃあ明日またよろしく頼む」



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