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第32話



 レンとティエラが二人でテントに入っていく。

砦を出てからは知らない場所、


 身を隠すところがない場所での野営が続いていて、

神獣が言う通り、毎晩交代で短い睡眠を取っていた二人。


 自分達が思っていた以上に疲れていた様で、テントで横になると

すぐに二人とも眠りに落ちていった。 

いつもの二人で寝る時と同じ様にレンの左手にしがみついて

身体を寄せて寝るティエラ。

二人の姿を見ながら地面に身体を横たえたフェンリルが


『あと2、30年遅かったら、この二人なら魔王にも

充分対抗できるほどの力をつけただろうに。』


『ふふ、まだ諦めちゃだめよ』


『シヴァ、あの加護をかけたのかい』


 リヴァイアサンがシヴァを見ながら言うと


『ううん。まだよ。でも場合によったらかけちゃうかも。

この二人、普通に年を取らせるのは惜しいものね』


『長寿の加護か… 大抵の人間なら欲しがる加護だが…

この二人はどうだろう? 我はむしろ我ら神獣の加護を受けた

子供がどう育つかにも興味はあるがの』


『あら、なら親子で討伐したっていいじゃない』


『ふふ そういう手もあるか。

いずれにしても加護の付与はシヴァに任せるか』


『そうじゃの、どちらに転んでも

この二人は道を外すことはなかろうて』


 テントの中でぐっすり眠っている二人を見ながら、

3体の神獣は遅くまで話しを続けていた。


 翌朝目が覚めてテントから出ると、昨日と同じ3体が

奥に座ってこちらを見ていた


『昨夜はよく眠れた?』


 シヴァがテントから出てきたティエラを見ながらいうと


「ええ、おかげさまで、久しぶりにぐっすり眠れました。

ありがとうございました」


『いいのよ。それより貴方達は今日テレポリングで戻るの?』


「そのつもりです。途中で砦に寄って、砦から南のエリアの

簡単な地図を書いて説明してから街にもどります。

砦の騎士隊からこのあたりの地図を書いてくれと頼まれているので」


『そう、洞窟のこととか亜人の村のことは?』


「それは砦では言わないつもりです。ただ、

領主とギルドマスターにはあったことは全て報告するつもりです。

あと、上位転生の条件も。もちろん、亜人の村の場所や、

この洞窟の場所は言いませんけどね。」


『そうね。それでいいと思うわ。彼ら2人もなかなかの人物だから

余計なことは外部には言わないでしょうし。

それにこの洞窟は外からはまず見つけられないし』


『レンよ。転生し、我ら神獣の加護を3つ持った気分はどうだ?』


 リヴァイアサンが首をゆっくりとレンに向けて問う。


「うーん、正直実感がないってのが素直な感想かな。

俺たち普通の冒険者だし、魔王や魔人を倒してる訳でもないし。

でもせっかくもらったこの加護は大事にするつもりだ。

街に戻ったら冒険者として地上の魔獣退治をしたり、

ダンジョンでレベルを上げたりするつもり』


『うんうん、それで良い。

お主らは普段通りの生活をすればよかろう』


「ところで、神獣ってのはこの3体だけじゃないんだろう?

まだどこかに他の神獣がいるってことだよな?」


 レンが正面の3体を見ながら聞くと、


『ほぅ、どうしてそう思った?』


 フェンリルが面白そうな口調で逆に問うと


「この国、領地以外にも同じ様なダンジョンがあるっ

て聞いている。

他にもダンジョンがあって、そこには神獣がいるダンジョンも

あるんじゃないかと思ったから」


『で、他の領地や国のダンジョン攻略を考えておるのか?』


 このフェンリルの問いは、すなわちまだ他の神獣がいるということを

暗に認めたことになっているとレンとティエラも気づいた。


「いや、今のところはその気は無いかな。

冒険者としてこの国で頑張るつもり。

ティエラもそう思うだろう?」


「そうね。元々加護をもらうために

冒険者になった訳じゃないからね」


『わかった。』


 短く答えたフェンリル。 


『そうそう、貴方達これから帰るのならこれを持って帰りなさい。

私と逢ったという証拠になるでしょうから』


 シヴァが手を振るとシヴァとレン達の間に光が輝いて、

それが消えるとそこに白く輝く

水晶の様なものが2つ現れた。


『それは貴方達の世界で、”シヴァの涙”

と言われているものよ』


「「シヴァの涙?」」


 2つの光り輝くものをティエラが手にとってみる


「すごく綺麗。涙が固まったみたいな形をしている」


『そう。その形が涙に似ているから、

それはシヴァの涙と言われているの。

人間界ではそれは非常に珍しいもので、

家宝にしている王族や貴族もいるほどよ。

2つあげるから、お好きになさい』


「高価なんだろう?」


『貴方達にとってはね。これには神獣の加護が宿ってるの、

持っている人とその周囲を幸せにする加護よ。

私たちにとってはそれほど大した者じゃないので

気を遣うことはないわ』


「じゃあ遠慮なく頂こう。いろいろとありがとう」


「ありがとうございました」


 二人が頭を下げて礼を言うのを3体の神獣達が見ている。


『では、わしらもそろそろ元のダンジョンに戻るかの』


『そうするか。お主らとはまたどこかで会うかもしれんしの』


『ふふ、そうね。きっとまたどこかで会うでしょう。

その時にはまた成長した姿を私たちに見せてね』


「はい。冒険者として頑張ります。ではまたどこかで!」


 ティエラが礼を言い、その場でテレポリングを起動させて

二人の姿が洞窟から消えていった。


『フェンリルはずっとあの二人を追っかけてそうね』


『ふふ、それもまた楽しいものよ 

お主らもすぐにそうなるぞ。ではな』


 フェンリルが消え、そしてリヴァイアサンも消えて、

洞窟にはシヴァだけが残った。


『さてと、次はどんな冒険者がいつ頃この洞窟を

訪ねてきてくれるのかしら』


 独り言を言いながらシヴァも洞窟の奥の壁の中に

スッと消えていった。




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