表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/101

第29話


 案内された部屋は小綺麗なところで、少し休み、

風呂に入ると昼食に呼ばれ砦の食堂に向かった。

食堂には見張り以外の騎士がおり、そこで2人を紹介され、

差し入れの礼を言われた。


 2人も、喜んでくれてなによりだと返礼をし、昼食となった。

砦には常時20名ほど勤務しており、男女比は1:1

この砦の勤務は1年任期ながら給金が非常に高いおかげで希望者が多いらしい。

この辺りにも領主の考えが見えている。


 食事が終わりかけた頃にこの砦の隊長であるガルシアから、


「疲れているところ申し訳ないが、午後にうちの騎士達と

模擬戦をしてもらえないだろうか? 普段は同じ連中とばかり

模擬戦をしているので、たまには違う相手としてみて、彼らの力量を

再チェックしてみたいんだが」


「俺はいいですよ」 


「私も大丈夫」


「では、あとで中庭で模擬戦をお願いする」


 ガルシアは食事する2人を見ながら…それほど強いとは思えないんだが、

領主様が言うくらいだから実力はあるんだろう。

うちの騎士達とどういう勝負になるか…


 実は領主がガルシアに渡した手紙の中に、「この2人の赤魔道士は

この辺境領の中のギルドに所属している冒険者の中でもトップクラスの

実力の持ち主だ」 

と書いてあって、ガルシアはその2人の実力がどれほどのものか

自分の目で確かめようとしていたのである。


 食事が済んでしばらく部屋で休んでいるとローズが迎えにきて


「準備はいいですか?」


「大丈夫。武器は?」


「刃をつぶした武器があるのでそれで模擬戦を行います」


「わかった」


 ローズに連れられて2人が中庭に出ると既に中に数名の騎士が

訓練用の武器を持って待っていた。中庭に来た2人を見て、ガルシアが


「武器はそこにある刃を潰している武器で行う。

こちらからは4名用意した、そちらはどうする?」


「先にティエラが2人と、その次に俺が2人と。 

これで構わないかな?」


「それで構わない。こちらは相手が女性だからと遠慮しないが」


 ガルシアがティエラを見ていうと、


「もちろん、お気遣い無用ですよ」


 笑って答え、刃を潰した片手剣を持つ


 ティエラと同じ片手剣を持った男性騎士が中央に出て、


「では、始め!」


 ガルシアが試合開始の合図を出す。


 合図と同時にティエラに突っかかっていく騎士、

その剣を軽くいなしていくティエラ


「強い」


 思わずガルシアが声を上げて目の前の模擬戦を見る。

ティエラは相手の攻撃を軽くいなし続けていて

相手に全く付け入る隙を与えない。

4、5度相手の剣をいなすと今度は自ら相手に突っかかっていった。

そのスピードは騎士のスピードよりずっと早く、

あっと言う間に相手の喉元に片手剣の先を突きつけた。


「そこまで!」


 続いて今度は槍を手にした騎士がティエラと向かう。

ティエラはといえば何もなかったかの様に

全く息も切らしておらず相手に対峙していて


「始め!」


 のガルシアの掛け声とともに、槍を持った騎士が武器の長さを生かして

槍を突き出してくるがそれを剣で払いのけていくティエラ

今度もやはり4、5度払いのけたかと思うと、

最後は強く弾き騎士の手から槍を飛ばして模擬戦終了。


「そこまで」


「ありがとうございました」


「次は俺だな」


 ティエラに変わってレンが中央に出ていく。

相手はやはり片手剣を持った騎士で

ガルシアの掛け声とともに模擬戦を開始した。

相手の剣をレンはその場で軽く払いのけて全く隙を与えない

模擬戦を見ているガルシアと副官のローズは


「隊長、うちの騎士が全く相手にされていませんね。」


「これほどまで違うものなのか。しかも見てる限り彼らは

全く本気を出していない」


 話ししながら目の前の試合を見ていると、

最後は剣を上段に構えて突っ込んできた騎士を横に避けながら

片手剣を相手の腹に打ち込んで、その場で騎士が前のめりに

倒れこんで終了となった。


「レン、すまないが次は私が相手をさせてもらう」


 模擬刀を持った副官のローズが中央に歩み出る


「彼女はこの砦で実力NO.2の猛者だ。お互いに遠慮はいらないぞ」


 ガルシアの説明から開始の合図が出ると、

今の戦いでレンの動きを見ていたローズは剣を斜め上に抱えた格好で

レンに突っかけていく。

レンはそれを自分の片手剣で払いのけては剣先を相手に突き出す


 流石に副官だな、動きが早い、剣も重い。

だが、それも他の騎士と比べてというだけだ


 相手の剣をいなしながらレンが目の前の相手を分析しおえると、

一気にローズに向かって突っ込んでいき、相手の剣を下から上に

弾き飛ばしてからその喉元に剣先を突き出した


「なんと言う速さだ。 参りました」


 目の前の男がつっかけてきたと思ったら、

あっとうまに自分の剣を弾き飛ばされ、目の前に剣先を突きつけられた。

全く動きを追うことができなかった…

剣の腕には少々自信があったものの、全く歯が立たなかった 

これほどの使い手がいるとは…


 ローズがうつむきながら戻ると、その肩をポンポンと叩きながらガルシアが


「それにしても2人とも強いな。冒険者のトップクラスは

これくらいの実力があるものなのか。ところでお2人に問いたい。

模擬戦をして内の騎士はどうだったか、率直に言ってくれないか」


 レンとティエラはお互いに目を合わせてから


「冒険者と騎士とで比較はできないが、思ったことを言ってもいいか?」


「もちろんだ、遠慮なく言ってくれ」


「気づいたのは2つある。1つ目は形が綺麗すぎるってことだ」


「形が綺麗すぎる?」


 ガルシアがおうむ返しに言うと


「そう。恐らくだが騎士は武器の訓練で演舞の様に決まった手順で

身体を動かしているんじゃないかと。皆並んで一斉に、

剣を降り下ろしたら左から払う…みたいな。見ている分には綺麗な格好

なんだが、俺たちから見たら次の動きが丸わかりだ。

身体の癖になっちまってるみたいで次の動きが簡単に読める」


「そうね。次はこうくるなって分かっちゃうから対戦してても怖くなかったわ。

しかも大上段に構えるなんて、冒険者ではありえない。

お腹の部分がガラ空きになっちゃうとそこを攻撃されるしね。」


 ティエラもレンの言葉に同意して言う。


「なるほど。意外性がないってことか」


「そういうこと。そしてもう1つ気づいたのは、剣先に殺気が感じられない」


「というと?」


「対峙したときに相手の剣の先から怖さを感じないんだ。

騎士は個対個の戦闘よりも集団対集団の戦闘を想定しているんだと思う。

なので集団になったら力を発揮すると思うけど、

1人だと力が発揮できないんじゃないか? 冒険者は常に個人で

戦闘している感覚があるから。もちろん仲間もいるけど、基本は1人。

となると相手の圧力を全て受け止めて戦わないと勝てない。


勝つためには目の前にいる敵を絶対に倒すという気持ちがないと

負けてしまう。冒険者が負けるということは死亡するってことだから、

だから相手を倒す、それしか考えてないのが剣を構えた時に出るんだ。


この砦の周囲にも魔獣がいると思うけど、普段は複数人で魔獣退治を

しているんじゃないかなそれだと誰かが倒してくれるだろう

とか、あるいは自分は攻撃されない背後から魔獣の背中をバッサリ…

なんてできるけど、個人だと自分だ倒さないと倒されるから、

とにかく気持ちでは絶対相手に負けない様になる」


「なるほど。確かに言われてみればそうかもしれんな」


 レンの言葉にガルシアが頷く


「まぁ、さっきも言ったけど冒険者と騎士は戦う場面が

全く違うから一概に比較できないし。

あくまで俺の個人的な感想ってことで。

でも、個人の質を上げるなら砦の周辺の魔獣を1人で倒す訓練でもしたら?

魔獣は種類ごとに全く動きが違うし、いい訓練になると思うけど。」


「ふむ。今度やってみるか。いや非常に助かった。

我々の訓練ももう少しいろんなバリエーションを増やさないといけないな」


 ガルシアはレンとティエラに礼を言い、その後ローズが2人を

砦の来客用の部屋に案内する前に砦の周囲を案内し、

見張り塔まで登らせてくれた。



 見張り塔から南を指差しながら


「貴方達が行くところはあの場所よ」


 ローズが指差した先には万年雪を被った山とその周囲の山脈が遠くに見えている


「あそこまで行くのね」


「ああ、まだ道のりは遠い」


よかったら評価をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ