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第26話


 ギルドに顔をだすと朝のピークの時間は過ぎたのか受付前も

閑散としていて、カウンターにいる受付嬢達も朝の混雑が終わって

ホッと一息といった感じで寛いていた。

中に入ってきたレン達を見つけて受付のキャシーが


「おはようございます。今日はちょっと遅めですね」


「朝、武器屋に寄ってから来たからな」


「そうなんですか。ところで、どうですか?新居は?」


 キャシーが興味津々って顔でティエラに聞いてくる


「うん、すごく気に入ってるよ。住みやすいし、

周りも静かだし。お風呂も大きいしね。」


「それは良かったです。新婚さんにはいいお住まいでしょ?」


「うん。最高よ! ベッドも広いし」


 キャシーの言葉に臆することなく答えているのを見て

おっ、ティエラのやつ、受け流しスキルがかなり上がってるな


「おっ、ちょっといいところにいた。ちょっと2人こっちに来てくれ」


 ギルドマスターのアンドリューが奥からカウンターに出てきて

2人に声をかけて、自分は先に奥に引っ込んでいったので、

2人もその後をついてカウンター奥の応接に入っていった


「突然呼び出して悪かった。早速だが、

南の山脈方面に行くって言ってたけど出発は決まったのか?


 ソファに座るなりレンに問いかけてくるギルマスの顔を見ながら、


「いや、まだ決めてないけど、準備もあるから後2週間から3週間後くらいかな」


「そうか。実はな」


 と、テーブルの上に辺境領の地図を広げるアンドリュー。

広げた地図を見ながら


「ここが今俺たちがいるベルグード、それからずっと南に行くと、途中にあるここ」


 地図の上である地点を指差すギルマス。ちょうとベルグードと

南の国境を直線で結んだ線の中間点よりやや南よりの場所。


「ここに辺境伯の騎士達が常駐している砦があるんだよ」


「へぇ、こんなところに砦があるんだ」


 ティエラが地図を見ながら言うと


「この辺境領最南端の砦だ。ここから先は国境まで村もない。

文字通りの最果ての地になる」


「この砦には何人くらいいるんだ?」


「一年交代制で常時20名程と聞いている。もっぱら南から来るであろう

魔人達の動きを見張る砦で、ここしばらくは静かなもんだけどな。

それでお前らが神獣の加護を受けて南の山脈の麓まで行くって話を

辺境伯にしたら、せっかくのなので砦に寄ってくれって言われたんだよ。

なんでも手紙を渡して欲しいんだそうだ」


「手紙?」


「ああ、要はお前らの行動には一切詮索するなって命令書だよ。

でないと勝手に南に向かおうとすると砦の騎士達に止められちまうからな」


「なるほど。辺境伯の手紙なら砦の騎士連中も何も言えないってわけだな」


「その通り。んでついでに差し入れも持っていって欲しいってさ。

お前ら2人ともアイテムボックス持ちだから問題ないだろう?」


「大丈夫だ。それくらいお安い御用だよ。な、ティエラ」


「そうそう、砦で休ませてもらえるのならそれくらいは全然平気だよ」


「そう言ってくれると助かる。じゃあ、出発日が決まったら教えてくれ、

その前日か前々日に辺境伯のところに連れて行くから」


「わかった。準備が整ったらギルマスに連絡するよ」


 ギルドを出て自宅に戻りながら


「ティエラ、見たか?あの地図」


「うん、地図を見た感じだと、砦までまっすぐに歩いて約3週間、

そこから山脈までは2週間ほど?

おそらく地図も完璧じゃないんだろうし、高低差もわからないけど、

ひょっとしたらもっと距離があるかもね」


「多分な。しっかり準備していかないと。川とかもあるかどうかわからないし。

魔獣の強さについてもほとんど情報ないだろうし」


「やっぱりテレポリングは使わずに行く?」


「そうだな。行きは使わずに行きたいな。ズルしてるみたいで嫌なんだよな」


「う〜ん、そうなるとお風呂は入れないけど、

でもそうだよね。ズルして行くのは嫌だよね」


 ティラもレンの提案に同意して、行きは歩いて行くことにした。 

朝出発し、行けるところまで行ってそこからテレポリングで

一旦ベルグードの家に戻って夜を過ごし、翌日また家からテレポリングで

飛んでそこから歩いて行くという方法もあるのだが、

2人は結局テレポリングがない前提で野営しながら南を目指す事にした。


 ギルドを出てからおかずを買いに行くというティエラと別れて

レンは商業区にある宝石店で買い物をしてから

先に家に戻ってティエラの帰りを待っていた。


「ただいま。」


 ティエラが家に戻ってきてアイテムボックスから

食事の材料をテーブルの上に置いたのを見て


「ティエラ、ちょっといい?」


「ん?なに?」


リビングにいたレンのところに荷物を置いて近づいてきたティエラに宝石箱を渡し、


「これ 受け取ってくれるかい?」


 ティエラが中を開けるとゴールドの綺麗な彫物がされた指輪が入っている。


「えっ!?」


「いや、あの…俺とずっと一緒にいてください」


「レン…」


「こういうのはきっちりしておいた方がいいかなと思って」


「ありがとう」


 ティエラがレンに抱きついて、そのまましがみつく様に両手をレンの背中に回して


「うん、ずっと一緒にいる。ずっと一緒にいるから」


しばらく抱き合ったまま、身体を離し、


「レンが指輪をはめて」


 ティエラの左手の指に金色の指輪をはめると再び抱き合う2人…


 この時代の婚姻は貴族、王族は別としてそれ以外の人にとっては

決まった形などなく一緒に住んだり、子供が先にできたりということが

婚姻と見なされていた。特に冒険者は明日がどうなるかわからない

職業でもあり、婚姻に対する考え方はある意味非常に進歩的で、

形にとらわれることなく、好きだった者同士が一緒に住むことで

周囲から認知されることが多かった。


 レンとティエラの関係も周囲は既に夫婦だという理解でいたものの、

レン自体はけじめをつけたくて街で宝石を買って

ティエラに婚姻の印として渡したのだった。


「それでさ、ティエラ、お願いがあるんだけど」


「何」という風に首をかしげるティエラに


「南の山脈に行く時に、俺の出身の村に寄っていきたいんだ。

父さんと母さんにもティエラを紹介したいし。少し遠回りになるけど、

いいかな?」


「もちろん、レンのご両親にもお会いしたいしさ、

それにレンだって冒険者になってから全然帰ってないんでしょ? 

一緒に行こ!」


「ありがとう」


今回は短めです。

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