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第24話

『では、我から一つ場所を教えてやろう。』


 リヴァイアサンは2人を見ながら、


『この国の南の端、魔人の国との国境になっている険しい

山脈地帯は知っておるの? その中にある一番高い、万年雪を被っている山の

山裾にある洞窟を探してそこに行ってみるがよい。

そこでお主らはもう一段強くなるじゃろう』


「南の一番高い山の裾にある洞窟」


『そうじゃ。その山の裾に洞窟があるから、その中に入っていくのじゃ。

おそらくまだ人間は誰も行ったことがない場所じゃ。

しっかり休んでしっかり準備を整えてから向かうが良い』


 リヴァイアサンに次の目標を告げられた2人は


「わかった。今度はそこに挑戦してみる」


「教えてくれてありがとう」


 お礼を言うと、


『礼には及ばん。それより山裾の洞窟に辿り着くまで幾多の

困難があるだろうけど、決して諦めるでないぞ。』


 いつの間にかボス部屋の奥の隅に転移魔法陣が浮かんでいて


『あれに乗って地上に帰りなさい。

フェンリルが言っておったかも知れんが、

我らはいつでも加護を与えた人間を見ているぞ。

今度は別の場所で会えるかも知れんな』


 最後にもう一度リヴァイアサンに礼を言って、

転移魔法陣に乗って2人は地上に戻っていった。


 転移魔法陣から2人の姿が消えたのを見て、


『お主も隠れてないで姿を見せればよかったのに』


 リヴァイアサンが顔向けた先にはいつの間にか

フェンリルがその姿を現していて、


『いやいや、ここはお主のダンジョンじゃからの。

それにしてもまた大きくなったな、あの2人は。将来が楽しみじゃ。

それにしても南の洞窟を紹介するとは思わなんだわ。』


『力だけじゃない。2人とも素直な心を持っておる。

お主が惚れこんだのももっともじゃの。

ふふ、あの洞窟に住んでるあいつにもこの2人を見せたくなっての。

初めてあいつと会う人間としてはあの2人はふさわしいとは思わんか?』


『確かに。次の洞窟の奥にたどり着いた時は2人の前に顔を出してみるか』


『ふふ、その時は我も一緒に行くぞ』


『お主も気に入ったみたいだの』


『ああ、どこまで伸びるのか、

その成長ぶりをじっくり見させて貰おうかの、ふふ』


 フェンリルとリヴァイアサンの会話はその後もしばらく

最下層のボス部屋で続いていた。



 地上に戻った2人はテレポリングでベルグードの街はずれまで飛んで、

そのまま街の南門に向かって歩きながら、


「それにしても、武器や防具の性能がぶっ飛んできてるよな」


「本当。でもいいのかな?私達、こんなにしてもらって」


「そこは俺もわからないけど、せっかく付与して貰ったんだから、

期待に応えないとな」


「そうだね。」


 そんな会話をしながら門をくぐって街の中に入り、

いつもの様にギルドに向かう。

ダンジョンクリアの報告をし始めると、受付にいたキャシーが、


「クリアしたのならギルマスを呼びますのでこちらにどうぞ」


 案内されたのはこの前と同じ応接室で、キャシーに冒険者カードを

渡して待っているとギルドマスターのアンドリューが部屋に入ってきた。


「ダンジョンクリアしたんだって?」


「ああ、その報告とあとはこれの換金を頼もうかと」


 アイテムボックスからリヴァイアサンの鱗を取り出してテーブルの上に置く


「ほぅ、リヴァイアサンの鱗か、それも10枚。

これ全部買い取るって事でいいのか?」


「それで頼む」


 ちょうどキャシーがジュースを部屋に入ってきて、

テーブルにジュースを置きながら


「レンさんもティエラさんもレベル50になったんですね」


「何? レベル50になったって? じゃあランクBの手続きを頼む」


 ギルマスがキャシーに指示する。


「ランクBって昇進試験とかないのか?」


「お前ら2人はギルドマスター権限で無試験で昇格だ。

なんならランクAまで一気に昇格させてやろうか?」


 冗談とも本気とも取れない口調で言うギルマスに


「ランクA? いやいや、そんなのいいです。ランクBでお願いします」


 ティエラがびっくりして即否定する


「で、どうだった?ダンジョンボスは?

また神獣の加護ってのを貰ったのか?」


 ギルマスの問いにレンがダンジョンのボス部屋での会話の内容を

説明していく。黙って聞いていたギルマスはレンの話しが終わると


「で、お前らは神獣のリヴァイアサンが教えてくれた

南の雪山の山裾の洞窟探しに行くって訳か…すぐに出発するつもりなのか?」


「いや、ずっとダンジョンを攻略していたのでしばらく、

そうだな、2、3週間はこの街でのんびりして過ごそうかと思ってる」


 街に戻りながら2人で話しをしてしばらくゆっくりしようと

いうことにした、その事をギルマスに言うと、

なぜかギルマスは喜び、身を乗り出して


「そうか。いやそうだろう。ダンジョン攻略も疲れるしな。」


 間髪を入れずに言い、更に


「でだ。しばらくゆっくりするなら旅館じゃなくて、

お前らこの街で家を持つ気はあるか?


「家?」


 ティエラが素っ頓狂な声をあげて


「そう。旅館だとやっぱり疲れが取れないだろう? 

せっかくだからこの街で自分の家を持って拠点にしないか? 

いや、実はな、ギルドとしていくつかこの街に家を持ってるんだが、

そのうち使わないままのがあってさ、

よかったらお前たち買ってくれないかと思ってさ」


 ギルマスによると、ギルドの来客用としてこの街に遠方からの

来客の宿泊用としてギルドとしていくつか家を保有しているのだが、

その中で全く使用されていない家があって

その空いている家を買ってくれないかということらしい。


「ティエラ、どう思う?」


 レンが相棒のティエラの意見を求めると


「レン、私…家に住みたい」


 ティエラがレンの顔を見ながら言う。一緒にホテルで

住む様になってからティエラの過去を聞いていたレンは頷きながら


「ティエラが欲しいなら。じゃあ、家を買うか。

俺もホテル住まいは飽きてきてたし。」


 とギルマスに言うと


「そうか、買ってくれるか。じゃあ早速キャシーに案内させるよ」


キャシーを呼びに一旦部屋を出ていくギルマス


 ティエラは小さい時に両親を魔獣に殺されて亡くし、

その時から村の教会で育てられてきた。

小さい村で同じ年代の子供もいなくて、

いつも1人で教会の仕事を手伝いながら

村の人から女は自分の身は自分で守れる様にならないといけないと、

村に住んでいた元冒険者達から武器の使い方や魔法を教えてもらい。

17になって村を出て冒険者になった。


 そんな過去があり、自分の家の記憶があまりないティエラは

家に住みたいとずっと思っていたらしく今回のギルマスの

提案に対して自分の本音をレンに伝えた。


 すぐにギルマスのアンドリューとキャシーが2人で部屋に戻ってきて


「まずはこれがギルドカード。ランクBになっています。おめでとうございます。

これで1流冒険者ですね」


 ギルドカードを2人に渡して


「次にリヴァイアサンの鱗ですが、大きくて状態も良いので

1枚金貨10枚、鱗が10枚ありましたので全部で金貨100枚となります。

それとダンジョンの魔獣の討伐代金が金貨15枚で合計で金貨115枚になります」


 袋に入った金貨115枚をテーブルの上に置く。


「そして最後にお二人の家ですが、今ご紹介できるのは2軒あります。

これから見に行きますがいいいですか?」


 頷いて2人立ち上がって応接間を出て、そのままキャシーの後をついて外に出る


 最初の家は貴族街に近い場所にある家で、大きくて屋敷の様で

流石に2人だと大きすぎると断って、もう1軒の方に移動していく


 2軒目の方は商業区の大通りから奥に歩いていった先にある閑静な一角にあり、

家の周囲は木々と塀とで完全に外から見えない造りになっていて、

家自体もこじんまりとした家で、ティエラは外から家を見るや


「私はこっちの方がいい」


「そうだな。外から見た感じはこっちの方が俺たちに向いてるな」


 レンも同意して家の中を見せて貰う


 1階は大きいリビングにキッチン、それにトイレに風呂! 

ティエラは風呂を見て大喜びしている。2階は3部屋あり、

大きい部屋が寝室、後の2部屋も来客者がいても泊まれる様な広さで、

1人用のベッドやクローゼットまでついている。


「ここはいいな。静かだし、部屋数もちょうどいい感じだ」


「レン、ここにしよ。ギルドにも、外に出る門にも遠くないし、

商業区の中だから買い物とか食事にも便利よ」


「そうだな。じゃあ、キャシー この家にしたいんだがいくらなんだい?」


「ギルマスから特別価格でと言われておりますので、

この家なら金貨100枚でOKです。もちろん、家にある家具込みの価格です。」


「安くない?いつでも使える様に家具付きだよ?家具込みの値段だよ?」


「ああ、これで金貨100枚なら安いよな。

ギルマスの気が変わらないうちに下で契約しようか」


 3人で下の応接に降りて、その場で契約書にサインをし、

先ほどもらった金貨をそのままキャシーに渡して契約が成立した。


「ありがとうござました。これでこの家も家具も全て

今からお二人の持ち物になりました」


「こちらこそ、いい買い物をさせてもらったよ、ありがとう」


「うん、ありがとうね」


 契約書とお金を抱えてキャシーが家から出て行き、

家に2人だけになると、ティエラがレンの後ろから背中に抱きついて


「レン、ありがとう」


 レンの背中に顔をつけて言うティエラに


「ティエラが喜んでくれたら一番だよ。俺も家に住みたいと思ってたし、

いい家が見つかってよかったよな」


「うん」


 しばらく2人でそのままの格好でじっとしていた。

会話がなくてもお互いの気持ちが通じあっていて、

静かな家の中で優しい時間が流れていった


 ギルドに戻ったキャシーにギルマスのアンドリューは


「どうだった?」


「ええ、商業区の方を購入されました。これが契約書と代金です。」


 書類と代金を渡しながら


「それにしても思い切ったお値段でしたね。普通ならこの3倍以上するでしょう?」


「ああ、実は領主からも言われていてな。有名な赤魔道士ペアを

何としてもこの街に引き止めておけとさ。あいつらが他の街、

いや万が一他の国なんかに行っちゃったらこの街やギルドの

損失になるだろう?領主もその事をわかってて、

赤字分は領主が持つから何としても家を持たせろって言われてたんだよ」


「確かに。あの2人は今やこの街のギルドでも実質トップクラスの冒険者ですからね」


「ああ、多分実質ナンバー1だな。2人ともあの強さは半端ない。

領主としちゃあ囲い込みなくなるのは当然だろう?

と言ってまともに正面から領主に仕えろって話しを当人にしても

あの調子だから断るに決まってる。もともと冒険者なんて浮き草稼業で

誰も領主の元になんかつきたくないだろうしな、

なので家を持たせることで間接的にこの街を拠点にさせたって訳だ」


「なるほど、わかりました。お二人もあの家を気に入ってくれたみたい

なのでこれで当面は安心ですね」


「ああ、まだ完全じゃないけどな。いずれにしても

あの2人の動向には充分注意しといてくれ。神獣の加護、

それも2匹から加護をもらってるなんて話は聞いたことがないからな。

俺はこれからちょっと領主のところに行って報告してくる」


 そう言うとギルマスのアンドリューはギルドを飛び出していった。


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