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第23話



 2人がギルドに併設されている修練場につくと、

そこには何組かの冒険者達が同じ様に訓練をしていた。

空いている場所に移動して、2人とも木刀を持って


「ここでやってみるか。 魔法は無しで」


「OK 」


 軽く準備運動を始める2人を見て


「おい、赤魔道士ペアがこれから練習するみたいだ」


「どれくらい強いのか、見させてもらおうぜ」


 修練場で練習していた他の冒険者がレン達に気づいて、

自分たちの訓練を止めて2人を見る。

そんな周囲の状況とは無関係とばかりに


「いつでもどうぞ」


 と言うレンに


「じゃあ、いくわよ」


 最初に突っかけたのはティエラ。木刀を右手にもって

横に払う様にしながらレンに向かっていく

その剣を自分の木刀で受けながし、返す刀でティエラに斬りかかるレン

お互いの木刀がぶつかる音が修練場に響いていく


「ちょ、ちょっと見えねぇ」


「何なんだよ、あの2人」


「私全く2人が何やってるか見えないんだけど?」


 周囲で見ていた冒険者達が唖然とするほど2人の動きは速く、

木刀同士がぶつかりある音だけが絶え間なく修練場に響いている。


 何度も木刀のぶつかり合う音がしたと思うと、

突然一刀の木刀が空を飛んで地面に落ちた。


「ズボンの効果は凄いな」


 木刀を持ったままのレンが言うと、

もう1本の木刀を拾いながらティエラが


「体感できるってレベルじゃないわね。

もう別次元の動きになってるよ。さぁ、もう1本いくわよ」


 言うと同時に再びレンに向かっていくティエラ

再び木刀のぶつかり合う音だけが聞こえて、

2人の動きは速すぎて見えない様になっていく


 いつの間にかレン達が修練場で練習しているってのを聞いて

冒険者が集まってきたが、彼らのほとんどがその2人の動きに

ついて行けずに声も出せずに食い入る様に見ているだけで


 2度目もレンがティエラの木刀を飛ばして終了


「何ちゅう速さなんだよ、あの2人は」


「あれでランクCは絶対に有り得ないわよ」


 動きが止まると周囲の冒険者達が口々に感想を言い合っているが、

誰もが目の前の2人の異次元の強さに感嘆するばかり。


 結局その後も立ち会いを続けて、4本目にティエラが

レンの木刀を飛ばすと周囲からおおぉと歓声が上がった


「あのレンの木刀を飛ばしやがった」


「ティエラってのもメチャクチャ強いな」


「お互いにあの動きが見えてるんだろう? 

ちょっと俺たちとはレベルが違いすぎる」


そんな周囲の声をよそに


「うーん、まだ4本に1本しか取れないじゃないの、

まったくレン、あんたどんだけ強いのよ」


「いやいや、こっちは全勝する予定だったんだぜ、

相変わらずいやらしい攻撃してくるよな」


 周囲の目をよそに訓練を終えてタオルで首や腕を拭きながら

談笑する2人。


「食事前にいい運動になったわね。ズボンの性能もわかったし。

さて、次は美味しいもの食べに行こ!」


 木刀を戻すと2人並んで、いつもの様にティエラがレンに

寄り添って修練場を出ていくその姿からはとてもついさっき、

人外の強さと速さで木刀を振り回していた2人には見えないほど

ごく普通のカップルの姿だった。



 翌日はしっかり休んだ次の日、2人は31階から挑戦を開始した

ズボンの素早さ15%アップの恩恵は大きく、複数を相手にしても

魔獣が仕掛けてくる前に倒せるので俄然殲滅スピードがアップ、

その日のうちに31階から32階までクリア。

 

 その後も順調にダンジョン内を進み、34階到達時にはレベルが49にアップ


 35階からはさらに1フロアのエリアが大きくなり、

1日で1フロアをクリアすることがせいぜい、

フロア内の安全地帯でのキャンプなどもあり2日で1フロアと

なることもあったが、それでも戦闘自体は危なげなくクリアしていき、

38階をクリアして39階の転送板に記録して帰還。


 休日明けの今日、39階から挑戦するためにダンジョンの入り口から

転送板で39階に飛んできた2人。37階から魔獣の強さが

頭打ちになってきたのを実感していた2人は


「おそらくここが魔獣のいる最後のフロアの様な気がする」


「ここクリアしたら、その下はたぶんボス部屋だよね」


 39階は壊れた宮殿の様な作りのフロアになっており、

天井はなく柱だけがフロアのあちこちに残っており、

その柱の向こうからオークキングクラスの獣人や、

空からはワイバーンが同時にレン達に襲ってくる。


「レンは前からくるのを。私はワイバーンを倒すから!」


 レンの後ろを歩いていくティエラの指示に基づいて

倒す敵を分けて順に処理していく2人

ティエラは魔法で空を飛ぶワイバーンを地上に落としては

片手剣で倒していき、レンはレンで魔法で倒しながら

片手剣で魔獣達の壁を突き破って進んでいく。

フロア攻略を開始して1時間がたったころ、ワイバーンを倒すと


 『レベルが上がりました』


 脳内アナウンスがあって。2人ともレベル50に到達した


「レベル50だ」


「なんか、身体が軽くない?」


「そうだな、それに力もまた出てきた気がする」


レンとティエラが全身して魔獣を倒しながら


「魔法の威力もまた一段とアップしてるよ」


「剣の切れ味も同じだ。これがレベル50の世界なのか」



 防具屋のエルフの女主人が言っていたが、赤魔道士はレベル40で

才能を開花させ、レベル50になるとその能力が1段、2段アップ

させると言っていたが、全くその通りで、2人はレベル50に

なることで、以前よりも更にパワーアップしてきた。


 こうなると39階のフロアの魔獣も彼らの敵ではなくなり、

無人の荒野を進むが如くにほとんど止まることなく現れてくる

魔獣を倒しては前進していき、そしてついに道の先に

40階に降りる階段を見つけた。


 ゆっくりと階段を降りていくと、予想通り階段の下には

転送板がなくて、その代わりに目の前に大きな門が見えた


「やっとここまで来たね」


 感慨深げに門を見上げるティエラに


「今回は各フロアをクリアして、初めてのボス部屋到達だ」


 レンも門を見上げて答える。2人でしばし門を見てから、

おもむろにティエラの


「じゃ、行きますか」


 の声で並んで門に向かっていく。門に近づくと勝手に門が左右に

開いていき、そのまま門の中に入っていく。

中に入ると背後で門が閉まり、そしてその前には大きな池があり、

その池の中央には石造りの橋が…そして池の奥、橋の先の奥には

大きな水色の水龍が2人をまっていたかの様にその身体を横たえていた。

これは戦闘になると挑戦者が圧倒的に不利になる部屋の造りだと

レンが思いながら正面の水龍を見ると、


「…リヴァイアサン」


 ティエラが思わず声に出したのが聞こえたのか、

リヴァイアサンは顔を持ち上げてこちらを見ながら


『待っていたぞ、フェンリルの加護を持つ冒険者よ』


 レン達の脳に直接語りかけてくる声…フェンリルと同じだと

思いながら2人ゆっくりと橋を渡って神獣に近づいていく。

近づいていくと、リヴァイアサンの周りに妖精が2匹いるのが

見えて、


「あの時の妖精たちかな?」


『そう、あの森で会った妖精だよ。ようやくここまで来たんだね』



 リヴァイアサンの周りを飛び回っている妖精を見てから

再びリヴァイアサンを見る


『なるほど、あのフェンリルが加護を与えるのもうなずけるわい。』


 首をあげて立っている2人の周りをゆっくり首を持ち上げて

回ってから元の位置に顔を戻し、


『このダンジョンの中でのお主らの行動はずっと見ておった。

テレポリングがあるにも関わらず毎回入り口まで戻ってから外に出たり、

また途中では冒険者を助けたり、冒険者の遺品を集めたり。

ただ肉体、魔法が強いだけではなく、心の中も強そうだ。

フェンリルがお主らを高く買っている理由がわしにも理解できたぞ。』


 どう返事をしていいかわからない2人はとりあえず

リヴァイアサンに一礼して


「神獣同士が繋がっているって、本当だったのね」


 ティエラの言葉に


『んむ。我らはいつも繋がっておる。知ってると思うがこの

ダンジョンはできて時間が経っているから、

過去に何組か冒険者が到達してきておる。

その内何組かは加護を与える資格がないと普通の戦闘になり、

残念ながら敗退していったもの達もおる、

勝って我が加護を与えた冒険者もおる。もっともそれも随分前の話しで、

最近はここまでくる冒険者もいなかったがの。


お主らは久しぶりの到達者じゃ。あ主らが最初にクリアした

フェンリルのダンジョンは最近できたもので、

かつ今この世で存在するダンジョンの中ではもっとも深く、

最も厳しいダンジョンじゃ。それに比べればここにはもっと多くの

人間が来てもよい筈じゃが、どうやら人間はダンジョンでの

試練を嫌がっておるみたいじゃの』


「でも、フェンリルの話は地上でも発表になったから、

これからはダンジョン挑戦者が増えるんじゃない?」


『なるほど。そうであれば良いがの。でないと魔人族には勝てんしの。』


「やっぱり魔人は強いのか」


レンが問う。


『そうじゃの、今のお主らなら彼ら1体が相手ならまぁ勝つじゃろう。

じゃが3体、4体となった時には厳しいかもしれんの』


 2人が顔を見合わせていると


『とにかく、最下層のここまで到達してきたのは見事じゃ。

フェンリルの加護があるとは言え、なかなか簡単ではないからな。

でじゃ、我もお主らに褒美を上げるとしよう。』


 そういうとリヴァイアサンの身体から光が出て

それがレンとティエラを包み込んだ。


『神獣の加護じゃ。今あるフェンリルの加護にリヴァイアサンの

加護も付け加えさせてもらった。これで神獣の加護がある武器や

防具の能力がさらにアップするはずじゃ。」


「じゃあ、私たちの防具や武器には今は神獣のフェンリルと

リヴァイアサンの加護があるってこと?」


 自分の装備を見ながらティエラが言うと、


『その通りじゃ。ついでにお主らのそのローブとズボンも

我の加護で強化しておいたぞ。なかなかよくできた防具じゃが、

その能力の限界値をあげておいたのでもっと

優れたものになっておるだろう。

あと、ローブとズボンに自動温度調節の機能をつけておいた。

これで寒いところや熱いところにいっても大丈夫じゃ』


「それは有難い。というかそんなにしてもらってもいいのかな

という気持ちだ」


 レンが今の素直な気持ちをそのまま言うと


『気にせずともよい。お主らは自分たちが思っている以上に

強い冒険者であり、我ら神獣が強い冒険者に協力するのは

当然の事じゃからな』


「強いとは思わないけど、でも、ありがとうございます」


 ティエラがリヴァイアサンに向かって一礼して謝意を示し、

レンも軽く頭を下げた。


『あと、ついでにこれを持っていくがよい。

人間には人気があるらしいからの』


 そう言って身体を震わせると、レン達の目の前に

リヴァイアサンの鱗が10枚程落ちて


「この大きな鱗、貰っていいの?」


 リヴァイアサンは頷きながら


『遠慮せずに持っていくがよい。我にとっては些細なものよ。

ところで、お主らはこのダンジョンをクリアしたあと、

次はどこにいくのか決めておるのか?』


 逆に聞かれて


「いや、何も決めてない。とにかくこのダンジョンをクリアすることに

専念してたから、クリア後の事はまだ全く何も決めてない」


 レンが答えると、


『では、我から一つ場所を教えてやろう。』



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