第22話
「ところで、ティエラはどうして俺が練習場にいるって知ったんだい?」
勝負が終わって2人でギルドを出て大通りを歩きながらレンが聞くと、
「換金してくるって出ていってなかなか帰ってこないから、
どうしたのかなと迎えに行こうと思って宿の前に出たのよ
そうしたら今からレンが王都から来た
冒険者と決闘するって話しを聞いて飛んできたって訳」
「そうか。あっ、あの爪1つ金貨5枚。3つあったから金貨15枚になった」
「そんなに高く売れたの?」
レンは爪が上位のスコーピオンのものだったこと、
その爪が滅多に出回らないので練金術師向けに
高価で売れることなどを説明する
「じゃあ、今晩はちょっといいところで食事しますか」
レンの左腕を自分の両手で抱きしめて、
寄り添って歩くティエラの言葉に
「そうしよう。食える時にいいものを食おう」
そのまま2人は夕暮れの街の雑踏の中に消えていった。
「レン、正面のをお願い。私は左のスコーピオンの相手する。」
「わかった」
翌日再びの砂漠に突撃していった2人。砂が固められた道を進んでいくが
昨日の砂漠よりもここ20階の方が圧倒的に魔獣の数が多く、2人がほぼ休みなしに
魔獣退治をしながらゆっくりと進んでいた。
正面からリザードマン、左のスコーピオンを倒して少し進むとまたスコーピオンが
2体2人に襲いかかってきて、それをフリーズと剣のコンボで倒し、
「倒しても倒しても後から湧いてくるみたい」
「結構やっつけてるからこの階でレベル上がるかもしれないぜっと。」
リザードマンを一刀両断にしながらレンが答え、砂漠を進んでいくと
「オアシスが見えた!」
2人の先にオアシスが見えてきた。太陽はすでに西に傾いていて
「とりあえずあそこまで行って、そこでキャンプだな」
オアシスの入り口付近には昨日の様なロックゴーレムはいなく、
すんなりオアシスに到着する2人。
「このフロアに来るってことは昨日のロックゴーレムは処理
できているってことだからここは何もなくすんなり到達させて
くれてるのかもね?」
ティエラの言葉に同意しながら一応オアシスの中も探索するも、
赤い点は現れず昨日と同じ様に池を半周まわったところ、
椰子の木が群生している木の根元の芝生が生えている場所にテントを張り、
レンは池の水で顔を洗いながら、
「朝からずっと、ほぼ休みなく戦闘してるから、流石に疲れたな」
「本当ね。今日はここのオアシスで泊まりだね」
「ああ、もう夕方近くになってるし。明日のこと考えたら
ゆっくり休んだ方がいいよな」
オアシスで夕食を終えた2人は昨日の様にシャツを暖かくし、
テントも暖かくして眠りについた。
翌日、日の出と共に活動を開始した2人は砂漠を歩き、魔
獣を倒してその日の夕刻に下層に降りる階段に到達。
その後一旦街に戻り翌日は休息、そしてまたダンジョンに
挑戦というのを繰り返しようやく30階に到達。
2人のレベルは48になっていた。
30階に到達し板に記録して地上に戻り、街に戻ってきた2人
ダンジョンでの討伐の報告と報酬を受け取りにギルドに顔をだすと、
そこにいた冒険者達の視線が一斉に2人に注がれる。
先日の決闘以来レンの強さはギルドでも有名になっていて、
そのレンといつも一緒にいるティエラもレン同様周囲から
一目置かれる存在になっていた。
もちろん、2人のことを知らない、レンの決闘の後にこの街に
やってきた冒険者もいて、周囲がレンとティエラを見ているのを見て、
同じテーブルの冒険者に、
「なんだい?あの2人。ここのみんながあいつらを見てるんだけど?」
「お前、あの2人を知らないのか?最近ここに来たのかい?」
「ああ、王都から昨日の夜着いたんだよ。」
「王都から? じゃあそっちのギルドにいたランクB、
レベル55の戦士のシールっての、知ってるかい?」
「もちろん、王都でも腕が立つ戦士だってちょっとした
有名なやつだったからな。」
「その腕が立つって奴をあの男の方、レンって言うんだが、
あいつがシールって奴とその仲間たちに決闘を挑まれて、
10秒で3人共のしちまったんだよ」
「10秒で3人とも?嘘だろ?」
「本当さ。ギルドの修練場でギルマス立会いでの決闘でさ、
始まったと思ったら終わってたぜ。見ての通り、あいつら2人赤魔道士だ。
ランクはCでレベルは47って言ってたけど、今じゃ1つ2つ
上がってるかもしれんな。とにかく圧倒的な力の差だった。
レンの剣捌きはほとんどのやつが見えなかったんじゃなかな」
「赤魔道士?じゃああいつが例の神獣の加護を受けたって奴か」
「そう。その隣の美人の女、あいつもレンと同じくらいの
強さだって話しだ。当然あいつも神獣の加護を受けてる」
「噂は王都でも聞こえてたよ。ベルグードにはとんでもない
赤魔道士ペアがいるって。あいつらのことか」
王都から来た冒険者は納得した様にカウンターで受付嬢と
話しをしている2人を見ながら
「あの年で赤魔道士でレベル47かそれ以上? 半端ねぇな」
「間違ってもからむなよ。外見に似合わずメチャクチャ強いからな」
そんな話がテーブルでされているとは知らずに報告、報酬を受け取った2人は
踵を返して並んでギルドの中を歩くと、気心の知れた冒険者から声が掛かる
「ティエラ、どうだった?やっぱきつい?」
「きついよぉ、レンがあんまり休ませてくんないし、ダンジョンなのにさ、
砂漠とかあるのよ。身体は汗でベトベトになるし…」
「レン、レベルはいくつになったんだよ?」
「48になった。結構倒してるんだけど、なかなか上がらなくてさ」
というやりとりがあったり、しばらく知り合いとくだらない話をしたりして、
じゃあなとレンは片手をあげて、ティエラは女冒険者に手を振りながら
ギルドを出て行く。
2人が出ていったあと、ギルドの中では、
「あの2人、本当に仲いいよね。いつも一緒にいるし」
「ねー しかも2人とも強いしさ」
「なんかいいよね、ああいうのって」
「ちょっと憧れるよね」
女冒険者達の中でも2人は有名だった。
ベルグードの定宿である<山花亭>に戻ると受付の女の子が
「エルフの防具屋さんから伝言が来てます。
時間があったらお店に来てくれって」
「何かいいものが入ったのかな、レン、行ってみよ」
伝言を受けた女の子にお礼とチップをあげて2人は宿の前から
そのまま防具屋にむかった
「早かったね。あんたらにちょうどいい物が手に入ったから
いの一番に教えてやろうと思ってさ」
エルフの女店長はそう言いながら奥から両手に持ってきたのは
「ズボンだよ。昨日田舎のエルフの森から届いたんだよ」
手渡されたのを手に取る2人、レンは足首丈の普通のズボン、
ティエラは膝丈のキュロットスカートになっている
手に取ったのを見ている2人に
「見てわからないだろうけど、このズボンとスカート、
どちらも素早さ15%アップの魔法が付与されてるのさ」
「15%?」
「じゃあ、この靴の5%と合わせて20%アップになるってこと?
凄すぎない?」
「そうなるの。今以上に攻撃の手数が増えるし、
相手の攻撃も躱しやすくなるかの」
「ひょっとして、私たちのためにエルフの森の人に
お願いしてくださったの?」
「まぁ、その辺は聞かずともよかろう。とにかくお前さんたちなら
使う資格があると思っての。 もちろんそのズボンもローブと同じで
自動修復機能はついとるからメンテフリーじゃ」
手に取っていたズボンをじっと見ていたレンは、
エルフの主人の方を向いて丁寧に一礼して
「本当に助かる。ありがとう」
ティエラも合わせてお礼を言うと
「こっちも商売だからね。2本で金貨15枚で売ってあげるよ」
「それって安すぎないです?」
ティエラが心配して言うが
「なぁに。しっかり利益は出てるから気にせんでも大丈夫じゃ。
それに今一番有名な赤魔道士の2人が私の防具を
身につけてくれてるってのが嬉しくてね」
「じゃあご期待を裏切らない様にこれからも頑張ります」
ティエラがお金を渡しながら言うと
「ああ、しっかり精進して上を目指しておくれ。」
ニコニコしながら激励するエルフの女主人にお礼を言って店を出ると
「それにしても靴とスボンで20%アップか。考えれば考えるほど凄い装備だよな」
「うん、本当ね。それに、この街の人ってみんな親切でいい人ばかりだよね」
「だよな。みんなの期待を裏切っちゃだめだよな」
そんな話をしながら旅館に戻る2人 部屋に戻ってズボンを履き変えて
「ちょっとどれくらい効果がアップしてるか、
ギルドの修練場で確認してみるか」
「うん、それがいい。行きましょ」
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