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第21話


 外に出てみると、時刻は昼ごろで、そのままテレポリング

でベルグードの街に戻ってギルドに顔を出すと、

顔見知りの冒険者から


「今日は遅めのご出発かい?」


 声をかけられると、


「いや逆だよ。今ダンジョンから戻ってきたのさ。

そっちはこれからかい?」


「ああ、今日は移動して明日から本格的にな」


 そんなやりとりをして受付にいくと、時間も時間なのか

暇そうにしている受付嬢にギルドカードを見せて

報酬の清算をする。

ティエラは砂漠の砂が身体や服についてるのが気になるのか


「早くお風呂に入りたい」


ばかり言っていたので、清算を済ますと早々に宿に戻ることにした

部屋に戻ってティエラが風呂に入ろうとした時に思い出して、


「そうだ、ドロップアイテムの換金忘れてた。ちょっとギルドに行ってくる」


 とティエラに声をかけてレンは1人で宿屋を出てギルドに向かった。

ギルドに入って受付に行くと、清算をしてくれた受付嬢が


「何か忘れ物ですか?」


「ああ、ダンジョンでドロップしたアイテムの換金を忘れてたよ」


 レンがカウンターに”爪”を3つ出すと


「これって、スコーピオンキングの爪じゃないかしら。

ちょっと待っててくださいね」


 受付嬢が奥にいるギルドの鑑定職の職員に爪を渡して戻ってきたところで、

レンが


「スコーピオンキングってスコーピオンの上位魔獣か? 

俺たち倒してないけど?


「魔獣を倒して落とすアイテムは討伐した、

しないに関係なくドロップする様です。」


 受付嬢の説明に、


「なるほど、わかった。」


 しばらくすると職人がメモを持って戻ってきて


「鑑定が終わりました。やっぱりスコーピオンキングの爪でした。

この爪は練金術師が欲しがっているもので需要が多いんです。

状態も良いので、1つ金貨5枚で買い取ります。3つで15枚ですね」


「そんなに価値があるものなのか」


「普通のスコーピオンの爪でしたら1つあたり銀貨500枚ですけど、

これは滅多に出ない上位の爪なのでそれくらいの価値ありますよ」


 受付嬢から代金を貰ってギルドを出ようとしたところで


「おい、お前が赤魔道士ででかい顔してるっていうレンとか言う奴か?」


 声のする方を振り返ると見たことがない男の3人組がレンに

声をかけながら近づいてきた。

ギルドに併設している酒場にいた連中も何事かと一斉にこちらを見ている


「でかい顔はしてないつもりだが、俺がレンだが。何か用かい?」


「なんだよ、もっといかつい野郎かと思ったら華奢で

弱そうな奴じゃないかよ、本当にこいつが神獣の加護を受けた

今一番乗ってる冒険者なのかい? 

だとしたらこの街の冒険者も大したことないな」


 3人組のもう1人がレンを見ながら挑発する様にいうと、

酒場にいたこの街の冒険者が椅子から立ち上がって


「てめぇら、好き勝手言いやがって」


 声を張り上げながら近づいてくる、その男を手で制して


「俺は、俺に何か用か?と聞いてる」


「俺たちは昨日王都から来たんだけどよ、この田舎のギルドで

偉そうにしてる奴を叩きのめしたら俺たちが一躍有名になるって算段でな。

そのためにはこの街で一番有名って言われてる奴を叩きのめすのが

一番だと思って、聞いたら出来損ないの赤魔道士が一番乗ってて

有名だって言うじゃないか。それがてお前だっていうから俺たちが

王都のレベルの高さを教えてやろうと思ってわざわざ

声をかけてやったってわけよ。ちなみに俺たちは全員レベル55の

Bランクだ。まだ上位転生はしてないけどな」


 酒場にいたこの街の冒険者たちが殺気立って立っているのを抑えながら、


「自分が有名かどうかは知らないが、あんたらは今言っては

いけないことを2つ言っちまったんだよ。1つはここを田舎ギルドと

言ったこと、もう1つは俺のジョブを出来損ないと言ったことだ。

俺はランクCのレベル47だ。あんたらの勝負、受けて立つよ」


 周りからレンやっちまえという声がする


「で、どこでする? こっちは街の外で真剣勝負でもいいぜ。

本気でいかせてもらう」


 レンが低い声で言うとギルドのカウンターの奥から


「レン、いくら冒険者同士の喧嘩にギルドは関与しないといっても

聞こえたものは黙っていられない。うちの修練場で模擬武器でやれ」


 見るとギルマスのアンドリューがカウンターから出てきていて


「そっちの3人組もそれでいいな? ギルドマスターの依頼が

聞けないってことはないよな」


 その迫力に押されたのか、


「あ、ああ、俺たちもそれでOKだ。要はこいつを

ぶちのめせればいいんだからな」


「じゃあ今から修練場で模擬戦だ。審判は俺が勤め(務め)よう」


 ギルマスのアンドリューがいい、彼に続いてレンと

3人組がギルドの裏にある修練場に向かう


「おい、レンが王都から来たランクB、レベル55の3人組と

今から模擬戦するらしいぞ」


 その話はあっという間に広がって、修練場には大勢の冒険者が集まってきた。

その中にはこのベルグードの冒険者もいれば、

最近のギルドの発表を聞いて地方からやってきた冒険者もおり、

修練場はすぐに大勢の観客で埋まってしまうほどで。


 ここ修練場にある武器は致命傷とならない様に刃は潰しているものの、

それ以外は普通の武器と同じゆえ、

当たりどころが悪ければ大怪我することもある。

レンが模擬武器の片手剣を手に取ると、相手は両手斧、

槍、片手剣をそれぞれ手にとった。

最初に声をかけてきた男が両手斧、それと槍を持った男、

この2人が戦士職の様で片手剣を手に取った男はナイトジョブの様だ。


「1対3はいくらなんでもレンが不利だろう? 

それで勝っても自慢できないしな。どうする?そっちも1人代表を出すか?」


 ギルドマスターの提案に


「俺は同時に3人相手でも大丈夫だぜ。命の保証はしないけどな」


 冷めた表情でレンが答えると


「ふざけやがって」


 今にも斧を持った男が飛びかからんばかりの格好で大声を出していると、


「レン、手加減せずにやっつけちゃえ。倒れた人はあとでちゃんと

私が回復してあげるから思いっきりやっちゃっていいよ。」


 ふと見るといつ来たのかティエラが観客席から声を出して手を振っている。


「俺の相棒もそう言ってるから、ギルマス、

せっかくだが1対3で本気で行かせてもらうよ」


「そこまで言うならわかった。好きにしろ。 

勝敗は武器を手から離すか、参りましたという宣言するか、

あとは私の判断で決する。いいな?」


 両方が頷く。観客席で見ている冒険者の中には噂は聞いているが

レンが本当にどれほどの技量を持っているのか目の前で見られると

興奮している奴が多く、ギルマスの合図を今か今かと待っている。


「では、これより勝負を始める。はじめ!」


 ギルマスが宣誓して練習場の中でウォーという声が上がったと思ったら、

もう次の瞬間には勝負がついた


 3人が一斉に武器を持って向かってきたのを見たレンは弱めの

サンダーで槍持ちの男を吹っ飛ばして背後の壁に直撃させて…

当然槍は手から落ちた… そのまま2人の間に突っ込んで片手剣で

同じ片手剣の男の剣を弾き飛ばし、振り返りざまに

斧を持っている男の腹に片手剣を打ち込んで前のめりで

地面に叩きつけてその首筋に自分の片手剣を当てた。 

その間僅か10秒程。


 レベル55、ランクBか何だか知らないがこいつら弱い、

弱すぎる。とレンが思っていると。


 練習場がシーンとする中


「勝負あり。勝者レン」


 ギルマスが宣言すると練習場には観客席より大きな声が響き渡った


「つえー」


「想像以上だ。メチャクチャ強いじゃないかよ。あっという間だったぜ」


「俺、レンの動きがよく見えなかったよ」


「私も、魔法で1人飛ばしたところを見てたらもう終わってた」


「レベル47って嘘だろう? それとも赤魔道士を極めてくるとああなるのか?」


「ランクAくらいの実力あるんじゃね?」


「今ランクCだろう? まだどんだけ伸び代あるんだよ?」


 観客席の冒険者はレンの予想以上の強さに驚嘆している。

そう、これが赤魔道士の本当の実力なのだ。

赤魔道士はレベルが40に到達すると一気にその力を開花させ、

レベル50になるとさらにもう一段、二段と力が開花するジョブになっている。


 しかしながら過去、多くの冒険者は赤魔道士のレベル上げで

最も辛い20台、30台の時に挫折あるいは年を取って引退に

追い込まれていき、次第に赤魔道士が冒険者から敬遠される

ジョブとなっていった。


 もう長くの間レベル40に到達した赤魔道士がいなかったので

このジョブの真の力を知っている者もほとんどいない状況になっていた。



 一方レンは片手剣を倒した斧を持っている男の首に当てたまま


「このギルドと俺のジョブをバカにしたことをここで謝れよ」


「…す、すまなかった。謝る」


 男は立ち上がって斧を地面に置いて手を出しながら


「俺はシール。王都からやってきた冒険者だ。

数々の非礼については謝る。申し訳ない。 

それとそこで倒れているのがジム、レンのサンダーを食らったのがエルスだ」


 頭を下げ、差し出された手を握りながら男の謝罪を受け入れるレン。


「それにしても想像以上の強さだった。流石にいまここで

一番乗りに乗ってる赤魔道士だ。

動きが全く見えなかったぜ、レン」


「こっちも槍持ちの男にちょっとやりすぎたかもしれん、

申し訳ない」


 レンが言うと、そのタイミングで、


「レン、あんたやりすぎよ、この人痙攣してるわよ、もぅ」


 ティエラが観客席から練習場に出てきて、

サンダーで飛ばされて痙攣している男にヒールをかけている


「もうちょっと強かったら死んでたわよ」


「いや、魔力かなり落としたつもりなんだが…」


「加減ってのを知りなさい、加減ってのをね。

相手は魔獣じゃないんだから」


 ティエラに怒られて恐縮しているレンは先ほどまでの強さなど

微塵も感じさせないごく普通の若者の様で、

槍を持っている男を治療しているティエラを見ながらシールに、


「あいつが俺の相棒。あいつも俺と同じくらいの強さだ」



「なるほど。それじゃあ2人だけでダンジョンに挑戦

できるのも当たり前の話しだな。いや俺たちも王都ではそれなりに

名前が売れてたんで、こっちでもなんとかなるだろうと思ってたけどよ、

考えが甘かったよ。明日からのダンジョン攻略前に

ここの冒険者のレベルを知れてよかったぜ」


 シールが治療しているティエラを見ながら言、

そしてギルドマスターの方を向いて


「ギルドにも迷惑かけた。申し訳ない。」


 と詫びを入れると、ギルマスは頷きながら、


「これで勝負は終わった。お互い後腐れないな」


ギルマスが言ってこの場での模擬戦はお開きとなった。


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