第2話
レンが今いる辺境都市は王国の首都である王都からは
遠く南に離れたところにある辺境伯の領
その領地地の中では最大の都市、
ベルグードと呼ばれる都市である
この都市は南にある高い山脈の向こう側にある
魔族の国と国境を接しており魔族が万が一侵攻
してきた際には最初の砦として魔族の侵攻を
食い止める役割を担っている。
でもここ数十年は魔族が山脈を越えて
こちら側に来たという事件はなくどちらかといえば
平和な状態が続いている。
とはいえ万が一敵が侵攻して来た際の最初の
ターゲットとなる都市には変わりはなく、
そのことからも辺境伯はいざという有事に即戦力となる
冒険者を歓迎する方針を打ち出しており、
地方都市にしては冒険者の数は多く街も活気にあふれている。
冒険者から見てもこのベルグードのある辺境地区は
低レベルから高レベルまであらゆるモンスターが
存在しており、また迷宮と言われる地下ダンジョンも
ベルグードの周辺にいくつも存在しているので彼らにとっても
美味しい狩場となっており、この街に冒険者の数が多いのも
頷けよう。
クエストを終え、1泊銅貨20枚の宿の部屋に戻ったレンは
宿の1階で夕食をとったあとは部屋に戻ってベッドに
腰掛けながらいつもの鍛錬を始める。
リラックスして全身に魔力をいきわたしてから指先に光を灯し
魔力を調整しながらその光を大きくしたり、明るくしたりと魔力を
自由に扱える訓練を行う。そのあとは回復魔法、強化魔法の練習を
たっぷりしてからベッドに横になった。
冒険者になってほぼ毎日薬草取りのクエストを行なっていたレンは
今日も集めた薬草をカウンターに持ち込むと、受付嬢のキャシーが
「今日も状態のいい薬草ね」薬草を受け取り、
クエストの代金をレンに渡しながら
「今日のクエスト達成でレン君のランクがEにアップしたわ。
おめでとう。ギルドカードを書き換えるので渡してくれる?」
「おっ、意外と早かったな」
言いながらカードを渡すとキャシー
(最初にレンの冒険者受付を担当した受付嬢)が
カウンターの下でごそごそと作業してから
「はい。これがEランクのカードよ。Eになると討伐クエストが
できる様になるけど無理しないでね」
FからEに書き換えられたカードを受け取ったレンは
そのカードを見ながら
「じゃあ早速どれか討伐クエスト受けるかな」
キャシーに言いながら掲示板を見ようとすると
「もう受けるの?じゃあまずはこれなんかどう?」
と勧めてくれるのを見ると
ーゴブリン討伐 最低5体。討伐部位は耳、魔石は買取可ー
「本当はスライムあたりからスタートするのがいいんだけど、
あいにく今スライム討伐は無いのよね。レン君のその剣結構
良さそうだからゴブリンでもいけると思うよ」
キャシーの視線が腰にある片手剣に注がれる。
その剣は冒険者になるときに父親が昔使っていた剣を
くれたもので、剣のランクはA。
(ゴブリンのレベルはLV9-11程度だったか。
最初にはちょうどいい相手だな)
そんなことを思いながら
「じゃあこのゴブリン討伐をやってみるか」
「期限は3日だから。それを過ぎると罰金が発生するから
気をつけて」
ギルドを出たレンは直ぐに外に出ずにまずは道具屋に行き、
そこでポーション、MPポーションを購入
準備はしっかりしておかないとな。いつ、どこで何が起こるか
わからないのが冒険者だって母さんも言っていたし。
両親が冒険者で、冒険の心得をしっかり教え込まれている
レンはまた、赤魔道士がどういうジョブかを理解しており、
冒険者になって、たちまち自分が強くなったと自惚れるわけでもなく
しっかり自分の足元を見て行動することができるだけの
心の強さも持っている。
薬品の他に水、軽食を買ってそれらを袋にいれてから
ようやく門から外にでる
ゴブリン退治か…田舎で父さんと一緒によく狩ったな。
あの時は後ろに父さんがいると思って気楽にできたけど、
一人になってあの時の精神状態で狩れるか…。
しかしソロでやると決めた以上、ゴブリン退治程度で
ビビってたら先が思いやられるな
よし、いっちょやったるか…
鞘から剣を抜いてゴブリンの生息地域である森の中に入っていく
周囲を警戒しながらゆっくりと森の中を進むんでいると少し先の草むらが周囲と
違う揺れ方をするのを見て剣を構えながら近づいていく
近づくとゴブリンが1匹こちらに背中を向けながら地面に落ちている何かを集めているのが
見えて、背後から近づいてそのまま一気に片手剣を振り下ろす!
「ギャッ」という叫び声とともにゴブリンの首が胴体から離れてその場で絶命した
父さんのこの剣、相変わらずの切れ味だ。
と思っていると脳内で
『レベルが上がりました』 の声が。
そうか、冒険者になってレベル上限のリミッターが外れたんだな
自分のステータスを頭の中にだすと確かにLV11となっていて
それを確認してから
討伐部位の耳を切りとり、胸の魔石を取り出して
まずは1匹
その後その周辺を探っているとこちらに歩いてくるゴブリンを発見
今度は魔法でやってみるか
木の陰に隠れて近づいてくる音を聞いていて
<<サンダー>>
剣を持っていない左手から稲妻が飛び出してゴブリンの頭を直撃
一発で倒せたか…この様子だと3匹くらいまでなら対応できそうだ
その後も森の入り口付近を周回して剣、魔法の交互を使って結局7匹のゴブリンを退治して
全てのゴブリンから討伐部位と魔石を取り出してこの日の狩りは終了
街道に出て歩いて街に向かいながら
他のジョブなら7匹も倒せばもう1つ位レベルアップしたんだろな
翌日も同じ様にゴブリン討伐
剣と魔法を使い分けながら危なげなくノルマクリア
相変わらず魔法一発でゴブリンは沈むものの、魔法のリキャストタイムがあり
連続で魔法が打てないので、剣をうまく使って魔法のリキャを待ちながらという
スタイルにして討伐がずっと安定してきた
そしてゴブリン討伐クエを受け始めて3日目の最後のゴブリンを討伐した直後
『レベルが上がりました』 の声が
目を閉じて脳内に浮かんだステータスを見てみるとLV12 となっている。
上がりが遅くても、上がらない訳じゃないからな、いつかは絶対に上がる
ここでしっかり戦闘の基礎を身につけておけば上のレベルに行ったときも
困らないだろう
今ある状況をポジティブに捉えるレン
赤魔導士を選んだ時からレベル上げが辛いとわかっていたが、レンはむしろ
今の状況を楽しんでいる様で、ゴブリンを倒しながら試行錯誤しながら
色々と自分の攻め方、スタイルを探っていた。
レンがゴブリンを討伐してレベルが上がった頃、ギルドの中では
ポツポツとレンの事が話題になり始めていた
—赤魔道士で登録してやつがいるらしい
—当然ソロだよな
—でも、どうして赤なんて不遇ジョブ選んだのかしら
ー物好きな奴もいるもんだ
何も知らないレンが帰ってきたのはちょうど話題になっていたタイミングで、
ギルドの扉を開けるとそこにいた冒険者たちがレンに視線を送りながら
--ほらっ、あいつだよ、赤魔道士
—ローブに片手剣だぜ、あれが赤魔道士のスタイルなのかよ
—あらっ、結構いい男じゃないの。
ーお前はいつもそれだよ!
声を聞きながらカウンターにいる犬族の女性に今日の成果を渡し、
銀貨1枚と銅貨40枚を受け取っていると、隣に座っていたキャシーが
「レン君、レベル上がってる?」
「ああ、今日12になった
「おめでとう。その調子で頑張ってね」
「ああ、まだまだ道は遠いけど 急ぐ必要もないしな、のんびりあげるよ」
周囲のどちらかと言えば好奇な視線を浴びながらギルドを出て定宿に戻っていった
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