第19話
レンとティエラはLV46になってからはダンジョンの進行を一時的に中断し
今はダンジョン内の18階に居座って、そこでレベル上げをしている
18階はやはり洞窟のフロアなのだが、出てくる魔獣が
ストーンゴーレムのみである。
このストーンゴーレムは文字通り石でできている魔獣で
高さは3メートル前後、両手両足を切られても周囲の洞窟の壁から
砂を取り込んで再生してしまう普通であればやっかいな魔獣であるが
常に1体でしか現れてこないので2人組の彼らにとっては
安全に狩れる獲物という認識になっている。
2人はストーンゴーレムの討伐方法として、ティエラもしくは
レンがストーンゴーレムに近づいて彼らの腕を振り回す攻撃を
避けながら両足を切断する。するとストーンゴーレムが
再生するまで一瞬ストンと落ちたところを片手剣で首と
胴体を切断して倒すというやり方と、
もう一つはフリーズを足元に撃ってストーンゴーレムが
滑ったところをその首を切るというやり方で倒している。
18階に降りた階段からそれなりに進んだところにある
小部屋の様になっている洞窟の通路が奥にえぐれている場
所をキャンプ地にしてその周辺に湧く魔獣を相手にレベルあげしている2人。
「レン、次右からくる」
「ティエラ、魔法撃って」
「レン また右から 今度は私が先に足を落とすから後よろしく」
「了解」
ここにキャンプを張った頃よりもずっと効率的に
倒すことができる様になってまた、このキャンプの場所には
ゴーレムが近づいてこないということもわかったので
2人は適当に狩ると、休憩し、また狩るということを繰り返していて…
今もキャンプにしている場所で岩場に座り、水を飲んでいる
「だいぶ慣れてきたね」
「そうだな。できればここでレベルを一つ上げて
47にしたいところだけどな」
「そうね。47になるまで頑張りましょう!」
そうして休憩を終えると再び洞窟内のゴーレム退治にでかけていく2人
結局このフロアで2泊してレベルを47まで上げて、そのまま洞窟を進んで
19階に降りる階段を見つけて、降りきって転送板に記録した。
記録した2人は次に攻略する19階を見ながら…
「19階はまたこれは… 一旦戻って準備が必要だ」
「上で森があったと思ったら、ここは…砂漠なのね。
本当にダンジョンってなんでもありなのね」
そこは一面砂漠で、道すらないフロアになっていた
「相当暑いだろうから猛暑対策してこないと、
それと…キャンプができる場所なんかあるのかな。
フロアの広さが見えないからキャンプする用意もしっかりしないと」
「砂漠の中から突然魔獣が出てきそうね」
「ああ、絶対出てくるぜ、サンドワームとかスコーピオンとかさ」
「だんだんといやらしくなってくね」
ティエラがそこにいるだけで暑いという風に手で顔を仰ぎながらいうと、
「それだけ最下層に近づいているってことにしよう。
さてここにいるだけで暑いし一旦出ようぜ」
レンがいい2人で転送板を触ってダンジョンの1階に経由で地上に出た
入り口にいるギルドの受付の横にある水晶版にタッチしながら
「何階まで行った?」
「18階まで。 だんだんきつくなってるよ」
「そうだろうな。無理すんなよ」
そんなやりとりをしてからいつも通りテレポリングで
ベルグードの街へと帰還した
戻ってギルドで討伐記録を提示して報酬を受け取り
「明日はダンジョンやめて 対砂漠用の道具集めだね」
ティエラが言うのに同意して頷きながらギルドを出ていく
その後、2人で食事をしてから部屋に戻り、風呂に入ると
2泊キャンプした疲れをとるためにこの日は早々に部屋の明かりを消した。
遅い目覚めの翌日、朝食をとると2人でいつものエルフの防具屋に向かった
「こんにちは」
「おや、いらっしゃい。何か買うものができたのかい?」
店の奥からいつもの店主のルフィーが出てきて2人を迎えながら、
「ええ、砂漠用の装備を揃えようと思って」
「ダンジョンの中の砂漠エリアか。ちょっとこっちにおいで」
店主について店の奥に行くと、奥の一角を指差し
「ここが砂漠用の防具を置いているコーナーだよ ゆっくり見ていっておくれ」
2人で陳列されている防具を見る
「この帽子なんかいいんじゃない? ひさしが大きくて帽子全体に
あるから日除けになるし」
帽子をかぶりながらティエラが言うと、それを見たレンは一言、
「いや、それは駄目だな。ひさしが大きすぎて視界が悪くなる」
「う〜ん、言われてみればそうか」
未練そうに帽子を手に持っているティエラに
「戦闘にはむかないけど、普段かぶるぶんにはいいんじゃないの?」
「やっぱりいいや」
帽子を棚に戻して、陳列を見ながら、
「猛暑対策品って結構あるのね これはなに? 砂漠用?」
ティエラが手に取ったのを見て、店主が
「ああ、それは良いものだよ。」
ティエラが手に持っているのはローブの中に着るただのシャツに見えるもので
「それは見ての通り、ローブの中に着るシャツなんだが、このシャツは魔力を
通しやすく、魔力を比較的長い間貯めておくことができる様になっていてね、
あんたら2人は魔道士だから魔力はあるだろう?」
聞かれて2人が頷くと
「このシャツを着て、シャツに触れながら魔力を流すと冷えたり温まったり
するんだよ」
「へぇ〜」
「冷えるのはいいけど、温まるってどういうことよ?」
レンの疑問に対して、
「砂漠ってのは暑いイメージがあるけど、夜は逆にすごく冷え込むんだよ
昼と夜との気温差が大きくてね。なので暑さと寒さの両方に備えないと
大変な目にあっちまうんだよ」
「なるほど、じゃあ、このシャツ着てると昼は冷やせて、
夜は温められるってことかい?」
「そうそう。魔力の量にもよるけど、半日くらいは持つから、
切れたらまた魔力を補充してやればまた使える。
洗っても大丈夫の優れものさ」
「それは便利ね、それに砂漠以外の普段も使えそうじゃない
夏とか冬とかさ」
「確かにそうだ」
結局そのシャツ2枚と、戦闘に支障がない大きさの
ひさしが付いている帽子を買った。
「次は水と食料だ。出来るだけ短時間で砂漠は抜けたいけど、
広さがわからないから念のために3、4日分持っていくか」
「まぁ私たちはアイテムボックスがあるから重さや量は気にしなくても
いいってのは助かるよね」
商業区の中の店屋で水や食料を買ってとりあえずの砂漠対策の
買い出しを終えた2人がブラブラと泊まっている旅館に向かって
あるいていると、
すれ違った冒険者が あっ! っと言い
「先日はありがとうございました」
といきなりお礼の言葉がして、声をした方を見て、
どこかで見た顔だなとレンが思っていたら、隣のティエラが
「あら、あのトレントの森にいた冒険者の人ね」
「そうでず、スズです。あの時はお世話になりました」
確かによく見るとあの時、助けた冒険者の中でレン達に
事情を説明していた女性だと思い出した
「それで、怪我してた彼はもう元気になったの?」
通りの端に寄ってから、ティエラがスズに聞いてみると
「ええ、あの後ダンジョン出たところの治療院に連れていって
みてもらったら幸い内臓とかは無事で、
そのままこの街に戻ってきて、2、3日病院で寝たら退院できました」
「よかったじゃない」
「本当にありがとうございます」
「今回の1件で懲りたのなら、もう無茶してはいけないって
わかったんじゃないか?」
「彼も相当懲りたみたいで、今は完全復活まで休養してから、
もう一度低層からあのダンジョンに挑戦する予定です」
「そうか、お互いに頑張ろう」
「こちらこそ。それより今この街で有名な赤魔道士ペアさんに
助けて貰ったって自慢できます!
「何だそれ?」
「ゆ・う・め・い・な赤魔道士ペア?」
レンとティエラがポカンとしているとスズが
「知らないんですか? 今この街で最も勢いのある冒険者の
赤魔道士ペアって有名ですよ?
青いスカーフを首に巻いているペアルック。
高そうな片手剣とローブの2人って。不遇ジョブ、
あっ ごめんなさい、でもそう言われていて、
不遇ジョブの赤魔道士で若いのにもうLV45になってて、
しかも神獣の加護を貰っているランクCの赤魔道士ペア。
すぐにでもランクBやランクAまで昇っていくんじゃないかって」
「なんかえらい事になってるな、ティエラ」
「うん、当人が知らない間にそんな話しになってたのね」
「えっ、知らなかったんですか?」
「知ってるわけ無いじゃん。普段はダンジョンに籠もりっぱなしだし、
ダンジョン攻略をしていない日は疲れてほとんど部屋で
寝ていて外に出歩いてないんだよ」
「それ自慢になってないから」
レンが突っ込みながらも
「俺も全く知らなかったよ。ってことはギルマスが会議で発表したんだな」
「そうみたいです。その後各地のギルドに通達が出て、
今はダンジョン攻略がブームになってますよ。
地方からもこの街に冒険者がたくさん向かってるって話しですし」
スズの説明を聞きたティエラが、
「まぁ、そうなるわよね」
「街が賑やかになってこの辺境領が潤うのはいいんじゃないの?
俺たちには関係ないけど」
「そんなわけでレンさんとティエラさんのペアは
今この街で最も注目されてる冒険者です!
なので、そんなお二人に助けてもらった私達は
ちょっと自慢できます!」
スズが自分の事でもないのに胸を張っていうのを聞いて
「いや、自慢しなくていいから」
「そうそう、私達当たり前のことしただけだし、
それよりもう無茶しちゃだめだよ」
ティエラにたしなめられてスズは
「はい。大丈夫です。お二人もこれからも頑張ってください!」
「はい。ありがとう。じゃあ私達はこれでいくね。
またどこかで逢ったらよろしく」
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
二人に丁寧に礼をしてから去っていくスズの背中を見ながら
「…ティエラ、今日は宿のレストランで飯食うか」
「そうだね、まだ全然大したことないのに注目されるってね」
2人で納得し、この夜は山花亭での夕食となった。
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