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第17話


 翌日、朝遅い時間に起きた2人は、旅館の食堂で朝食を食べてから

並んで街に繰り出した。

このベルグードは辺境領最大の都市だけあって、

周囲を城壁で囲まれているその中も

とてつもなく広くなっている


 門は東西南北4箇所にあるが、北門は領主および貴族専用の門と

なっていてそれ以外の人たちは

南西東のいずれかの門から出入りしている


 南門は一番大きくて人の動きも活発で、ここを入るとベルグードの

商業地区となっている。商業地区には冒険者ギルド、商人ギルド、

それにそれらを当てにしている旅館やレストランが

立ち並び、大きな通りはいつも賑やかで、その通り周辺も武器屋、

防具屋、道具屋などが軒を連ねている。冒険者からみると

大抵の品物や用事はこの商業地区で済ませられる程だ。


 南門から伸びている大通りをずっとまっすぐに進んでいくと、

しばらくすると店の代わりに住居が増えてくる。

このあたりは一般市民の居住地区になっている


 商業地区と居住地区との間には明確な線引きがないので、

こちらにもいくつかお店やレストラン、宿屋などがある


 それをさらに奥に進むと途中で大通りに検問所が見えてくる、

その先が貴族および富裕層が住む地区となり、

ここには用事がないと勝手には入られない。


 そしてその地区の一番奥にこの街最大の屋敷、

ヴァンフィールド領主の館が丘の上に広大な敷地とともに立っている

ちなみに東門と西門は商業地区と居住区の境目あたりにあり、

一般市民がよく利用している。


 レンとティエラは商業地区の通りをのんびりと歩いて

いろんな店を回っては散策を楽しんでいた


「やっぱりこの街は大きいよね、私がいたカレストより何倍も大きいよ」


 キョロキョロしながら歩くティエラに


「そりゃ辺境領最大の都市だしな、城壁も高くてしっかりしてるし。

籠城となっても相当持ちこたえられる様になってるみたいだ」


 ブラブラ街を歩き、気に入った店があると中に入って品物を見ていく2人

ティエラは普段着、部屋着が欲しいと洋服屋にはいり、

そこでいくつか気に入った服を買ってご満悦だ。


 今の2人はいつもの格好、魔法のローブに片手剣を帯刀している。

ここ辺境領では城内での武器の装着は認められいるが、

武器を使用した事案に対しては加害者(犯人)には

重刑が課せられる法律になっている。


 お店をのぞき、屋台で美味しいものを買って、その場で食べたり。

疲れたら喫茶店に入って休憩したりして束の間の休日を楽しむ2人。


 しかし冒険者の2人はやっぱり休日でも武器屋と防具屋には顔を出すのであった


 武器屋にはいり


「いらっしゃい」


と応対する犬族の女の店員に


「こんにちは、ちょっと中を見せてね」 


 と挨拶をして店内にはいると、棚には片手斧、両手斧、

片手剣、両手剣、槍などさまざまな武器が所狭しと並んでいて


「いろんな武器があるね。見てるだけでも楽しいかも」


 2人でいろんな武器を手にとって見ていると、


「お主らが持ってる神獣の加護がついている片手剣以上の

武器はここにはないぞ」


 と背後から声がかかって振り返ってみると、

ドワーフの店主がそばに近寄ってきて2人の片手剣を見ながら


「なるほど相当な品物だな。2人とも。

これが神獣の加護付きの武器か。よかったらちょっと見せてくれないか?」


「いいけど、何でも保有者以外は重たくて振れない仕様になってる

みたいだけどそれでもいいか?」


 レンが答えると


「なるほどのぉ、ますますなかなかの業物だ。 

ではそのテーブルの上に置いてくれるかの」


 レンが言われた場所に片手剣を置くとドワーフがじっくりと

それを観察していく。

一度持ち上げようとしたが相当重たかったみたいで


「た、確かに。こりゃ普通の奴は絶対に振れんわい」


 と再びテーブルの上に置いてじっくりと観察していて


「この剣、自動修復機能が付与されておるのか、

刃こぼれが全く無い。しかもそれ以外にも

いくつか機能が付与されている様じゃ」


「ダンジョンのボスのフェンリルからもらったの」


 ドワーフの店主は目を開いてティエラを見て


「フェンリルの牙を持って帰ってきた赤魔道士の話ってのは

噂じゃなくて本当だったんだな。 

そりゃいい剣を持っているはずだ。この剣は我らドワーフが

一生かかっても打てるかどうか。

剣を作るだけならできる奴もおるだろうけど、

そこに更に機能を付与させてなおかつこの輝きを維持することは

おそらくドワーフでも無理だろう。

いや、今日はいいものを見させてもらった

そうそう、わしはこの武器屋の店主をしてるドワーフの

ズームという者じゃ。武器に関して用事があったらいつでも

わしを訪ねてきて良いからな」


 礼を言うドワーフに、レンとティエラも自己紹介をしてから、


「こっちこそ。店に入って何も買わずに申し訳ない」


「何の何の。この剣を見させて貰ってわしの方が

礼を言いたいくらいだ。武器はともかく、

その鞘が補修が必要になったらいつでも来てくれ、

わしが綺麗に治してやる」


「そりゃ助かるな。その時はよろしく頼む」


「よろしくお願いします」


 店主に礼を言って2人店を出て、そのまま今度はローブを

買った防具屋に向かった


「おや、こんにちは。今日は冒険は休みかい?


 エルフの店主のルフィーが店の奥から出てきて


「今日は完全休養日。明日からまたダンジョンに潜りますけど」


「そうかい。ところでそのローブはどうだい?役になっているかい?」


「ええ、凄く軽くて使い易いです。私は魔力が増えて

魔法撃てる回数が増えたし」


「そうかい、それはよかった。私も勧めた甲斐があったってもんだよ」


「また何かいいものあるかなと思ってきたんだけど、お勧めはあるかい?」


 店内の陳列を見ながらレンが問いかけると、


「そうじゃのぉ」


 言いながらエルフは2人の格好を見て


「ローブを買ってもらったから、次はズボンか靴じゃな、

はてさて良いのがあったかな」


 店の奥に引っ込んでいって、しばらくすると


「ズボンはなかったが、靴はいいのがあったよ。

今履いている靴はただの靴で特に機能が付与さているわけではないんじゃろ?」


「ああ、普通の動き易い靴というだけだ」


「じゃあこれなんかどうだい?一見普通の靴じゃが、

素早さがアップする機能が付与されておる、

付与といってもせいぜい5%程度じゃが、無いよりはマシだろうて」


「いや5%アップって結構いい機能じゃないの?

それだけ手数が増えて、敵の攻撃も避けやすくなるってことだろう?」


「本当、本当、レンの言う通り。私達って2人パーティだから

手数が多くなったり、敵の攻撃をかわしやすくなったりするのは歓迎なのよ」


「そういってくれると嬉しいんじゃが、

ちと値がはるんで誰も買ってくれないんじゃよ」


「いくらなんだい?」


「あんたらはローブを買ってもらってるし、

勉強して1足金貨8枚でどうだい?」



 普通の靴なら銀貨20枚から高くても100枚あれば買えるとこで

金貨8枚と聞いてちょっとびっくりしたものの、


「なるほど、靴としてみれば確かにいい値段するけど、

それで生き残れる確率が上がるなら高く無い買い物だと思うけど。

ティエラ、どう思う?」



「レンの言う通りだと思うわ。ケチって怪我したり、死んだりしたら元も子もないしね」


「そうかい、そう言ってくれると私も嬉しいね。

じゃあ2足で金貨16枚で売ってあげよう」


 2人はそれぞれアイテムボックスから金貨8枚を取り出して

エルフに渡し、その場で新しい靴を履いてみる


「うん。なかなかいい感じ。ありがとうね」


「こっちこそ。いつもありがとうじゃ。 

ところでお主らはどこに泊まっておるんだい?

いいものが入ったらこっちから連絡してあげるよ」


「本当? 今は<山花亭>に泊まってる」


「いい宿に泊まってるねぇ わかった、

掘り出し物が入ったらいの一番に連絡してあげるよ」


「お願いします。 どうもありがとう」


 お礼を言って店を出てから


「どうしてみんなは防具なんかにお金をかけないんだろう」


 歩きながらティエラがレンを見て言うと


「本当だよな。ちょっと信じられないよ。

5人とかになったら皆、きっと誰かがやっつけてくれるだろう?

とか思ってるのかな? その点こっちは2人だから1人が

手を抜いた瞬間に詰んでしまうからな」


 買った靴や服はその場でアイテムボックスに入れたので

今は2人とも手ぶらで…いつもの様にレンの左に寄り添って歩くティエラ。

2人並んで歩く姿はすれ違う人や冒険者からチラチラと見られている。


 すれ違う冒険者のグループがレンとティエラを見て、

目で合図するとそのほかの相棒達が頷く

「あいつらだぜ」「そうだな」とでも言う感じで。

2人でダンジョンを攻略し出してまだ日が浅いものの、

結構なことをやってのけた2人はこのベルグードの商業地区では

有名になりつつあった。


 その後外のレストランでしっかり夕食を食べて旅館の部屋に戻ってきた2人

アイテムボックスにて持ち込む食料、水や備品の点検や

恒例となった魔力操作のトレーニングをしてから交代で風呂に入り、

早めの就寝となった。ただし、使うベッドは1つだけになったが…



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