第12話
翌朝、ダンジョンに向かう準備を整えてから宿の1階にある食堂に降りて、テーブルにつくと
他のテーブルで食事をしているパーティであろう連中がチラチラとこちらを見ながら
「あの格好、昨日ダンジョンの受付の奴が言っていた赤魔道士じゃないかよ」
「ああ、なんでも赤魔道士の2人組で、どっちもLV40超えているってやつか」
「強そうには見えないけどな。女の方、えらく美人じゃないの」
「男の方もなかなかの男前よ。それに2人とも良さそうな装備してるわね」
レンとティエラの耳にも聞こえてくるが、それを無視して2人で朝食を食べていると、
ティエラが身を乗り出して
「ねぇ、私達結構有名なんだね」
まんざらでもない表情で話しかけてくるティエラを見て
レンは冷めた表情で
「いくら有名でも死んだら終わりさ。さて行くか」
周りの話しには全く興味がない風にそっけなく応え、レンはティエラを
促してテーブルから立ち上がって食事代と宿代を支払ってから2人で
宿を出てダンジョンに向かう
前を歩くレンを見ながら… 確かにレンの言う通りで、いくら強くても
死んだらそこで終わりなんだと。生きて帰り続けてこそ
初めて強いと言われ、有名になれるんだと。まだランクCのLV43、
ランクCの冒険者なんてそこらに掃いて捨てくるほどいる中で
自分は何を自惚れてたんだろうかと、
ティエラは自戒を込めて反省すると同時に、
同じ年齢なのにしっかりとした考え方を持っているレンに
まだまだ教えてもらうことが多いなと思うのだった。
ダンジョンの入り口に着くと、受付の男が
「おっ、今巷で話題の赤魔道士ペアの登場か 今日は何階からだい?」
「3階から潜ってみるよ」
2人で水晶板にカードをかざし、
「気をつけてな」
受付の男の声を背中に聞きながら転送板で3階に飛んでいく。
2階から3階に降りた階段のとこに飛んだ2人は、
洞窟の様なダンジョンをゆっくりと進んでいく。
3階は魔獣の強さは2階と変わらないものの、常に3匹以上の群れでの出現となり
「強くはないけど、数が鬱陶しいわね」
片手剣でオークをバッサリ切り、近づいてくるオークに
魔法を当てながらティエラが言うと
「まったくだ。ほらっ、また奥から4匹 ティエラ、
魔力はまだいける?」
「いけるいける。ローブのせいもあるしまだまだ大丈夫よ」
通路の奥から連続して襲ってくる魔獣を剣と魔法で処理しながら進み
ようやく4階に降りる階段を見つけてその先で板に記録してから
「ふぅ〜 やっと一息つけたわ。3階降りてからほとんど
休みなしだったし」
アイテムボックスから水を取り出して口に含みながらティエラが言うと、
「ちょっと休んでから4階挑戦しようか。今日はいけるところまでいって
ダンジョンで一泊してもいいしな」
「ベッドがいいけど、せっかく買ったテントに泊まりたい気もする」
「そうだろ。買ったものは有効利用しないとな」
レンも水を飲みながら応え、
「それにしても次のレベルはあとどれくらいで上がるんだろうか」
「ね。このダンジョンで結構倒してるけどなかなか上がらないよね」
「赤魔道士の宿命だよな」
「ですよねー でもそれにしてもこのフロアはまたなんと言うか凄いね」
ティエラが立ち上がって遠くを見るポーズをする
4階は通路ではなくてだだっ広い広場の様な作りになっていて
その広いフロアの所々に鍾乳洞の様な岩の柱がいくつも立っていて
地面と天井とを繋いでる。
「魔獣が今までとは違う気がする」
神獣の加護としてもらった探索スキルは自分を中心に
約100メートルの範囲で魔獣を探索できる。
魔獣は脳内のマップの中で赤い点で表示され、その赤い点に
集中すると魔獣の種類がわかる様になっている。
ダンジョンに潜っていらい探索を常時発動している2人には
範囲内にいる魔獣の位置、種類が見えていて、
「では、行きますか」
ティエラが鞘から剣を抜いて歩き出すとレンも同じ様に
剣を抜いて並んで広場に歩いていく
「トロルだ。オークよりでかいぞ でかいだけで動きは遅い。左任せた」
言うなり柱の陰から飛び出してきたトロル3匹の真ん中のトロルに
魔法を当ててそのまま突撃していくレン、
そのすぐ左を同じ様にティエラが真ん中のトロルに魔法を当てて
レンは右、ティエラは左のトロルの胴体に片手剣を打ち込んで絶命させる。
トロルは巨人の魔獣。巨大な棍棒を振り回して攻撃してくるタイプで、
動きは遅いがパワーがあるので振り回す棍棒を避けながら
相手の懐に飛び込んで腹を切るやり方で2人で次々と現れてくる
トロルを倒しながら奥に進んでいく
ある程度進むと今度はトロルに加えてコウモリが上から
レン達に立ち向かってくる
「ティエラはコウモリを、俺はトロルを殺る」
「わかった、任せて!」
2人前後に並んでレンは上をティエラに任せ、正面から
トロルに突っ込んで魔法と剣で1体づつ倒していく間に、
ティエラは風魔法と雷魔法で空を飛ぶコウモリの動きを
鈍らせて落ちてきたところを片手剣で切っていく
2人のコンビネーションは戦闘を重ねる毎によくなっていき、
流れる様な連携で次々と魔獣を倒しながら奥へ奥へと進んでいくと
探索スキルで魔獣がいないエアポケットの様な場所を見つけてそこに移動して
「ちょっと休もう」
地面の上に座ったレンの隣に並んで座りながらティエラは
アイテムボックから水を取り出して飲みながら
「本当に次から次へとまぁよく出てくるわね」
ぼやくティエラに
「まだ4階だぜ、ここでぼやいてたら下に行ったらどうなるんだよ」
「わかってるけどさ、ぼやきたくもなるわよ。
レベルアップのアナウンスでもあれば一気にモチベーション
上がるんだけどなぁ。でもさ、レン、このダンジョンにきて私たち
相当数倒してない? そろそろ来てもいい頃だと思わない?」
「3階から倒してる魔獣は経験値が多そうだし、期待してもいいかもな」
「だよね」
しばらく休んでから再び広場の奥に向かって進む2人
コウモリやトロルを倒しつつ進むとようやく奥の壁が
見えてきてその壁に組み込まれている
階段を見つけて下に降りて転送板に触れる
その後5階も4階と同じ様な作りのフロアでトロル、
コウモリに加えウルフが魔獣として登場してレン達に襲いかかってきたが、
魔法で足止め、剣で個別撃破の戦闘方法で危なげなく倒していく
そして5階攻略中、広場の奥の壁が見えて、下に降りる階段が見えた
ところでトロル5匹の処理を終えると
『レベルが上がりました』
久しぶりに脳内にアナウンスがあり
「やっときたー レベル44だ」
「久々に聞いたよこの脳内アナウンス」
2人ハイタッチしてそのまま階段を降りて転送板に触れる
「流石にこのレベルになると次のレベルまでの経験値が相当多い感じだよな」
「うん、もう永遠に上がらないのかと思ったわよ」
「大袈裟な。でもそんな気がする位に長かった」
レベルがあがると冒険者の個人のステータスもアップするので
今までより少し強くなったのが実感できるほどで
「レベルが上がったからもう少し潜ってみる?」
「そうだな、もうちょっと下に降りてみようか、
レベルあげにいい狩場があるかもしれないし」
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