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極ちゃんは人気者?

放課後、私は走って校舎をでる。部活の勧誘が多いからだ。華麗な足さばきで、分身を作りながら人々の間を縫うように走っていく。刺客から逃げることに比べれば楽勝だ。


 こんなことになっているのはお姉ちゃんのせいだ。お調子者のお姉ちゃんは、勧誘された運動系の部活にすべて入部して大活躍したのだ。その噂を聞いた他の部活もお姉ちゃんを勧誘、結果ほとんどの部活に入部することになった。当然、お姉ちゃんは一人しかいないので、試合が近くなると取り合いになる。乱闘騒ぎになることも珍しくない。当のお姉ちゃんはそんな様子を見て、私のために争わないでー、とかうれしそうに言っていたらしい。殴りたい。


 そんなわけで、妹の私も注目されて勧誘されまくっているのだ。正直、私もお姉ちゃんみたいにちやほやされたい気持ちはある。身体能力にも自信がある。でも、私はお姉ちゃんと違って不器用なのだ。


 小さいころ、近所の子供たちで野球をした。バッターボックスに立った私はバットを素振りしていた。そのとき、手が滑ってバットを飛ばしてしまった。そのバットは、外野を守っている男の子の足元数センチに突き刺さり、トラウマを植え付けた。あれ以来、野球には誘われなくなった。


 家族でボウリングに行ったときは、投げたボールがお父さんの顔面を直撃した。お父さんじゃなければ死んでたかもしれない。お母さんに、ボウリング禁止令を出された。


 数合わせで呼ばれたサッカーでは、ボールと足を間違えて蹴ってしまい、相手を骨折させてしまう事故が多発した。前半が終わったとき立っていたのは、敵味方審判含めて私一人だった。先に審判が倒れ、試合を止める人がいなくなってしまったことで被害が大きくなったのだ。


 思い出すときりがない。とにかく私は不器用なのだ。だから私はすべての勧誘を断っている。


 校舎を出ると勧誘は無くなるけれど、代わりに刺客が襲ってくる。面倒なので逃げたいけれど、逃げていては数が増えるばかりなので適当に相手をする。


 モヒカン頭の男がフルスイングした金属バットを拳でへし折る。もちろんメリケンサックはつけている。相手が不良とかならこれで怯むから楽なんだけど、刺客は違う。金属バットを捨て、すぐに懐からナイフを取り出す。襲ってはこない。様子をみているようだ。後ろからなにかが飛んできた。気配で察知して指でつかむ。小さい矢のようなものだった。知らない制服を着た女の子が、筒のようなものを銜えている。吹き矢だ。珍しいのでポケットにいれておく。筒も欲しい。お母さんが喜びそうだ。女の子はモヒカンと違って、動揺している。先に筒を入手しておきたい私は、女の子に近づいていく。女の子がまた矢を吹いてきたのでつかんでポケットにいれながら、足は止めない。女の子はその場にへたり込んでしまった。女の子に手を差し出すと、震える手で筒を渡してくれた。素直ないい子だ。殴るのはやめておこう。後ろを振り返ると、モヒカンが電話をしていた。仲間を呼ぶつもりなのかもしれない。走っていって戦闘態勢をとれていないモヒカンに右ストレートを叩き込む。ついでに携帯も踏んで壊しておく。


 一息ついて、前をみると、鎖鎌を振り回しているおっさんと目が合った。おっさんはニヤリと笑う。ああ、面倒くさい。今日は、この町で唯一の武器屋さんに行く予定なのだ。武器屋さんは結構遠い上に家の方向とは反対側にある。急がないと門限に間に合わない。お母さんに怒られてしまう。


 私は飛んでくる鎖鎌を眺めながら、かかる時間を計算した。



 

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