ストーリーは進まない
5時間目が終わったのでおやつ(お弁当)を食べることにした。実花ちゃんもいっしょだ。
「あんた、本当にあれと付き合う気あるの?私ならいやだけど。」
実花ちゃんはご機嫌斜めだ。料理が口に合わなかったのかもしれない。わがままだなあ。
「なんで?お金持ちだしいいじゃん。」
「あんた、あいつの話聞いてた?」
「食べるのに忙しかったから…。」
あんな美味しいものを前にして、会話していられる実花ちゃんすげー。
「マジで?あんたのどこが好きなのか、とか結構大事な話してたんだけど。」
「へーどこが好きなの?」
聞かなくてよかった。聞いてたらドキドキしてごはん食べられなかったかもしれない。
「顔と体だって。サイテーだよね。」
実花ちゃんは本当にいやそうだ。
「へー。でも喋ったこともないんだから、好きになる理由なんてほかにないよね?ちょっと趣味悪いかな、とは思うけど。」
むしろ喋ったこともないのに、内面が好きだとか言われたらストーカーかな、とか疑ってしまう。
「それでも、体が好きとか言わないでしょ、普通。」
「ひどい。そりゃあ、私は胸も小さいし、体脂肪も低いけど、好きになってくれる人がいたっていいでしょ。」
実花ちゃんと比べると大分劣るかもしれないけど、私だってスタイルはそんなに悪くはない、と思いたい。胸だってよせて上げるほど脂肪がなくてごまかせないだけだ。
「そういう意味じゃないけど、まああんたがいいならいいや。」
あ、もうだいぶ時間経ってる。まだお弁当はたくさん残ってるのに。ペースあげないと。
「実花ちゃん、大変。早く食べないと授業始まっちゃうよ。」
「私は食べないから。」
実花ちゃんは少食だ。
「おいしい?みすぼらしいとか言われたお弁当。」
「おいしいよ。欲しいの?」
「いらない。てかあいつ完全に庶民を見下してるよね。」
「大丈夫、私は実花ちゃんたちのこと見下したりしてないよ。庶民のごはんにも理解を示してるよ。」
モグモグしながら答える。これはこれでいいものだ。
「なんであんたはすでにセレブ気取りなの?。」
「お金持ちだから?」
「あんたのお金じゃないでしょ。本当に付き合ってるのかも怪しいぐらいだし。」
「どうみても付き合ってるでしょ。彼氏の家みたいなところで一緒にごはん食べる仲だよ。」
「通訳付きでね…。じゃあ連絡はどうやって取る気?」
「え?連絡先聞いてないの?」
なにやってんの、実花ちゃん。しっかりしているようで、いつも肝心なところが抜けてるんだからもう。
「私は別に連絡する必要ないでしょ。」
「あるよ。誰が電話とかすると思ってんの?」
「あんたでしょ。」
「私にそんなことできるわけないじゃん。長い付き合いなんだからそれぐらいわかってよ。」
「それぐらい自分でできるようになりなよ。ずっと私が一緒にいるわけじゃないんだから。」
私だって将来のことはちゃんと考えてるのに。実花ちゃんにはずっと一緒にいてもらう予定なのに。
「えー、将来実花ちゃんには私専属のメイドになってもらおうと思ってたのに。」
「ならないよ。勝手に決めないで。」
「お給料たくさん払うよ。」
「全員があんたみたいにお金に弱いわけじゃないの。」
「もし私のメイドになったら、川原田家の財産の半分を実花ちゃんにあげるよ。」
「どっかの竜王みたいなこと言ってもダメ。だいたいあんたにそんな権利ないでしょ。」
「あるよ。結婚したら財産の半分は私のものでしょ。」
「たぶん、そんなルールはないと思うよ。あっても私に渡したら、あんたのお金ゼロじゃん。」
「私はお金より実花ちゃんが大切なの。」
「…。」
実花ちゃんは黙り込んでしまった。そんなにメイドがいやなら、ほかのお仕事で雇ってあげようかな。私も少しは妥協しないとね。
「実花ちゃん、メイドがいやなら、通訳とか、秘書とかそういうのでもいいよ。」
「あんたやっぱりバカだね。」
急に馬鹿にされた。ひどい。人間は本当のことを言われるのが一番傷つくんだよ。
「仕方ないなあ。メイドにはならないけど、連絡先ぐらいは聞いといてあげるよ。」
よくわからないけど、連絡先を聞いてもらえることになった。チャイムが鳴った。お弁当はギリギリ完食した。
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