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こうちゃんはお金持ち

お昼休みになったので、嫌そうな実花ちゃんを宥めながら駐車場に向かう。私はお母さんの作ったお弁当、実花ちゃんはパンをもってきてるようだ。


 駐車場に着くと、こうちゃんが手を振っていた。先に来ていたらしい。実花ちゃんが嫌がっていて遅くなったのだ。時間にルーズな女だと思われてしまったかもしれない。ほら実花ちゃん、謝って。


「早いね。待った?」


私たちが遅いんだと思うけど、実花ちゃんは気軽に話しかける。怒られたらすべて実花ちゃんのせいだ。


「今来たとこだよ。」


あ、そうなんだ。なら謝らなくてもいいね。実花ちゃんごめん。


「じゃあ行こうか。こっちだよ。」


こうちゃんはそう言って歩き出す。私たちは揃って後についていく。けっこう歩く速度が速い。遅くなってあせっているのかもしれない。


「歩くの早いよ。」


実花ちゃんが言う。


「ごめんね。時間がないから。」


こうちゃんはそう言って歩き続ける。速度は変わらない。やっぱり焦ってるみたいだ。どこまで行くんだろう?


 校門を抜けて外にでる。外はまずい。刺客がいるかもしれない。あたりを見回してみるが刺客らしき人はいない。こうちゃんは学校向かいのビルにはいっていく。飲食店は入っているわけでもない普通のビルだ。なんでこんなところに入るのかわからない。実花ちゃんも怪訝そうな顔をしている。


「着いたよ。」


こうちゃんが振り返って言う。大きな両開きの扉があり、横にはインターホンがある。お店の看板は見当たらない。


 こうちゃんが一歩扉に近づくと、勝手に開いた。中にはテーブルがひとつある。テーブルの奥にイスがひとつ、手前にふたつ。メイド服を着た女の子が二人テーブルの両側に立っている。


中に入ると、ドアの内側にも左右に一人づつメイドがいた。ドアの取っ手を持っている。自動ドアではなく、彼女たちが開けてくれたようだ。


 実花ちゃんを見ると、口を開けてポカーンとしていた。とりあえず注意しないと、と思ったけど、先に実花ちゃんに言われてしまった。


「あんた、口開いてるよ。」

「え?実花ちゃんも開いてたよ。まぬけな顔してた。」

「あんたねえ…。」


 こうちゃんは私たちのやり取りをスルーしてテーブルに向かっていく。私たちもあわててついていく。席まで行くと、メイドさんがイスを引いてくれた。実花ちゃんと並んで座る。向かいにこうちゃん。座るとすぐに料理が運ばれてきた。


「フォアグラと野菜のテリーヌでございます。カリフラワー、レタス、ニンジン、セロリ…」


メイドさんが説明してくれる。全然意味がわからない。


「…したものでございます。」


あ、説明が終わった。間髪入れず実花ちゃんが言う。


「私たち、自分の分はもってきてるんだけど。」

「急だったけど、なんとか三人分用意できたから、食べてってよ。」

「いや、こんな高そうなものごちそうになるわけには…。」

「え?」


謎の食べ物を口にいれようとしていた私は驚いて固まってしまった。これ食べちゃまずかったの?


「あんた、なに無言で食べようとしてるの?お弁当持ってきたでしょ?」

「え?うん、お弁当は後でおやつに食べるよ。」

「極さんは自由奔放だね。君も遠慮なく食べてよ。」


なんか褒められた。うれしい。実花ちゃんはまだ渋っている。


「せっかくだから食べなよ、実花ちゃん。けっこうおいしいよ。」

「はあ、仕方ないか。いただきます。」

「よかった。目の前でみすぼらしいものを食べられると、なんか罪悪感があって食欲なくなるから心配してたんだよ。」


失礼なこと言われたような気もするけど、実花ちゃんは黙ってるから気にしないでおこう。


「で、この建物はなんなの?」


テリーヌとやらを食べ終えた実花ちゃんが質問する。


「僕の、まあ別荘みたいなものかな。入学に合わせて建てたんだよ。」


うん、意味がわからない。入学に合わせて、学校の前に別荘を建てる?どれだけお金が余ってたらそんな発想ができるんだろう。


「隣に建設中の建物があったでしょ。あれ、来年入学する弟のビルなんだ。」

「一人、一棟なの?」

「もちろんだよ。僕たちももう高校生だし。」

「ふーん、変わってるね。」


実花ちゃんのつっこみにもキレがない。ショックだったんだろうな。がんばれ実花ちゃん。


 この後、スープとパン、お肉、デザートが出てきた。おいしかった。実花ちゃんとこうちゃんが何か話をしていたけど、料理に夢中でよく聞いていなかった。実花ちゃんは何故か不満そうだったけど、私にとっては満足な昼食だった。

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