麗華ちゃんは黒幕
校門を通り抜けると、徒歩に切り替える。理由はよくわからないけど、刺客は学校までは入ってこないのだ。
玄関前あたりに女子の集団がいる。中心にいるのは、麗華ちゃんだ。私が刺客に追われるのはこの子のせいなのだ。彼女はこの学校の理事長の孫で大金持ちのお嬢様だ。入学当時は仲良くしていたんだけど、私が男の子に告白されたときからおかしくなった。告白された日の帰り道に少し離れた場所で彼女を見かけたんだけど、いままで見たことがない鬼のような形相をしていた。彼が好きなら、前もって相談しておいてくれてたらよかったのに、とは思うけどもう遅い。そして次の日から次々と刺客に襲われるようになった。学校では彼女も立場があるのだろう、露骨ないじめとかはないのでそれが救いだ。
「おはようございます、極さん。」
「おはよう、麗華ちゃん。」
「汗をかいていますね、大丈夫ですか?」
「うん、走ってきたから。」
「寝坊されたのですか?睡眠不足は美容の敵ですよ。」
「うん、朝弱いんだ、私。」
白々しい。文句を言いたいが我慢する。逆らったら退学になるかもしれないし、周りの子からも陰湿ないじめをうけるかもしれない。上履きに画びょう入れられたりとか。ああ、怖い。そんなことになったら泣いてしまうかもしれない。刺客送られるぐらいで済んで本当に良かった。
「極さんの指輪、少し変わりましたね。とても可愛らしいですね。」
メリケンサックのことだろう。昨日ラメを増やしたのだ。この子とは意外と趣味が合うのだ。指輪じゃないけど。惜しい友達をなくした。
「ありがとう。よく気づいたね。ちょっとしか変わってないのに。」
「もちろん気づきますよ。だって…。」
麗華ちゃんはそこで言葉を切った。しまった、って顔をしている。なんだろう?
「もう教室に行かないとホームルーム始まってしまいますね。皆様、急ぎましょう。」
そう言って足早に立ち去ってしまった。盗撮でもされてるのだろうか。帰ったら調べてみよう。
考え事をしていたらチャイムが鳴ったので、急いで教室に向かった。