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卑怯者なんて言葉は仲間を裏切ってから吐け(ユイ×魎華)

段々とタグの1つが顕著になってきた…

「お前さん方はコラボなるものをしに来たんだよな?」

ユイはコーヒーを淹れながら魎華に聞いた。

「そうだ。」

魎華はそっけなく答え、なんとも言えない沈黙が流れる。

聞こえるのはジャズの音と、ハルヴィアが玲を可愛がる声だけだ。

「…背景が凄まじいな。」

ユイがそんなことを呟く。

「まぁ…度が過ぎる様なら私が止めるさ。」

魎華も思うところがあったのだろう。

若干苦笑しながら答えた。

その表情をユイは面白そうに覗き込んだ。

「どうかしたか?」

魎華が怪訝に問う。

「今にも額にシワ寄せそうな顔よりも多少笑った方が愛想が良いなって思っただけさ。」

その瞬間、魎華が真っ赤になった。

「…余計なお世話だ。」

それだけを口にするとジンジャーティーを口に含む。

「そうさね。余計なお世話だ。」

ユイはそういうといつの間にか淹れ終えていたコーヒーをマグカップに注ぐ。

「うん、上手くいった…時にお前さん方。本当に何者だい? 腕の筋肉の締まり方は剣士のそれだ。」

ユイはコーヒーを一口飲むとそう言った。

赤い双眸は魎華の顔を捉えている。

「私達はただの剣士さ。」

「澪川流免許皆伝しといてか? あの歳で?」

ユイは玲に目をやる。

「…お前には関係ないことだ。」

「そうだな。悪い。」

ユイは案外あっさりと引き下がった。

「追求しないのか?」

魎華はやや驚いた様に聞く。

「無理に詮索する様な真似はせんよ。それに短い竜人生でも『知らない方が良い事もある』ってことぐらいは把握してるからな。もちろん、お前さんが話す気になったらちゃんと聞いてやるよ。」

無言でそれぞれの飲み物を口にする。

「こっからはただの独り言だけどもさ。こいつは腕は立つが何かを抱え込んでる。それも血なまぐさい物を。ただ、こいつからは人を殺したあの覇気を持ってないんだよなぁ…そいつがどうも気になる。こいつに面白半分に殺戮することは出来ない。知り合いに面白半分で出来る奴がいるからな。少し話せばその位はすぐ分かる。と言うとこいつは何を抱え込んでるのか? そうなると答えは1つ。冤罪、責任感だ。体中の傷が何かは知らんが関連した傷もいくつかある事だろう。」

「夢響村の刀巫女だ。」

魎華がユイの独り言を遮った。

「…私は夢響村という所の刀巫女だったんだ。」

魎華は語り出した。

刀巫女という夢響村を守る立場にありながら結局村人に守られた事。

魎華以外誰も生き延びた者はおらず、村を捨てて逃げた事。

「私は…弱い奴さ。結局私の所為で村のみんなは死んだんだからな。」

魎華は無感情にそういうとジンジャーティーを口に含んだ。

「なんだよ。笑えよ。私は卑怯者。『刀巫女』なんてのはただの肩書き。結局何も守れず仕舞いなんだからな。」

ユイは大きく体を伸ばす魎華をじっと見つめた。

「そうかい。じゃあ一言だけ。お前さん、中々かっこいいと思うぜ。」

「…かっこいい?」

魎華は混乱したようにユイの言葉を往復した。

「そうさ。今度は俺の昔話でもしようかね。今から3000程度前の話だ。俺は当時、竜人の集落にいたんだがそこでは生まれながらに武器を手に他種族へ侵攻する血塗れの竜人生がお出迎えしてたのさ。生き物を殺すことになんの躊躇いもないただの兵士、見方次第では傀儡として戦場で生き続けるんだ。それをただ繰り返す。戦いしか知らないからそれを最初はつまらんとしか思えない。だが、それ以外を知れないから段々と狂気を抱え始める。今までとは真反対にそれを面白いと思い始めるんだ。自分達が何を奪っているかなんて気にも留めない。面白半分でそいつを殺し、その家族や恋人、恩師や弟子の人生を狂わせるんだ。殺した俺たちにそんな自覚はない。俺もこれを認知し始めたのは欲望と権力の渦に引き込まれたその瞬間だ。で、ここで話を戻そう。お前さんはどうだ? 存在だけで抑止力となり、他へ侵攻することもなく、抜刀するのは侵攻される時だけだ。俺のように攻める為ではなく、守る為に戦い、殺す。結果的にその村は滅んだらしいが別に良いんじゃないかと俺は思ってる。村の連中は残念なもんだがお前さんが生き残ったんだからな。知ってたか? お前さんが1人いればなんでも出来るんだぜ。村の再建だって出来るし、お前さんの半人半霊生を歩むことだって出来る。こうやって世界を超えた交流だって出来る。それをどうして卑怯者なんて言えるんだ? 卑怯者なんて言葉は仲間を裏切ってから吐け。」

そこまで言うとユイは怒気を混ぜて魎華を睨んだ。

「なんで怒ってるんだ?」

「卑怯者が嫌いだからだ。言葉でも文字でも。」

そう言うとユイは「卑怯者」と言う文字を出現させるとそれを握りつぶした。

「お前さんはまだ卑怯者じゃない。過去の連中にばっかり悔いていたらそれこそ、村の連中から卑怯者って言われるぜ。お前さんに被虐嗜好があるなら話は別だがな。考えて悩んだり鬱になる記憶なんて斬り飛ばしちまえ。踏ん切りが付かなくて何が剣士だ。シャキッとしな。」

ユイはマグカップを一気に傾けて中身を飲み干した。

「うし、スッキリした。やっぱりこういうことは胸に貯めておくもんじゃないね。俺の言葉でお前さんの考えを変えろなんて言わん。だが考え直せ。随分と説教臭くなったが俺からは以上だ。」

魎華は黙ったまま俯いた。

(ちょいと厳しすぎたか…)

ユイのそんな心配は杞憂だった。

魎華が顔をあげる。

「なるほど一理ある。私はどうやら抱え込みすぎていたみたいだ。」

魎華は軽く笑うとジンジャーティーを飲み干すとユイにマグカップを突きつける。

「おかわり。今度はコーヒーで。」

「かしこまりました。でもあいつらの監視はちゃんとしとかんとな。」

ユイはマグカップを受け取りながらハルヴィア達に目をやる。

ハルヴィアが玲の頬をぷにぷにと小突いていた。

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