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私の喫茶店に天井から入ってきたのはあんたが初めてだね(ハルヴィア×魎華)

遅れながらもコラボ始動!

禍月さんの方はもうコラボ終わりかけてるけど気にしない。

気にしないったら気にしない!

ハルヴィアは誰もいない喫茶店でコーヒーを片手に読書にふけっていた。

本の題名は「ハムレット」と書かれている。

どうやらハルヴィアはシェイクスピアの作品が好きらしい。

「穏やかな午後にレコードからジャズが流れる喫茶店を独り占めしてコーヒー片手に読書。しあわせだねえ。」

のんびりとそんなことをハルヴィアは呟く。

しかし、ハルヴィアの日常は次の瞬間、瓦解した。

上から人が落ちてくる。

「…え?」

流石のハルヴィアも唖然とした様に固まる。

「…ありのままに起こったことを話してもいいかい? 私がコーヒーを飲んでいたら上から白髪の女が落ちてきた。何を言ってるのか分からねーと思うが私にも何が起きたのか分からねー。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。」

異能力バトル漫画の名言を吐きながらハルヴィアはその場の状況を確認する。

「白髪の女。歳は…やめておこう。私みたいに不老だったら困るからな。で、側には魂みたいなものが漂っている。察するに…妖夢ちゃんの親戚? まさかとは思うけど、世界的に見ても半人半霊なんてめったにいないだろうし…とりあえず看病でもすればいいのか?」

ハルヴィアはソファまで女を運ぶとそこに女を横たえる。

「さて、まずどうするかな。私に出来ることなんて紅茶を作ることくらいか。」

自問自答してハルヴィアは厨房に立つと生姜を擦り下ろし、ハチミツと混ぜてあらかじめ作っておいた紅茶に溶かす。

完全にハチミツが溶けたところで女が目を覚まし上体を起こした。

「おはよう。私の喫茶店に天井から入ってきたのはあんたが初めてだね。」

ハルヴィアはジンジャーティーを女に渡しながら声をかける。

「記憶はある?」

緑斬(りょくざん) 魎華(りょうか)。歳は25。半人半霊だ。」

魎華と名乗る女はややぼうっとした様子で白い長髪を搔き上げた。

「大丈夫そうだね。良ければ何がどうなってあんなことになったのか教えてくれるかい? 落ちてきたのに天井に穴が空いてないのが気になってね。」

ハルヴィアは天井を見上げる。

たしかに傷ひとつなかった。

「えっと…紫に『コラボしてきて欲しい』って言われて、それで玲と隙間に入って…そうだ! あんた、澪川(みおかわ) (れい)って子を見なかったか? 白いパーカーに黒い髪の男の子で歳は11歳くらいだ。」

ハルヴィアは腕を組む。

「私は見てないねぇ。まあ、ここに来たのも何かの縁。ゆっくりお茶でも飲まないかい? いまいち事情はよく分からないけど私も手伝うから。」

ハルヴィアは諭すように言う。

その言葉に魎華は少し落ち着いた様だ。

頷くと持っていたマグカップを傾ける。

「おいしい…」

「そりゃ良かった。そういや私の名前を言ってなかったね。私はハルヴィアってもんだ。まぁ、好きに呼んでくれ。これでも鳳凰だ。歳は…秘密さね。」

ハルヴィアは楽しそうに片目を瞑る。

「なんかずるい…」

魎華は歳に見合わず膨れっ面を見せた。

「ふふふっ、あんたよりは上って言っておこうかな。年の差だね。」

それを聞いても魎華はまだ膨れっ面を辞めない。

「まあまあ、あんたより年上って事はあんたの方がまだまだ若々しく飛んだり跳ねたり出来るってもんだろう。」

ハルヴィアは魎華をあやす。

その言葉で魎華はやっと機嫌を直した。

「ところで見たところ半人半霊らしいけど、妖夢ちゃんの親戚かなにかかい?」

ハルヴィアは気になっていた事を聞いた。

「家系的な血は繋がってない。気が遠くなる程辿っていけばどこかで合流するかもしれないけどな。」

ハルヴィアは頷いた。

「なるほどね。気が向いたら調べてみるとしようか。」

「いや、調べてもない思う。私達の世界とハルヴィアさんの世界は違う。互いに見ればどこか違う歪な世界なんだ。」

「じゃあ、奇跡とも言えるようなこの一瞬を大切にしないとね。」

ハルヴィアは楽しそうに笑ってコーヒーをマグカップを傾ける。

「随分と楽しそうだな。」

魎華がどこか呆れたように言う。

「そうかい? 今まで歪としか言いようがない鳳凰生を送ってきたもんでね。」

ハルヴィアは手を軽く振って魎華に紅茶を飲むように勧める。

魎華は勧められるがままに紅茶を飲むと話し始めた。

「『コラボ』っていう物があって、簡単に言えば別世界の幻想郷の特別な相手同士で交流するんだ。今回はそれでこの世界に来ることになって飛ばされたんだ。」

「なるほど…って事はあんたはあちらさんの特別な奴になる訳だ。あんたがどこに住んでいるのかは知らないけど、この幻想郷にはあんたという存在やその玲くんって子はいない。逆に言えばあちら側の幻想郷には私やユイはいないってことになる訳だ。」

魎華は頷く。

「概ねその通りだ。私達の方の紫はそういった者達とコラボする様に言ってきたんだ。」

「そういう事か。とは言ってもこれも一種の交流じゃないかい? 任務完了だな! という事で第2弾。澪川 玲くんを探せ!」

ハルヴィアが肘を曲げて手を魎華にかざす。

魎華は一瞬考えた後、ハルヴィアの手を叩いた。

心地良い音が静かな喫茶店に響いた。

カランカラン。

その時、喫茶店のドアベルが軽快な音を立てた。

「お〜いハル姐。いるか? 迷子のガキンチョがハル姐に会いたいとさ。」

そう言いながら店内に入ってきたのはユイだ。

側には黒髪の小さな少年を連れている。

「玲! どこにいたんだ!?」

少年の姿を見た魎華は驚いた様にソファから立ち上がる。

玲は手に持っていたノートに何かを書き込んでユイに見せるとそれを消し、また何かを書き込んで魎華に見せた。

『白玉楼の方に転送していました。丁度ユイさんがいたので状況を説明して連れて来て貰った次第です。』

「…mission completed.」

ハルヴィアの英語が喫茶店の中に反響して消えた。

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