第二話『夜の飛行場僕と妹』
ジリリリリリ……
目覚ましがうるさく鳴り響く。目を覚ますと、まだ窓の外は暗い。
びっくりした。
本当にびっくりした。
目覚まし時計を見るとまだ夜中の3時だった。こんな時間に起きて何をするのか。
僕(吉田タクミ)は別に修験者でもないし、お百度参りを踏むわけでもないし今から美味しいラーメンのスープの仕込みだってばよ!ってなことにはなりもしない普通の性少年であり青少年なんだから是非もっと寝かしておいてほしかった。
それも……やっと夏休みに入ったのに……。夏休み早々運が悪い。
運が悪いっていうか、こんなのおかしい。何が悲しくて目覚ましを朝三時にセットしなければいけないのか。気でも狂ったのかと自問自答するが、どうも記憶にない。
正直言って……犯人はわかってるんだ。
妹だ。
僕の妹は、2歳年下の15歳。中学3年生で今年は受験なわけだ。受験生。といっても、僕の時とは違ってそこそこ勉強ができるっぽい妹は何を焦るわけでもなくマイペースに日々を送っている。
僕にこんな悪戯ともいやがらせとも言えるような悪さを働きながら。
本来なら、右のコメカミあたりに懇親の右フックでもお見舞いして兄からの愛のDVを食らわしてやりたいところだけどそういうわけにもいかない。
おのれ、妹め。
そして、こんなことわざわざ書く事でもないが…妹と僕は血が繋がってない。
母の連れ子だ。
本当のお母さんは、僕が小さい頃に父と離婚したらしい。経緯は良く知らないし、知りたくも無い。
僕が6歳のとき、父が今の母と再婚した。
すると、オマケがついてきた。妹だ。
僕は、雑誌でもお菓子でもオマケや付録が大好きだった。ヤマオリとかタニオリとかしながら作る付録が大好きだった。母に付いてきた付録は折ったり貼ったりするところはなかったけど、非常に嬉しいオマケだった。
僕は、兄弟が欲しかったから。女の子でも、そこは無問題だった。
年がすぎると……妹は、非常に美しく成長した。
ハッキリ言って……可愛い。多分、学校でもトップ3に入るぐらい可愛いだろうしこの町でも相当上のランクだと思う。
ギリの妹が、ベッピンさん。しかも、仲は……悪くない。心底僕が憎くてこんな悪戯をしてないのなら、仲は悪くないと思う。
いかんせん、こんなまさかのドキドキ義理の妹との恋愛フラグが立ちそうなことを話してはいるがそんなことは、ないから安心してほしい。もし、あったとしてもそれはまた別のお話しなんだから。
ってなわけで、義理の妹の胸でもいつか触ってやろうなんて思いもしてない僕は朝三時からやることもないわけで……始まったばかりの夏休みの宿題に手をつけるなんてことは目の前でビッグバンが起こっても嫌だし。
かといって……こんな時間からゲームする気にもなれない。
漫画も、今はいいや。
ふらりと何気なく部屋から出る。
そんなに大きいわけではないが一軒立ての家だ。父も頑張ったものである。
僕の向かいの部屋が妹の部屋。扉にシールが貼ってある。
「ノービアー、ノーワーク」だそうだ。
ビールがないと働かないってか?
なぜ、こんなシールを貼ったのか少し脳みそをチェックしてやりたいが。
きっと思春期の女の子にも色々と事情があるんだろう。
一階に下りて、台所でオレンジジュースを飲む。
果汁30%!
今日も、9時から練習だ。昼まで。
そこから、本来なら好きな女の子とデートでも行けたら最高なんだが……。
どうせ、同じく朝から練習してるであろうバスケ部の田中とラグビー部の西植と三人でぶらつくのかな……。
ちなみに、この2人は同じクラスなのだ。
部活は違うが、まあ学校で一番仲のいい友達って言っても過言ではない。彼女もいない。頭もそんなによくない。田中は、むしろ相当悪い。
まあ、相違点としては、奴らは2年にして部の絶対的エース。僕はなんとなくレギュラー。こんなもんかな。
部屋に戻り、もう一眠りすべきか、ここで眠った場合確実に練習に遅刻してしまうフラグがビンビンに立ってるのかどうか、それこそ悪の組織に世界を亡ぼすほどの兵器を作れ、さもなくば家族を皆殺しにすると脅されている天才科学者ばりに僕は悩んでいた。
ここでもう一眠りしとかないと練習に身が入らない。が、遅刻したら練習もへったくれもない。
うーん。
どうすっかなぁ……。
ん?
何気なく携帯を見たら着信。そして、メール。
俺が寝てから来たのか……。
着信は、田中(超バカ)からだった。メールもである。
ふむ。。
メールをチェックすると……
『明後日は学校がなんかのチェックで使えないから部活ないだろ?ってなわけで、明日の晩丑三つ時…肝だめしを開催します!!えー、絶対参加してください。』
なにが、ってなわけで……なのかはわからんが明後日、っていうか明日か。今からだと。明日は学校が使えないのか。そういえば顧問もそんなことを言ってた気がする。
肝だめしねぇ……。
正直言って、全く、ビックリするぐらい興味がわかないが。
『なお、同じクラスの何人かに声をかけてまして……あなたの大好きな大好きな井筒さんもきますよ。それでは、返事は聞きません。だって、お前は必ず来る……そして……死ぬ……』
行こう。ビックリするぐらい興味しかわかない。
もちろん、井筒さん(天使)に。
死ぬのは嫌だが、井筒さん(ある意味僕を堕とす堕天使)と会えるなら寿命が3ヶ月ぐらい縮んでもうっすら我慢できるぞ!
ちなみに、この井筒さん(Bカップ)というのは、まあ、ほとんど主成分がエンジェルで出来てる女の子で、はっきりいうと僕の片思いの女の子だ。図書委員だ。もちろん、物静かで読書が好きでもちろん眼鏡をしていて、もちろん語尾は〜ですぅ、〜ですかぁ?、〜ですよぉ、ってな微妙に伸ばす感じでもちろん天然ボケを発揮するところがあるのに変なところで頑固っていう非常になんていうかもう恋愛シュミレーションゲームライクな女の子だ。
もう、男でこれが嫌いなやつは、いるかもしれないが俺には関係ない。ドキュンだ。ズンズンドキュンだ。DQNじゃないぞ。そんなこといったら殺す。もう、僕の心のど真ん中をとびっきりのストレートで決めてきましたね?ってなもんだ。
井筒さん(アホ毛あり)が来るのなら……僕は行かねばならない。肝だめしでも根性だめしでもどんとこい!
そして、なんやかんや上手くいったら……ふっふっふ。
そして僕は、今夜のパーティーナイトのため、颯爽と寝る事を決意した。
クラブの練習より……恋だバカヤロウ!
思春期ばんざーーーーーーーーーーーーーーーい!
そして、起きたのは勿論お昼の12時で部活の練習をあっさりさぼることになるのであった。
第二次性長期ばんざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!




