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6話 初冒険の日 前編

「ではニックさん、ジェイクさんを冒険者として登録しますね。」


そう言って受付嬢が俺達に冒険者カードを手渡した。カードには、冒険者 ランクF ジェイク と書かれている。遂に、遂にこれで冒険者になれるのだ!隣を見るとニックも嬉しそうにカードを眺めてる。あいつもずっと冒険者になりたいって言ってたんだ。俺と同じぐらい嬉しいだろう。


「おい、ニック。せっかくだから2人で何かクエストを受けないか?」


「もちろん!登録だけして帰るなんて出来ないよ!」


そう言って2人でクエストボードの前に立つ。どれどれ、Fランクでも受けれるクエストはっと。薬草集めにゴブリンを追い払うだったり…


「なんか地味だな。」


「そうだね。」


もっと派手なクエストを受けたいな。そう考えていると、横から声をかけられた。


「ならお前ら、俺らと一緒に護衛のクエストを受けないか?」


話しかけられた方を見ると、おっさんがこっちに来ながら手招きをしていた。


「どういう事ですか?」


「一時的にお前らを俺らのパーティーって事にしてクエストを受けるんだ。お前らを入れてもランクは人数が多い方に合わせられるから受けれるしな。」


「でもそれをしてあなた達に何か利点はあるんですか?」


「まあ、あれだ。初心者救済ってやつだ。いきなり外に出て死ぬのを防ぐために1回経験を積ませるのさ。」


そうなのか。まあ退屈なクエストを受けなくて済むならラッキーだ。


「ジェイク、どうする?」


問いかけに首を縦に振って答える。


「じゃあ決まりだな。このまま行けるか?」


「はい、行けます。」


「よし、付いてこい。」


そのままおっさんについて行くと街の門の近くに馬車と何人かが固まっているのが見えた。あれがおっさんのパーティーなのか。


「お前ら、初心者連れてきたからしっかり面倒みろよ。」


そう一言言うと馬車の御者に何やら言った。どうやらもう出発するらしい。


「楽しみだなニック!いよいよ俺らの冒険が始まるってわけだ!」


ニックの肩を叩く。ニックも表情を明るくしてこちらを見てきた。


..........................................


街を出てからしばらくは安全な道のりが続いた。あんまり安全すぎてがっかりしたぐらいだ。なんて思ってるとおっさんが急に変な事を言い出した。


「ん?何か今子供の声しなかったか?」


ざわり


御者達がなにか言っている。俺は耳がいい方なんだ、どれ、なんて言ってるか…


「・・・ガキ・・・・・・だしや・・・・・・」


「黙れ。・・・空耳・・・・・」


「わか・・・・・・・・・うり・・・・・・」


ガキ…?俺達のことか?でも今俺もジェイクも声なんか出して無かったしそれなら俺達の声って分かるはずだよな?うむ、どういう事だ?


「なあニック、今あいつらがガキがどうこう言ってたけど俺達のことか?」


少し離れたところにいるニックにひそひそと話しかける。


「うーん、俺達はガキってほどではないし、荷台に子供が間違って乗ってたりしてね。」


「案外ほんとにそうかもな、ちょっくら調べてくるか。」


俺達は荷台の方に歩いていった。すると怪訝に思ったのか御者がこちらに刺すような視線を向けてきた。


「何か用か?」


「あの、荷台に子供が…」


刹那


御者2人が同時に立ち上がり、剣を手に取った。俺達の横を素通りし、おっさん達のパーティーの方へ。


「?お前ら何を」


ズブリ


振り向きざまに一突き。剣は狙い違わず胸に吸い込まれていった。すぐに剣は抜かれ、崩れ落ちるおっさん。同じような手口で1人、2人と次々に襲いかかる。奇襲に加え、呆気なく死んだおっさんに気を取られたのかあっさりおっさんのパーティーメンバーはやられていく。

見るともう1人の御者も逃げようとした人をあっさり殺していた。


「ふぅ、案外あっさりだったな。」


そう言って剣の血を拭う御者。


「え、死んだ?殺された?ど、どうして?」


「どうしても無いだろ、一体どこで荷台のガキに気づいたんだか」


「ガキ?まさかほんとに子供が乗ってたのか?」


「あ?まさか適当な事言ってたのか?ちっなんだよ、殺し損じゃねえか」


そう言った御者の目には後悔や罪悪感なんてものはなく、ただ無が浮かんでいるだけだった。


「まあいい、手間が省けた。」


こちらに手が伸ばされる。剣を抜いて切りかかろうとするが


「がはっ」


それより早く胸ぐらを掴んで引き寄せられ顔を殴られた。まずい。このままだと俺達も殺される…


「のこのことガキが寄ってきてくれたんだ。こいつらも足しにするぞ。」


乱暴に荷台に引き上げられる。なんだ?殺されないのか?そう思ってふと荷台の中を覗き込むと、目が合った。それも一つや二つじゃない。大量の、絶望と憐憫の混じった目がこちらを覗いていた。ニックも隣に放り出され、すぐに同じ光景を見ることになる。これはまさか


「さあ、挨拶しな。お前らの先輩達だぞ?」


奴隷。それも子供の奴隷だけが、何も言わないまま、じっとこちらを見つめていた。

ギリギリ1ヶ月経つ前にに更新出来ました。

おっさんに名前をつけるか迷った結果、崩れ落ちるおっさんの語感でお預けになりました。

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