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4話 実力診断 後編

主─グレートトレント─はその枝を大量に伸ばしこちらに攻撃してくる。

あまりの攻撃範囲とその量に一瞬、死を覚悟する。しかし攻撃が訪れることはなかった。ラファルドさんが一言〈フレイム〉と呟く。〈フレイム〉自体は初級魔法で小さな火を起こす魔法であるが、それを広範囲に大量に出現させることで枝を一斉に燃やしつくした。不思議なことに燃えた枝は灰になるのではなく消滅していた。


「凄い…」


初めて間近で見る本物の魔術師に感動する。だが本人は焦りを隠さずにすぐに次の魔法を詠唱している。その姿は鬼気迫るものがある。また、ほかのパーティーメンバーも攻撃を始めた。

レーネさんが双剣の片方に炎を、もう片方には風を纏わせて切りかかる。乱舞のように主を切り刻む姿は美しさを感じさせる。魔力の問題なのか、双剣の属性付与が切れると前線を離脱し、かわりにマルクさんが攻撃を仕掛ける。こちらも炎をまとわせているように見える。属性付与が出来る人はあまりいないという話なのに既に2人が発動している。このパーティーの実力の高さに改めて驚かされる。

詠唱が終わる。発動するのは火属性の上級魔法の1つである〈ファイヤーレイン〉のようだった。発動と同時に炎の雨が降り注ぎ、主に直撃する。


「やったか!?」


もうもうと上がる黒煙。一瞬何も見えなくなり、煙が上がった時そこにはボロボロだがまだ死んでいない主がいた。


「今だ!削りきれ!」


ラファルドさんの合図に合わせ一斉に攻撃をする。俺も残りの魔力を振り絞り、攻撃を仕掛ける。だが


「倒しきれないか…」


主が大きな咆哮をあげる。それと同時に主の体の再生が始まる。それだけではなく、森の中から大量に昆虫型の魔物が湧き出してくる。

悔しげに主とその周りを眺めながらラファルドさんが僕達に指示を出した。


「あの再生が止まった時にもう一度最大火力の魔法を仕掛ける。詠唱に時間がかかるからそれまで防衛を頼む!」


全員で頷く。俺も最後の一つとなるポーションを飲み、敵に備える。その間にも敵はどんどん現れる。味方の攻撃で数を減らしているのが分からないくらいだ。だが俺も少しは力にならないといけない。と言っても俺が狙うのはあまり数はいないが昆虫型以外の魔物だ。気負わずにいこう。

そのまま敵を退けていると焦ったような声が聞こえた。何事かと振り返ると少し前に大きなカマキリのような魔物がいた。

おれとそいつの間には何もなく、今にもこちらに向かってこようとしていた。


敵…敵…敵!!!!!!!!


頭が真っ白になる。詠唱していた魔力は乱れ、魔法が萎んでいく。どうしようどうしようどうしよう。敵の攻撃を覚悟し、体を竦める。が、思っていた衝撃は来なかった。怪訝に思って目を開けると


「グッ」


ラファルドさんが血を流していた。ラファルドさんはさっきまで魔法を詠唱するために俺の隣にいて、それで、あれ、なんで、血が、え、死ぬ、嫌だ、嫌だ嫌だ、


「しっかりしろニック!」


ジェイクの声で我に返る。見ると、ジェイクが下がってきて魔物を倒していた。良かった。


「ぼーっとしてないで治療をしろ!」


怒鳴られるままラファルドさんのところに駆け寄り手持ちのポーションをかける。徐々に傷が塞がっていくのを見てホットする。


「大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だよ。君も無事そうだね。」


どうやら問題ないらしい。ラファルドさんは立ち上がると、こちらをじっと見たあと、また主の方に視線を向けた。


「もう一度詠唱し直す。援護を頼む。」


そう言ってパーティーメンバーに指示を出していく。それに従い皆は敵を倒していく。俺はポーションを使い切ってしまったので何も出来ないことに歯噛みしつつその様子を眺めていた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


…全く、運が悪いにも程があるよ。主に会ったら逃げるとは言っていたものの、本当に主に会うなんて思ってもいなかった。討伐に来たのならまだしも、戦闘するための準備はろくに出来ていない。だけれどここで負ける訳にはいかない。クラリスの街筆頭パーティー「炎の翼」の名にかけて、ここを切り抜けて見せる。

この森の主であるグレートトレントは、その生息場所により大きく危険度が異なる。特に近くの魔物を大量に増殖させる能力があるのだがこの森には危険度Dである昆虫型の魔物が多く生息する。なので王都に近いにも関わらず、この主の危険度はBだ。なるべく早く仕留めないと見方が危険だ。

詠唱を始める。一撃で仕留めなければまた再生してしまうから、最高火力を叩き込むことにする。上級の上である王級魔法をである〈ヘルフレイム〉で一掃しよう。


「偉大なる精霊よ。我に力を与えよ。我が望むは炎。森羅万象を崩壊させし炎よ、逃れることあたわざる炎よ、如何なるものをも飲み込み、灰燼と化せ!〈ヘルフレイム〉!」


刹那、詠唱をトリガーとして放たれた炎が主を、その周りの魔物を包む。この魔法の特徴は一度火がついたら術師が解除しない限り消す術が限りなくない事だ。向こうがこの魔法にかけた以上の魔力を注がなければならない。ちなみになぜ最初にこの魔法を使わなかったかと言うと、森に大きな被害が出るからだ。本当なら上級魔法の一斉掃射で倒すような敵なので仕方ないと言えるが。燃える火の中でのたうち回る主を見ながらほっと息を吐いた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


これが、魔法…

目の前に広がる、とても人間が起こせるとは思えない様子を見て驚愕する。魔法とは、ここまで大きな影響をもたらすものなのかと戦慄する。周りを見るとジェイクも目を丸くしている事から、ジェイクが入ってからラファルドさんがここまで本気になったことは無かったようだ。

ラファルドさんがふぅと息を吐いて、魔法を終えた。その直後炎は消え、魔物達は跡形もなく消滅していた。


「ちょっとイレギュラーは起きたけど、一応これで今日は終わりにしようか。」


ラファルドさんがそう言うのに反対する人はいない。一同は荷物を纏め、行きとは違いなるべく敵に会わないように森を抜けた。

魔法の仕組みや、魔物については今後詳しく説明する予定です。

また、魔法の詠唱についてはあまりいいのが思いつかなかったので変更するかも知れません。

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